セレン(Se)欠乏症・亜鉛(Zn)欠乏症は甲状腺機能低下症[日本甲状腺学会認定 甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
甲状腺:専門の検査治療知見②橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。
図は、SBP2の役割(Journal of the Japan Thyroid Association. 2014; 5(1)32-36)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。亜鉛欠乏症・セレン欠乏症自体の診療を行っておりません。
Summary
セレン(Se)欠乏症・亜鉛(Zn)欠乏症で甲状腺機能低下症。セレンは甲状腺ホルモンのサイロキシン(T4)を活性型のトリヨードチロニン(T3)に変換する脱ヨード酵素(DIO:deiodinase)の成分で、セレン欠乏症は甲状腺機能低下症に(アフリカ ザイールの地方性粘液水腫症など)。SBP2遺伝子異常症は常染色体劣性遺伝のセレン挿入配列部への結合タンパク異常で、脱ヨード酵素異常による甲状腺機能低下症(FT3 減少、FT4 増加、TSH正常ないし軽度増加)。甲状腺癌では血中セレン(Se)、マグネシウム(Mg)濃度が低く、銅(Cu)濃度が高亜鉛欠乏性甲状腺機能低下症は小さい甲状腺。
Keywords
セレン欠乏症,亜鉛欠乏症,甲状腺機能低下症,セレン,SBP2遺伝子異常症,脱ヨード酵素,T3,T4,甲状腺,亜鉛
セレン(Se)は魚介類、肉類、卵に豊富に含まれ、日本で不足が問題となることはまずありませんが、90歳以上の高齢者などでセレン(Se)欠乏症はおこり得ます。中国東北部では、セレン(Se)欠乏性心筋症(克山病)があります。
また、セレン(Se)は、甲状腺ホルモンであるサイロキシン(T4)をより活性型のトリヨードチロニン(T3)に変換する脱ヨード酵素(deiodinase:DIO)の成分で、セレン欠乏症は甲状腺機能低下症をおこします。
また、セレン(Se)は抗酸化酵素グルタチオン ペーオキシダーゼの成分で、セレン(Se)欠乏は発癌(甲状腺がんとの関連は不明)の可能性があります。
アフリカ ザイールの地方性粘液水腫症はセレン(Se)欠乏による甲状腺機能低下症として有名です。
血中セレン濃度測定:保険適応外ですので6000円(税抜き)掛かってしまいます。長崎甲状腺クリニック(大阪)で継続して甲状腺の通院・治療している方のみの受付となります。
Selenocysteine insertion sequence-binding protein2(SBP2)遺伝子異常症は、国際医学界で9家系報告されています(2016.11現在)。
SBP2遺伝子異常症は、常染色体劣性遺伝で、セレノシステイン(セレンを含む必須アミノ酸)をセレノプロテイン(セレノシステインを含むタンパク)に取り込むための必要な結合タンパク(SBP2)の異常です。[Nat Genet. 2005 ;37(11):1247-1252.]
甲状腺ホルモンのサイロキシン(T4)をより活性型のトリヨードチロニン(T3)に変換する脱ヨード酵素(deiodinase:DIO)はセレノプロテインの一つで、SBP2遺伝子異常ではセレノシステインを取り込めないため、脱ヨード活性が低下しT4→T3変換が障害されます。
SBP2遺伝子異常症の症状は、
- 先天性甲状腺機能低下症(DOI1/2:1および2型脱ヨード酵素異常)
- 聴力障害(DOI2/3:2および3型脱ヨード酵素異常)
- 精神発達障害
- 骨年齢遅延/成長障害
SBP2遺伝子異常症の検査所見は
- FT3 減少(FT4が脱ヨード化されないので当然)
- FT4 増加(脱ヨード化されないFT4が貯まるので当然)
- 正常ないし軽度のTSH増加(おそらく、視床下部-下垂体のTSH分泌抑制すべきFT3は減少しても、作用は弱いながら増加したFT4が、それなりのTSH分泌抑制するためでしょう)
SBP2遺伝子異常症の治療は、セレン(Se)とT3製剤=LT3(LT4=チラーヂンSではない)補充です。
甲状腺癌では血中セレン(Se)、マグネシウム(Mg)濃度が低く、銅(Cu)の濃度が高いとされます(Biol Trace Elem Res. 2015 Oct;167(2):225-35.)。
亜鉛欠乏性甲状腺機能低下症が報告されています。自己抗体陰性で甲状腺重量6gの小さい甲状腺に多いようです。
宮下クリニックの報告では、自己抗体陰性の潜在性甲状腺機能低下症と亜鉛欠乏症を合併した16症例は、亜鉛補充により甲状腺能が正常化したそうです。亜鉛補充なしでTSH が正常化した2例を加えた18症例の推定甲状腺重量は平均5.9g と小さかったとの事です。(第57回 日本甲状腺学会 O7-3 亜鉛補充により甲状腺機能が正常化した自己抗体陰性の潜在性甲状腺機能低下症の検討)
甲状腺の病気に似ている亜鉛欠乏症、甲状腺でむずむず脚症候群 は、こちらを御覧ください。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区も近く。