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甲状腺 副腎 ホルモンと高コレステロール血症、遺伝性高脂血症/非遺伝性高脂血症[橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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動脈硬化:専門の検査/治療/知見[橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]

家族性高コレステロール血症

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など)    糖尿病編 をクリックください

コレステロールは、細胞の膜やホルモンを作る材料になる重要な物質です。血液中には、LDLという粒子によって運ばれる悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と、HDL粒子によって運ばれる善玉コレステロール(HDLコレステロール)があります。

LDLは肝臓で作られたコレステロールを全身に運び、増え過ぎたコレステロールをHDLが回収して肝臓へ戻し、コレステロールの量を調整しています。

この2つのコレステロールのバランスが崩れると、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が過剰になり、血管の壁に入り込んで溜まります。そして、やがて血管は硬く、もろくなり、内腔は狭くなっていきます(動脈硬化)。

LDLとHDL

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。甲状腺と無関係の高脂血症の診療を行っておりません。

Summary

内分泌甲状腺副腎下垂体)の病気(甲状腺機能低下症、副腎皮質ホルモン分泌過剰[クッシング症候群]、成人成長ホルモン分泌不全症)でコレステロールが高くなる(高コレステロール血症、悪玉コレステロールが高い高LDLコレステロール血症)、成人成長ホルモン分泌不全症)。それらで無いなら遺伝性高脂血症[家族性高コレステロール血症(家族性高脂血症)]、肝臓・腎臓などによる非遺伝性高脂血症。長崎甲状腺クリニック(大阪)ですすめる高脂血症薬は、水溶性のプラバスタチン[メバロチン](弱)、ロスバスタチン[クレストール](強)、エゼチミブ[ゼチーア](小腸コレステロールトランスポーター阻害剤)。

Keywords

甲状腺,副腎,甲状腺機能低下症,クッシング症候群,成人成長ホルモン分泌不全症,高コレステロール血症,悪玉コレステロール,高LDLコレステロール血症,家族性高コレステロール血症,家族性高脂血症

甲状腺副腎下垂体などの内分泌の病気で、コレステロールが高くなります。しかし、それらホルモンに異常がなければ、内分泌甲状腺副腎・下垂体)無関係の遺伝性高脂血症、または肝臓・腎臓などによる非遺伝性高脂血症が考えられます。

甲状腺と高コレステロール血症

高コレステロール血症の約11%は、甲状腺ホルモンの低下(甲状腺機能低下症)によると言われています。これらは甲状腺ホルモン剤であるチラーヂンS錠(一般名:レボチロキシン ナトリウム)を補充すれば、血液中のコレステロールの代謝(分解)が促進し、自然と低下していきます。

もし、甲状腺ホルモンが低下しているのに気付かずにコレステロールを下げる薬(スタチン)を飲むと、横紋筋融解症という恐ろしい副作用を起こす率が高くなります。(Endocr J. 2006 Jun; 53(3):401-5.)(Eur Thyroid J. 2015 Mar;4(1):62-4.)

横紋筋融解症は、筋肉が崩壊し、含まれていたミオグロビン、カリウム(K)、カルシウム(Ca)などが血中に放出され、急性腎障害→急性腎不全・透析に至る致命的な病態です。

甲状腺機能低下によりスタチンの分解(代謝)・排泄が低下するのが原因とされます。

甲状腺と高コレステロール血症

高コレステロール血症の人は、コレステロールを下げる薬を飲む前に血液中の甲状腺ホルモンを調べましょう!

