動脈硬化と腎臓:腎血管性高血圧/腎硬化症/急性腎障害(AKI)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
動脈硬化:専門の検査/治療/知見[橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]
甲状腺専門・動脈硬化の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌病態内科学で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では動脈硬化が進行し、狭心症/心筋梗塞の発症率が上がります。甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]で治療すれば、血管年齢など動脈硬化が改善することを、私、長崎俊樹が医学界で初めて証明しました。(甲状腺と動脈硬化 ・高コレステロール血症)。また、甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では慢性腎臓病(CKD)が多い事が知られています(甲状腺と腎臓)。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。腎血管性高血圧/腎硬化症/急性腎障害(AKI)自体の診療は行っておりません。
Summary
腎血管性高血圧は、高血圧の1%を占め、腎動脈の狭窄による高レニン・高アルドステロン血症性高血圧。腎動脈硬化(中高年)、線維筋異形成・大動脈炎症候群(若年女性)、重複腎動脈が原因。かなりの頻度で全身の動脈硬化性疾患を合併。腎硬化症は、高血圧で腎臓の糸球体細動脈が動脈硬化し、慢性腎不全になる。急性腎障害(AKI)は数時間~数日で急激に腎機能が低下。動脈硬化による腎前性のもの(両側腎梗塞,腎動脈血栓)がある。尿中L-FABPは、尿細管機能障害の診断・慢性腎臓病(CKD)の進展予測・急性腎障害(AKI)の早期診断に有用。甲状腺中毒症で尿L-FABPが高くなる可能性。
Keywords
腎動脈硬化,橋本病,動脈硬化,腎硬化症,腎臓,慢性腎不全,急性腎障害,腎血管性高血圧,L-FABP,甲状腺
腎血管性高血圧は、高血圧の1%を占め、腎動脈の狭窄・血管抵抗上昇により高レニン・高アルドステロン血症となり、高血圧をおこす状態です。
腎血管性高血圧の原因として、腎動脈硬化・分節性中膜融解症・線維筋異形成・大動脈炎症候群・重複腎動脈があります。腎血管性高血圧は、かなりの頻度で全身の動脈硬化性疾患を合併します。
説明が付かない腎機能の悪化[(Cr=クレアチニン)上昇]、腎萎縮は腎血管性高血圧を疑う所見です。
腎動脈硬化
線維筋異形成
大動脈炎症候群
大動脈炎症候群は、原因は不明で、若い女性に多く、大動脈や腎動脈に炎症がおこるため、血管内が狭くなる病気です。大動脈炎症候群が腎動脈に及ぶと、腎血管性高血圧症になります。
甲状腺との関係は、 大動脈炎症候群 を御覧ください。
重複腎動脈
腎梗塞は、腎動脈が閉塞し腎組織が壊死(えし)する病態です。 腎梗塞の原因は、
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病による心房細動(Af)、心臓弁膜症、感染性心内膜炎、心臓手術などによる血栓→塞栓性梗塞(最も多い)
- 甲状腺機能低下症/橋本病で動脈硬化が進行して生じるコレステロール塞栓症
- 抗リン脂質抗体症候群
- 大動脈解離、大動脈瘤など腎動脈分岐部の障害(急性大動脈解離・大動脈瘤)
- 橋本病(慢性甲状腺炎)合併全身性強皮症(全身性硬化症:SSc);腎梗塞の原因となり得るが、強皮症腎クリーゼ、腎血管性高血圧の方が多い。
- 大動脈炎症候群(高安動脈炎、脈なし病)、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎);腎梗塞の原因となり得るが、腎血管性高血圧の方が多い。
- 線維筋性異形成;腎梗塞の原因となり得るが、腎血管性高血圧の方が多い。
- MPO-ANCA関連血管炎;腎梗塞の原因となり得るが、ANCA関連腎炎の方が多い。
腎梗塞の症状は、突然の
- 側腹部痛
- 発熱、嘔吐
- 血尿、尿量低下など激しい症状を認めます。しかし、小さな梗塞では無症状であることも少なくありません。
- 腎性高血圧
腎硬化症は高血圧で腎臓の糸球体細動脈硬化、慢性腎不全に。急性腎障害(AKI)は数時間~数日で急激に腎機能が低下。動脈硬化による腎前性は両側腎梗塞、腎動脈血栓。尿中L-FABP(肝臓型脂肪酸結合蛋白)は尿細管機能障害、慢性腎臓病(CKD)の進展予測、急性腎障害(AKI)・糖尿病腎症の早期診断に有用。甲状腺中毒症、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では尿L-FABPが高くなり腎臓の診断に使えない。甲状腺摘出術後の甲状腺機能低下症では甲状腺から直接分泌されるT3(トリヨードサイロニン)が無くなり術後急性腎障害に成り易い。薬剤性間質性腎炎は解熱鎮痛薬などで。
