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甲状腺手術の気道確保・ECMO・麻酔・皮膚縫合・PTEG[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

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ECMO(体外式膜型人工肺)

甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)は、内科系甲状腺専門クリニックです。甲状腺外科は行っておりません。

Summary

巨大甲状腺腫や高度肥満による気道狭窄で甲状腺切除手術での気道確保困難が予測される場合、VV-ECMO(体外式膜型人工肺)開始後、気管支鏡を用い、術前に減量で挿管。甲状腺手術中の麻酔管理は難。内臓逆位では心血管・消化器系の奇形を合併しなくても左右の反回神経の走行が逆になるため注意。巨大甲状腺腫、甲状腺癌の転移・浸潤が胸骨に及ぶと胸骨切開(全切開、部分切開)/胸骨切除が必要。甲状腺手術の皮膚縫合は美容上の問題から形成外科が行う事も。甲状腺の病気があれば経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)は禁忌。

Keywords

甲状腺,手術,気道確保,ECMO,麻酔,巨大甲状腺腫,甲状腺癌,ピーテグ,甲状腺腫瘍,PTEG

気道狭窄を伴う甲状腺手術での気道確保

巨大甲状腺腫、甲状腺腫瘍高度肥満による気管の圧迫、気道狭窄(最狭窄部1cm以下)にて、甲状腺切除手術での気道確保困難(挿管困難)が予測される場合、

  1. 意識下挿管
  2. V-ECMO(体外式膜型人工肺)開始後に気道確保を行う
  3. 気管支鏡を用いて挿管
  4. 術前に減量

などの対策が必要になります。(第61回 日本甲状腺学会 O21-4 気道狭窄を伴う甲状腺腫の2例)

ECMO(体外式膜型人工肺)
巨大甲状腺濾胞癌 気道狭窄

巨大甲状腺濾胞癌 気道狭窄

甲状腺腫瘍 縦隔進展(気管圧排)

甲状腺腫瘍 縦隔進展(気管圧排)

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の巨大甲状腺腫による上気道狭窄

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の巨大甲状腺腫による上気道狭窄

ECMO(体外式膜型人工肺)と甲状腺

ECMO(extra-corporeal membrane oxygenation:体外式膜型人工肺)は、人工肺とポンプによる体外循環を行う装置です。

  1. VV-ECMO;肺炎などで肺の機能を補助する場合、静脈(Venous)から静脈(V)に血液を送る。重症化した新型コロナウイルス肺炎で使用されます。
  2. VA-ECMO;心臓の機能を補助する場合、静脈(V)から動脈(Artery)に血液を送る

があります。

VV-ECMOは

  1. 詰まりにくい大口径カニューレがよい
  2. 回路内に血栓症ができるのを防ぐため、抗凝固療法が必要なので、、圧迫止血し難い鼻腔吸引・胸腔ドレナージを避ける
  3. 導入後はVILI(呼吸器関連肺傷害)を予防し、肺を休めるため、弱い人工呼吸器設定(Lung rest)にする
  4. 酸素交換した血液を再度脱血しないよう(リサーキュレーション率を小さくするよう)、脱血、総血カニューレの置を離す
  5. 1週間以上、人工呼吸器管理し、VILI(呼吸器関連肺傷害)を受けた肺にVV-ECMOを導入しても予後不良が多い

気道狭窄を伴うため手術を予定されている巨大甲状腺腫の患者が、間に合わず心肺停止した際、挿管困難が予想され、体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation:ECMO)下に緊急気管切開術と、それでも不十分なので、甲状腺腫減量術(いきなりここまでやる救命病棟すごいわ。救命病棟24時がノンフィクションに近いのが納得できます)を追加し救命した報告があります。ECMOがあればこそ可能な処置とも言えます。(Jpn J Respir Care 2019;36:173-7.)

