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スポーツ・アスリート・ドーピングと甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等  糖尿病編 をクリックください

女性アスリートの3主徴

甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。

Summary

女性アスリートは①運動量に見合う摂取エネルギー不足、低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス) ②無月経視床下部/下垂体性無月経;低ゴナドトロピン性(LH,FSH)、低エストラジオール血症、未発達の子宮③骨粗鬆症;女性ホルモン不足で閉経後骨粗鬆症と同じ。特に低体重・低体脂肪が求められる長距離走、器械体操、新体操が危険。自転車競技の選手は骨粗鬆症に。甲状腺ホルモンはドーピングに使えない。レスリングなど接触プレーによる甲状腺への直接打撃以外に、テニスのストローク、ゴルフのショットなど大きな遠心力、バーベルなど筋肉に大きな負荷が掛かると甲状腺損傷。

Keywords

レスリング,低T3症候群,ノンサイロイダルイルネス,女性アスリート,無月経,ドーピング,低ゴナドトロピン,低エストラジオール,骨粗鬆症,女性ホルモン

アスリートの甲状腺 

レスリング、ボクシングなどの階級別競技と甲状腺

力石徹

レスリング、ボクシングなどの階級別競技は低階級で戦う方が有利なため、選手は短期間で体重を落とし、計量翌日の試合までの一日で急激に体重を増やす無茶な調整をします。”あしたのジョー”で力石徹が過酷な減量[ただし、これは矢吹丈(ジョー)と戦うため、同じ階級になるのが目的です]をしていたのが記憶にあります。力石の死後、成長期で階級を維持できなくなった丈(ジョー)自身も、最後は血を抜いて体重落とす禁じ手に出ます。

群馬大学の報告によると、レスリング選手では

  1. 過度の減量が酸化ストレス(活性酸素)を増加させる
     
  2. 減量極期(計量日)のBMI[体重/(身長)2乗]は有意に低下し、翌日の試合で有意に増加。一方、減量極期(計量日)に有意なFT3低下、FT4上昇、FT3/FT4比低下、 低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス) を呈し、翌日の試合でも変化無し。 低T3症候群は、試合後9日で元に回復。(第61回 日本甲状腺学会 O23-6 短期間の急激な体重の減少と回復がもたらすアスリートの甲状腺機能の変化)

栄養不足は、青年期レスラーの視床下部-下垂体性-生殖腺軸および成長ホルモン-IGF-I 軸障害につながる可能性があります[J Appl Physiol (1985). 1997 Jun;82(6):1760-4.]。

女性アスリートの甲状腺 

女性アスリートの3主徴は、

  1. エネルギー不足;運動量に見合う摂取エネルギー不足
     
  2. 無月経視床下部/下垂体性無月経;低ゴナドトロピン性(LH,FSH)、低エストラジオール(20pg/mL未満)血症、腹部超音波検査で未発達の子宮・薄い子宮内膜
     
  3. 骨粗鬆症;女性ホルモン不足で、閉経後骨粗鬆症と同じ事。競技中に疲労骨折おこします(競技に出られなくなるか、最悪、選手生命が終わる)。

です。特に低体重・低体脂肪が求められる長距離走、器械体操、新体操の3つが危険です。

女性アスリートの3主徴
女性アスリートの甲状腺

女子高校生長距離ランナーの甲状腺機能を調べた報告では、

  1. 81.3%が低体重(BMI<18.5)
  2. 甲状腺ホルモンFT3値は低いが、TSHは正常で、低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス) の状態
  3. 甲状腺ホルモンは骨密度(BMD)と栄養摂取に相関;要するに骨が脆く、栄養状態悪い

女性アスリートの低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス) を改善し、骨密度を高めるために、選手は十分な栄養を摂り、体重を適正に維持する必要があります(Acta Med Okayama. 2019 Apr;73(2):127-133.)