甲状腺機能低下症により高コレステロール血症が起きるメカニズム

甲状腺ホルモン及び甲状腺ホルモン受容体(TR) β1は肝臓でのコレステロー ル代謝・分解に重要な役割を持っています。

血中の悪玉コレステロール(LDL)を肝臓に取り込んで低下させるLDL受容体数は、甲状腺ホルモンにより増加します。また、甲状腺ホルモン[サイロキシン(T4)]はLDLに結合、T4-LDL複合体はLDL受容体に認識されて細胞内に取り込まれ、血液中のLDLは低下します。

甲状腺機能低下症では、これらの作用が低下し、

  1. LDL受容体数が減少する
  2. T4-LDL複合体の形成が低下する

ため、血液中の悪玉コレステロール(LDL)が上昇します。

(甲状腺専門医以外は知らなくてよい事)

LDL受容体遺伝子プロモーターの甲状腺ホルモンによる制御は、SREBP-2(Sterol Response Element Binding Protein-2)を介する経路と介さない経路の両方が報告されています。(Front Endocrinol (Lausanne). 2018 Sep 3;9:511.)

その他、甲状腺ホルモンによるコレステロールの調節は色々なメカニズムが報告されていますが、PSCK9以外で確定的なものはありません。

PCSK9

甲状腺ホルモンは血液中を循環しているPSCK9(前駆蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型;proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)を減少させ、LDLコレステロールを低下させている可能性が考えられています。‎[J Lipid Res. 2014 Nov;55(11):2408-15.]

PCSK9は、主に肝臓・腎臓・小腸から分泌されるタンパク質で、LDL受容体に直接結合し、LDL受容体の分解を促進→血中LDLコレステロールを増加させます。

甲状腺ホルモン値とPSCK9は相関し

  1. 甲状腺機能亢進症でPSCK9は減少→LDLコレステロール低下
  2. 甲状腺機能低下症でPSCK9は増加→LDLコレステロール増加

尚、自己免疫抗体[TSHレセプター抗体(TR-Ab),抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]とPSCK9の間に相関はありません。

[Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2021 Sep;25(17):5511-5517.]

さらに、TSHが肝臓のPCSK9発現を調節しているとの研究報告があります[Metabolism. 2017 Nov;76:32-41.]。

甲状腺機能正常化しても高コレステロール血症なら

甲状腺機能低下症を治療して、甲状腺ホルモンが正常化しても高コレステロール血症、悪玉コレステロールが高い高LDLコレステロール血症が治らない場合は?

  1. 甲状腺以外の内分泌異常、副腎皮質ホルモン分泌過剰[クッシング症候群(あるいはクッシング病)]による脂肪同化作用、成人成長ホルモン分泌不全症 による脂質代謝の低下
  2. 家族性高コレステロール血症(家族性高脂血症)原発性高脂血症 

が考えられます。2.の場合、

  1. 第一に悪玉コレステロール(LDLコレステロール)を多く含む食品を控える(食事療法)
  2. 食事療法で改善無ければ、コレステロールを下げる薬を使う

皮膚黄色腫症

皮膚黄色腫症は、脂質を貪食して泡沫状になった組織球(マクロファージ)で構成され、表皮の血管周囲に起こり、線維化や炎症性変化を伴います。

皮膚黄色腫症は脂質代謝異常が原因ですが、脂質代謝異常がはっきりしない場合もあります。

脂質代謝異常で起きる場合、

  1. 家族性高コレステロール血症
  2. 甲状腺機能低下症ネフローゼ症候群などに伴う高コレステロール血症

と原因は様々。

眼瞼黄色腫

眼瞼黄色腫は、脂質異常症の約4.4%にみられ、心血管障害の独立した危険因子とされ、10年後の心血管障害の死亡率を10%以上増加させるとの報告があります(BMJ 2011;343:d5497)。

内分泌(甲状腺・副腎・下垂体)無関係の遺伝性高脂血症

家族性高コレステロール血症(家族性高脂血症)

家族性高コレステロール血症(FH)は常染色体性優性遺伝病です。片親から遺伝する「ヘテロ」は500人に1人です。両親双方から遺伝した重症例を「ホモ」と呼び100万人に1人です。

  1. 家族性高コレステロール血症(FH)の大半は血中から肝臓にコレステロールを取り込むLDL受容体変異により、
  2. LDL受容体リガンドのアポB-100遺伝子変異でも、
  3. LDL受容体を分解するPCSK9活性化変異でLDL受容体が減少し
家族性高コレステロール血症