腎硬化症は、高血圧で腎臓の糸球体細動脈が動脈硬化し、慢性腎不全になるものです。腎硬化症は、透析の3位を占めます。
- 良性腎硬化症:徐々に慢性腎不全に
- 悪性腎硬化症
急性腎障害は回復の可能性がありますが、
- 10%が末期腎不全
- 20%が慢性腎不全
に移行。虚血性急性腎障害(AKI):等張性晶質液(リンゲル液、0.9%生理食塩水)投与。
尿中L-FABP(肝臓型脂肪酸結合蛋白)は、正常時は肝臓から排出後、腎臓の腎近位尿細管で再吸収されます。尿細管周囲の血流不全による酸化ストレスにより再吸収されなくなったL-FABPは、尿中に排出されます。
- 尿細管機能障害
- 慢性腎臓病(CKD)の進展予測
- 急性腎障害(AKI)の早期診断
- 糖尿病腎症の早期診断
に有用です。(Club SRLより)
甲状腺ホルモンの尿中L-FABP(肝臓型脂肪酸結合蛋白)への影響
甲状腺ホルモンが尿中L-FABP(肝臓型脂肪酸結合蛋白)へ与える影響が報告されています。苫小牧市立病院の報告では、1453症例で甲状腺ホルモン値と尿L-FABPを同時測定した所、、尿L-FABP値に寄与する因子は、年齢(標準β=0.214、p<0.001)、FT4(標準β=0.493、 p=0.005)の2つ。
甲状腺中毒症、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、尿L-FABPが高くなり、腎臓の診断に使えない可能性があります(甲状腺機能亢進症/バセドウ病と慢性腎臓病(CKD) )。(第60回 日本甲状腺学会 O10-1 甲状腺ホルモンの尿L-FABP測定への影響)
メルカゾールで急性腎障害(Acute Kidney Injury: AKI)おこした報告があります。
メルカゾール開始後1ヶ月以内に血清クレアチニン(Cr)が1.6倍に上昇し、中止後2週間以内に元に戻ったそうです。その後プロピルチオウラシル(PTU)治療で安定しているため、MPO-ANCA関連血管炎と甲状腺 は考え難いと思います。(J Pharm Pract. 2018 Aug 15:897190018789277.)
甲状腺摘出術後の甲状腺機能低下症の患者は、術後急性腎障害(AKI)に成り易いとされます(Sci Rep. 2018 Sep 10;8(1):13539.)。いきなり甲状腺がなくなって、甲状腺ホルモン産生が永久停止するのだから当然と言えます。
20%の甲状腺ホルモンT3(トリヨードサイロニン)は甲状腺から直接分泌され、残りは末梢で甲状腺ホルモンT4(サイロキシン)から生成されます。T3(トリヨードサイロニン)は半減期が数時間のため、直接分泌される20%分がいきなり低下します。これが術後急性腎障害(AKI)を引き起こします。
でも体内には、半減期2週間の甲状腺ホルモンT4(サイロキシン)がストックされているので、通常は数週間だけ持ちこたえられます。それでも術後急性腎障害(AKI)を予防するため、できるだけ速やかに甲状腺ホルモン剤(チラーヂン)補充を開始する必要があります。
入院患者の急性腎障害(AKI)の発生率は増加しているものの、治療成績は改善していません。甲状腺ホルモン療法は動物実験で有用との報告がありますが、患者での有効性と安全性は確立されていません(Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jan 31;(1):CD006740.)。筆者も急性腎障害(AKI)の治療に甲状腺ホルモン剤を使うのはどうかと思います。
薬剤性間質性腎炎では、腎臓の尿細管と周囲組織(間質)にアレルギー反応による炎症が起こります。発熱、発疹、関節痛(今度は痛風とは別の関節が痛くなります)、腹痛、嘔吐、下痢など、かぜのような症状で、腎不全に至ります。
主に抗生物質・抗結核薬、解熱鎮痛薬、胃酸を抑える胃薬、痛風治療薬(いずれも痛風・偽痛風で使います)、抗てんかん薬で多いとされています。尿酸・蓚酸カルシウム自体でも間質性腎炎はおきます。
解熱鎮痛薬のCOX1阻害による腎前性腎不全もおこり得ます。
- 尿蛋白軽度・尿NAG(尿中β-D-Nアセチルグルコサミニダーゼ)・尿中β2マイクログロブリン(糸球体異常でも増加するので意味なし)・白血球円柱
- 67Ga(ガリウム)シンチグラフィーで、腎への取り込み増大は特異的。
- 腎生検により確定診断されます。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,浪速区,生野区も近く。