甲状腺癌の浸潤による高度気管狭窄で気管切除・形成手術を行う場合、気管内挿管も手術自体も困難です。ECMO補助下に術野から離れた場所を気管切開し、気道確保した報告例があります(耳鼻咽喉科臨床 2016;109(3):195-201)(麻酔 2013;62(1):78-82.)

再発を繰り返す甲状腺がんの気管浸潤による高度気管狭窄で、気管内ステントを留置する時にもVV-ECMOが有用です(麻酔 2016;65(2):142-145)。

甲状腺手術と麻酔

甲状腺手術中の麻酔管理

甲状腺手術中の麻酔管理は、

  1. 手術し易い様、肩枕を入れ頚を伸ばすため気管内チューブが浅くなり、外れてしまう危険性あり
  2. 甲状腺は血流が非常に多いので、血圧を上げ過ぎると出血量が多くなる
  3. 横隔膜が動いたり、自発呼吸が出ると、頚部(術野)が動き術者の手元が狂うため、麻酔深度に要注意

‎プロポフォール系麻酔薬と甲状腺

‎プロポフォール麻酔薬は、全身麻酔の導入・維持、集中治療室で人工呼吸器管理中の鎮静に使用します。

集中治療における人工呼吸中の鎮静:通常、成人(高齢者を含む)は静脈内に持続注入します。

プロポフォール系麻酔薬は、甲状腺・副甲状腺手術直後の吐き気・嘔吐を減少させるが、効果は持続しない[World J Surg. 2008 Jul;32(7):1525-34.]。‎

プロポフォールは、甲状腺機能亢進症患者の麻酔で、心拍数・血圧を低下させ、術中の容体を安定させます。しかし、過剰な甲状腺ホルモンがプロポフォールを分解(プロポフォールのクリアランスが増加)するため、通常よりも多くのプロポフォールが必要になります。‎[Anesth Analg. 1998 Jul;87(1):195-9.]

逆に、甲状腺機能低下症であればプロポフォール麻酔が効き過ぎ、徐脈になる危険性があります。TSH10 μU/mL未満に改善するまで手術を待機します。(甲状腺機能低下症で麻酔効き過ぎ

また、麻酔とは全く関係ありませんが、基礎実験でプロポフォールは甲状腺乳頭癌細胞の増殖・浸潤を抑制する結果が複数報告されています。[Exp Mol Pathol. 2019 Apr;107:68-76.][J Healthc Eng. 2021 Dec 16;2021:2704753.][Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2020 May;24(9):5101-5110.]

甲状腺クリーゼ と鑑別を要する悪性高熱症

悪性高熱症は、

  1. 揮発性吸入麻酔薬(ハロタン、イソフルラン、セボフルラン、デスフルラン)
  2. 筋弛緩薬(スキサメトニウム)

を使用した全身麻酔におけるエマージェンシーで、数万人に1人の割合で発症します。

常染色体優性遺伝による筋小胞体からのカルシウム(Ca)放出亢進が原因で、血縁者に悪性高熱症をおこした人がいれば、術前に対策を取れます。しかし、本人に手術の既往が無い限り、分からない場合がほとんどです。

悪性高熱症

悪性高熱症は、全身の骨格筋の持続的収縮により、

  1. 頻脈に続き体温が急激に上昇;40℃以上、40℃以下でも38℃以上で、15分間に0.5℃以上ずつ上昇
  2. 酸素消費も亢進し、全身臓器は低酸素状態→高炭酸ガス(CO2)血症→代謝性アシドーシス、代償性の頻呼吸
  3. 骨格筋筋細胞が壊れ横紋筋融解症、①流出したミオグロビンにより急性腎障害(AKI)、②高カリウム血症

悪性高熱症が起きると、

  1. 下顎から頸部の筋肉の硬直
  2. 術野が不自然に硬くなる

などで気が付きます。

すぐさま、

  1. 吸入麻酔薬を中止、筋弛緩薬を非脱分極性のものに変更。
  2. 特効薬のダントロレンを投与
  3. 呼吸器回路内の吸入麻酔薬を追い出すのも兼ねて、高流量酸素を流す
  4. 全身冷却、室温を下げる。冷却した生理食塩水点滴。
  5. アシドーシスの補正
  6. 横紋筋融解症の予防、高カリウム血症の治療
  7. 気化器のソーダライムがCO2を吸って一杯になったらを交換