自転車競技

自転車競技にはロードレースとマウンテンバイクの2種類がありますが、医学的には全くの別競技です。

ロードレース選手の体脂肪は3%以下で、無駄な筋肉はなく、足は細いです。ロードレース選手に骨折が多いのは、転倒の衝撃だけが原因ではありません。ロードレース歴が長い程、体を支える背骨(脊椎骨)の骨密度が低く、骨粗鬆症になります。

一方で、

  1. 自転車競技も含まれるが、全身にまんべんなく負荷・衝撃が掛かるトライアスロン選手
  2. 凸凹の山岳道を走り、全方向から負荷・衝撃が掛かるマウンテンバイクの選手
  3. 同様にレスリング、重量挙げの選手

の骨密度は低くなりません。

ロードレースは、なめらかな舗装道を走るために骨(特に背骨)への負荷が少ないのです。それなのに野外スポーツなので大量の汗をかき、カルシウム(Ca)が体外に失われるため、益々、骨が脆くなります。1Lの汗で40mgほどのカルシウムが失われます。 

さらに水分補給目的で、リン(P)の多い清涼飲料水を飲むと、骨からカルシウム(Ca)が溶け出します。スポーツドリンクなら大丈夫です。栄養補給のため、リン(P)の多いスナック菓子を食べるのも同じ事で、カロリーメイト®などの栄養補助食品を取らねばなりません

ロードレース選手で甲状腺がんが見つかった人、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が見つかった人などスポーツニュースで時々見かけます。甲状腺機能亢進症/バセドウ病だけでも骨粗しょう症になるのに大変です(甲状腺機能亢進症/バセドウ病骨粗しょう症と骨折 )。

分岐鎖アミノ酸(BCAA)[バリン、ロイシン、イソロイシン]と甲状腺

分岐鎖アミノ酸(BCAA)

分岐鎖アミノ酸(BCAA)のバリン、ロイシン、イソロイシンは骨格筋を構成する要必須アミノ酸で、

  1. 骨格筋のエネルギー源になり、運動の持久力を高めたり、
  2. 筋肉痛・筋損傷を軽減します。

アスリートは骨格筋量が多く、血清BCAAチロシン比(BTR) は低くなります。アスリートの甲状腺ホルモン(FT3)と血清BCAAチロシン比(BTR)に有意な負の相関があります。即ち、血中FT3が高い程、BCAAチロシン比(BTR)が低くなり、甲状腺ホルモンが分岐鎖アミノ酸(BCAA)のエネルギー代謝に関連している可能性が高いです。(第62回 日本甲状腺学会 O1-4アスリートにおける骨格筋量と血清分岐鎖アミノ酸チロシン比お よび甲状腺機能に関する検討)

(図;オオツカ・プラスワンHPより)

甲状腺とドーピング

甲状腺の薬

甲状腺とドーピング

アンチ・ドーピング ガイドブック (日本薬剤師会編)で、甲状腺疾患治療薬は

「静脈内注入および/または静脈内注射で、12時間あたり100mLを超える場合は禁止。但し、入院設備を有する医療機関での治療およびその受診過程、外科手術、又は臨床検査のそれぞれの過程において正当に受ける場合は除く。 」

となっています。

しかし、通常の治療で甲状腺ホルモン剤[リオチロニンナトリウム(チロナミン錠)、レボチロキシンナトリウム水和物 (チラーヂンS他)、抗甲状腺薬[チアマゾール(メルカゾール錠)、プロピルチオウラシル(チウラジール錠、プロパジール錠)を静脈内注射する事などありません。

唯一、命の危険があり、患者が意識障害(意識もうろう)を起こす重篤な甲状腺クリーゼ 、粘液水腫性昏睡 の時のみ点滴投与しますが、試合に出れるような状態ではありません。

そもそも、レボチロキシンナトリウム水和物 (チラーヂンS他)なんかドーピングに使えば、甲状腺中毒、人工的な甲状腺機能亢進症/バセドウ病状態から致死性不整脈をおこし競技中に死亡する危険性があります。