血中LDLコレステロール(動脈硬化をおこす悪玉コレステロール)が上昇します。

家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体の

  1. 血清総コレステロール値の平均は、320~350 mg/dl
  2. LDLコレステロールは248mg/dL(男性296名、女性345名、平均年齢51歳)

と報告されています。成人(15歳以上)家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体の診断基準では、未治療時のLDLコレステロール180mg/dL以上となっています。

家族性高コレステロール血症(FH)では、皮膚や腱にLDL由来のコレステロールが沈着し、皮膚黄色腫、腱黄色腫を呈します。

  1. 皮膚黄色腫:ダヴィンチのモナリザにも描かれている有名なものですが、正脂血症の患者にも認められ、診断的な価値はありません。
  2. アキレス腱黄色腫
  3. 角膜輪
  4. 全身性動脈硬化症(ホモ接合体では冠動脈だけでなく大動脈弁にも進行、弁上狭窄、弁狭窄)をおこします。

原発性高脂血症

原発性高カイロミクロン血症(家族性リポ蛋白リパーゼ欠損症/アポリポ蛋白CⅡ欠損症など)血清トリグリセリド値が2,000mg/dlを超えると急性膵炎をおこします。肝脾臓腫、皮膚に発疹性黄色腫ができます。

原発性高コレステロール血症(家族性高コレステロール血症/家族性複合型高脂血症/特発性高コレステロール血症)家族性複合型高脂血症は100人に1人で最多

家族性Ⅲ型高脂血症:アポリポ蛋白Eの異常のため、リポ蛋白が肝臓のLDL受容体と結合しにくくなります。手掌線状黄色腫。

甲状腺機能低下症で甲状腺ホルモン補充する前は高脂血症を持っていなかったのに、補充後にⅢ型高脂血症が顕在化した報告があります。そのメカニズムは不明ですが、治療前はコレステロール産生酵素活性が低下していた可能性が考えられます。(Clin Endocrinol (Oxf). 1997 May;46(5):627-30.)

家族性Ⅲ型高脂血症 手掌線状黄色腫

内分泌(甲状腺・副腎・下垂体)無関係のこんな病気でも高脂血症(非遺伝性高脂血症)

  1. ネフローゼ症候群:血液中のアルブミン濃度が減少すると、肝臓のアルブミン合成が増大し、ついでに低比重リポ蛋白(LDL)および超低比重リポ蛋白(VLDL)生成も増加。また動脈硬化抑制因子の高比重リポ蛋白(HDL)が尿中へ漏れ出るため、血液中のHDL濃度は減少。

  2. 慢性腎不全では脂質分解の低下による高脂血症
  3. 肝臓癌;理由は不明
  4. グロブリン異常症でも
  5. 高用量のサイアザイド系利尿薬/ループ利尿薬は中性脂肪(トリグリセリド)、LDLコレステロールを上昇。

長崎甲状腺クリニック(大阪)ですすめる高脂血症薬

長崎甲状腺クリニック(大阪)の方針はあくまで食事運動療法による高脂血症の改善です。しかし遺伝的な高脂血症はそれでは改善しないことがあります。

  1. スタチン[HMG-CoA還元酵素阻害薬]:最も有名なコレステロールを下げる薬です。長崎甲状腺クリニック(大阪)では①プラバスタチン[メバロチン®](弱)
    ②ロスバスタチン[クレストール®](強)
    をすすめます。どちらも水溶性なので体に蓄積せず、肝臓のチトクロームP450で代謝されないため他剤との相互作用おこしにくいです。
    特にロスバスタチン[クレストール®]は、心筋梗塞二次(再発)予防効果が推奨クラスI、エビデンスレベルAです[急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)]。
     