術中のエマージェンシーである悪性高熱症と甲状腺クリーゼ は、症状が同じですが、治療方法が異なるため、迅速な鑑別診断が必要です。抗甲状腺薬、ベータブロッカー投与にも係わらず、甲状腺機能が正常化していない甲状腺機能亢進症/バセドウ病を手術せざる得ない時、突然の高熱があれば両者を疑います。悪性高熱症なら高炭酸ガス血症を認めるも、頻脈が軽度なので、甲状腺クリーゼ  と区別できます。(A A Pract. 2018 Mar 1;10(5):97-99.)

悪性高熱症を甲状腺クリーゼと勘違いして、プロプラノロール0.4mg とメチルプレドニゾロン1,5g を緊急投与しても効きません。体を強力に冷やし、麻酔薬をダントロレンに切り替えれば、速やかに改善していきます(Endocr J. 2001 Apr;48(2):227-32.)。

周術期鎮痛補助剤リドカイン、デクスメデトミジン、マグネシウム

周術期鎮痛補助剤のリドカイン、あるいはデクスメデトミジン静脈内投与は、甲状腺手術が終わり抜管した後、咳を抑える方法として提案されています。リドカイン、デクスメデトミジンいずれも、甲状腺手術後の

  1. 咳を減らす
  2. 術後出血の量を減らす
  3. 鎮痛作用

効果があります。しかし、デキスメデトミジン静脈内投与は徐脈を起こし、麻酔からの覚醒を遅らせます。(BMC Anesthesiol. 2019 May 4;19(1):66.)

マグネシウムも同じく、周術期鎮痛補助剤ろして静脈内投与されますが、リドカインより劣るとされます(Anesth Analg. 2018 Sep;127(3):635-641.)。

内臓逆位と甲状腺

内臓逆位は、内臓の位置が鏡に映したように左右逆の鏡面像になる体質。完全内臓逆位は5,000人に1人で男女差なく、この時の心臓は鏡像型右胸心です。

心臓が胸郭内で右側に位置し、その他の内臓位置異常を伴わない孤立性右胸心は1,000人に1人です。

内臓逆位は、原発性線毛運動不全症(カルタゲナー症候群:Kartagener Syndrome)の約半数に存在し、副鼻腔炎、気管支拡張症を伴います。

内臓逆位は心血管系・消化器系の奇形を約60%で合併し、心奇形、無脾・多脾、肝臓奇形、腸回転異常を認めます。(日臨外医会誌 52:2734-2741,1991)。

内臓逆位では心血管系・消化器系の奇形を合併しない場合でも、甲状腺手術時、左右の反回神経の走行が逆になるため、反回神経を傷付けないよう注意が必要です(反回神経麻痺 )。反回

本来、右迷走神経枝は右鎖骨下動脈を、左迷走神経枝は大動脈弓を反回し、甲状腺背側を逆走します。

内臓逆位で、右大動脈弓に左鎖骨下動脈起始異常を伴い、左迷走神経枝が反回できずに左非反回下喉頭神経(nonrecurrent inferior laryngeal nerve,NRILN)になった報告があります。[Auris Nasus Larynx. 2021 Apr;48(2):317-321.][Head Neck. 2016 Oct;38(10):E2508-11.]

内臓逆位が無くても、右鎖骨下動脈起始異常などの血管走行奇形では、迷走神経が反回できず右非反回下喉頭神経(nonrecurrent inferior laryngeal nerve,NRILN)になり走行が変わるため、要注意。

内臓逆位症(右側大動脈弓)では、術前の三次元CT検査で血管走行奇形を確認すれば、反回神経の走行予測が付きます。(内分泌甲状腺外会誌 34(3):200-203,2017)

内臓逆位 胸X-p
内臓逆位 3次元CT

‎完全内臓逆位に同側2本の下甲状腺動脈と片側副腎無形成を伴う剖検例の報告があります。[Surg Radiol Anat. 2018 Oct;40(10):1169-1172.]