ステロイド薬

代表的なドーピング薬は男性ホルモンのテストステロンです。テストステロンはタンパク同化ステロイドで、タンパク質の同化作用により筋肉を増大させます。

一方、亜急性甲状腺炎橋本病急性増悪などの治療に使用されるステロイドはグルココルチコイド(糖質コルチコイド)で、タンパク質の異化作用のため長期的には筋萎縮に至ります。しかしながら、炎症を抑える作用から痛みが軽減されるのでドーピング薬とみなされます。

老年期鉱質コルチコイド反応性低ナトリウム血症(MRHE)[低浸透圧性低Na血症](細胞外液量ほぼ正常:やや低下)などの治療に使用されるミネラルコルチコイド(鉱質コルチコイド)のフルドロコルチゾンはドーピング薬に指定されていません。

ドーピング隠しのための利尿薬で命の危険

ドーピング隠しの目的で利尿薬が乱用される場合があります。違法薬物を洗い流して、ドーピング検査をすり抜けるのが目的です。本来、利尿薬は、心不全、腎不全、肝硬変、特発性浮腫の治療目的で、医師の処方箋がなければ手に入らないはずです。日本では、病気でもない、ドーピングにまで手を出さねばならないトップレベルのスポーツ選手が持っている訳がありません。

恐ろしいのは、ネット通販の個人輸入で、誰でも簡単に手に入れてしまう現状です。素人が利尿薬を乱用すれば、低カリウム血症になるのは必至です(サイアザイド利尿薬ループ利尿薬)。

最初は、あたかも甲状腺機能亢進症/バセドウ病に伴う低カリウム性周期性四肢麻痺の様で

  1. 筋肉痛、筋硬直、筋痙攣など前駆症状
  2. 数分-数日続く発作性・近位筋優位の四肢筋力低下(弛緩性麻痺)と自然回復
  3. 知覚や意識は正常

などの症状ですが、

  1. 利尿薬を乱用を止めない
  2. 利尿により喉が渇くので、カリウム含有量の少ない水を大量に飲み続ける(血中のカリウムが更に薄められる)

なら、

  1. 致死性不整脈
  2. 横紋筋融解症
を起こして死に至ります。

ランナーズハイ

マラソンなどで長時間走り続けると幸福感、快感を感じる「ランナーズハイ」の原因は、脳内麻薬、脳内モルヒネのβエンドルフィンです。βエンドルフィンは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と同時に、プロオピオメラノコルチン(POMC)から1:1の割合で生成されます。 

β-エンドルフィンは、オピオイドμ受容体に結合し、モルヒネと同様に作用し、鎮痛作用はモルヒネの6.5倍とされます。 果たして「ランナーズハイ」の状態が、マラソン選手の精神・身体にどのような悪影響を与えるか明確な答えはありません。甲状腺との関係も不明です。

女性アスリートの甲状腺

athlete's foot(アスリートの足、アスリートフット)

athlete's footは、日本語にすればアスリートの足(アスリートフット)になりますが、英語ではa common fungal infection that affects the feet(足に生じる真菌性感染症、要するに水虫)の別称になります。欧米人のアスリートには白癬症(水虫)が多く、共用のシャワールームと繋がっているロッカールームは高温多湿で白癬菌が繁殖しやすいためと考えられます。

アスリートフット

スポーツで甲状腺損傷

レスリングなど接触プレーによる甲状腺への直接打撃以外に、テニスのストローク、ゴルフのショットなど大きな遠心力、バーベルなど筋肉に大きな負荷が掛かると、

  1. 甲状腺組織がダメージを受ける(首への衝撃や遠心力で甲状腺にも障害(甲状腺損傷)
  2. のう胞性腫瘍内で出血(のう胞内出血

が起こったりします。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

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  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
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