  2. エゼチミブ(ゼチーア®):小腸コレステロールトランスポーター阻害剤で安全性が高いですが、重篤な肝障害のある場合のみエゼチミブとスタチンの併用は禁忌です。腎機能低下時も投与量調節の必要はなく、透析患者にも投与可能。

不思議な事に、、ロスバスタチン[クレストール®]は、シクロスポリン投与中の患者に対して、添付文書上禁忌になっています。本来、禁忌にすべきは、プラバスタチン[メバロチン®]、ロスバスタチン[クレストール®]、エゼチミブ(ゼチーア®)以外の腎排泄型の高脂血症薬全てのはずです。

ただし、ロスバスタチン[クレストール®]も、CCr30mL/min/1.73m2未満では血漿濃度が約3倍に上昇するため、開始用量は1日2.5mg、効果不十分なら最大5mgが限界量です。ロスバスタチン[クレストール®]は非常に強力なので、例え腎機能が問題ない場合でも、5mg以上処方した事はありません(筆者の経験)。

腎機能が問題ない場合でも、20mg(すごい量です)投与すると腎機能障害が起きる危険性のため、必ず3カ月間は月に1回、それ以降も定期的に腎機能検査を行うよう注意書きがあります。

長崎甲状腺クリニック(大阪)での扱いはない新薬PCSK9阻害薬エボロクマブ(レパーサ®皮下注)

長崎甲状腺クリニック(大阪)での取り扱いはありませんが、新薬PCSK9阻害薬エボロクマブ(レパーサ®皮下注)は、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)で効果不十分な家族性高コレステロール血症(FH)または非家族性高コレステロール血症に有効です。

ただし、甲状腺を含む内分泌(ホルモン)異常、副腎皮質ホルモン分泌過剰[クッシング症候群(あるいはクッシング病)、成人成長ホルモン分泌不全症 による高コレステロール血症は、元の病気の治療が最優先です。元の病気を治療して、さらにHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)も効果ないならPCSK9阻害薬を使わざる得ません。

PCSK9阻害薬の作用機序は(甲状腺専門医以外は知らなくてよい事)を御覧ください。

PCSK9阻害薬エボロクマブ(レパーサ®皮下注)は、1回/4週の皮下注が必要になり、かつ薬価は高額(1本で4万7188円)になります。

エボロクマブ(レパーサ®皮下注)の甲状腺に対する影響として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の審査報告書では、「ハムスターにおけるがん原性試験」において「対照群と比較して副腎皮質腺癌甲状腺濾胞細胞腺腫の発生が高かったが、その頻度はハムスターを用いたがん原性試験の背景値(McInnes E et al. Toxicol Pathol, 41: 86-97, 2013、Pour P et al. J Natl Cancer Inst, 56: 949-961, 1976)の範囲内であった。」そうです。

長崎甲状腺クリニック(大阪)ですすめない高脂血症薬

フィブラート:中性脂肪(トリグリセリド)増加がコレステロール増加よりも優位である場合、フィブラートを用います。しかし、中性脂肪(トリグリセリド)はコレステロールに比べ食事運動療法で下がり易いため、長崎甲状腺クリニック(大阪)では、フィブラートをあまり使用しません。(中性脂肪(トリグリセリド)を低下させるフィブラート系薬剤

若い女性で、甲状腺(内分泌)無関係の高コレステロール血症

若い女性で、甲状腺(内分泌)関係ない高コレステロール血症はどうするか?若い女性にスタチンは原則投与しません。若い女性は高LDLコレステロール血症でも、閉経期までは女性ホルモンの作用で、動脈硬化を抑えています。

頚動脈エコーでプラークや、明らかな総頚動脈内膜中膜肥厚度(CCA IMT)の増大があれば、その限りではありません。若くて、既にそこまでの動脈硬化が起こっていれば、心筋梗塞・狭心症予防のためスタチンを使用すべきです。ただし、妊娠時授乳時のスタチンの安全性は確立していないため、妊活中は休薬止む無しです。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

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  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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