異所性後縦隔甲状腺は非常に稀で、全縦隔腫瘍の1%未満です。異所性後縦隔甲状腺は、大きくなり心血管系を圧迫するまで無症状、発見時には転移性甲状腺癌との鑑別が必要になります。完全内臓逆位に異所性後縦隔甲状腺を合併した62歳女性の報告があります。[J Thorac Dis. 2014 May;6(5):E39-42.]

また、甲状腺濾胞癌で甲状腺全摘手術した後、縦隔内甲状腺腫が見つかった完全内臓逆位の55歳女性の報告があります。[Q J Nucl Med. 1995 Jun;39(2):116-8.]

甲状腺手術で胸骨切開/胸骨切除

甲状腺手術は首の辺を切開するのは当然ですが、胸骨切開(全切開、部分切開)/胸骨切除が必要な事があります。

  1. 縦隔進展する巨大甲状腺腫
  2. 甲状腺癌の転移・浸潤が胸骨の所まで及ぶ

などの場合です。胸骨切除は大胸筋皮弁形成必要となり、炎症による胸水貯留おきる場合もあります。

胸骨切開 胸骨切除

甲状腺手術は首の辺を切開するのは当然ですが、胸骨切開(全切開、部分切開)/胸骨切除が必要な事があります。

  1. 縦隔進展する巨大甲状腺腫(縦隔内甲状腺腫 )
  2. 甲状腺癌の転移・浸潤が胸骨の所まで及ぶ

などの場合です。胸骨切除は大胸筋皮弁形成必要となり、炎症による胸水貯留おきる場合もあります。

手術の痕を目立たなくする皮膚縫合

甲状腺手術の痕を目立たなくする皮膚縫合は、特に若い女性の場合、美容上の問題を考えねばなりません。これは形成外科の領域です。細い縫合糸、無傷針付きの形成外科用縫合糸を用いる様です。縫合法は、単一結節縫合、垂直マットレス縫合、埋没縫合、埋没連続縫合(仙台市立病院医学雑誌より)などです。

長崎甲状腺クリニック(大阪)が提携する大阪警察病院 内分泌外科では、甲状腺手術の皮膚縫合は形成外科がおこなうとの事です。

手術の痕を目立たなくする皮膚縫合

経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)は禁忌

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)は行っておりません。

甲状腺の病気があれば、経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)は禁忌です。

経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)とは

そもそも経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)は、経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG/ペグ)が不能・困難な場合、

  1. 胃が無い(胃切除後)
  2. 腹水・腹腔が邪魔、腹水貯留、腹膜透析、脳室腹腔シャント(VP-shunt)留置
  3. 食道裂孔ヘルニア、横隔膜ヘルニアで胃が持ち上がった

などで適応があります。

具体的には、超音波下に頸部食道瘻を造り、留置チューブを挿入、チューブ先端を胃や十二指腸もしくは小腸まで入れ、先端のバルーンを膨らませ、抜けない様にして留置します。

RFB: Rupture-free Balloon (非破裂型穿刺用バルーン)、A: Carotid Artery (頚動脈)(Patient Doctors Networkより)

経皮経食道胃管挿入術(PTEG)

経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)の甲状腺への影響

経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)行うにあたり、頸部食道瘻造るための頚部切開で、甲状腺が問題になります。

  1. 甲状腺が大きかったり、甲状腺腫瘍があったりすると、頚部切開できるスペースが無くなります。
  2. 甲状腺に頚部切開部の炎症が波及するため、甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺機能亢進症/バセドウ病に何らかの影響を与える可能性があります。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区にも近い。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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