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造血幹細胞移植と甲状腺  [甲状腺超音波(エコー)検査 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

長崎甲状腺クリニック(大阪)は、甲状腺専門クリニックです。白血病・造血幹細胞移植の診療は行っておりません。

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、毎年1度、日本のどこかで開催される日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

日本骨髄バンク 造血幹細胞移植と甲状腺

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等  をクリックください。

Summary

小児は成人より骨髄移植成績が良く長期生存率は高いが①移植前の全身放射線照射と大量化学療法、移植後慢性移植片対宿主反応(GVHD)で、やせ、低身長や内分泌障害(潜在性/顕在性甲状腺機能低下症成長ホルモン分泌不全思春期発達遅延不妊症)、移植後メタボリックシンドロームの心血管系障害で早期死亡リスク②免疫再構築症候群③前処置の放射線被爆、移植後の免疫抑制療法による二次発癌・甲状腺癌甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症/橋本病はドナー登録不可。さい帯血移植は拒絶反応少ない。

Keywords

小児,骨髄移植,甲状腺機能低下症,成長ホルモン分泌不全,甲状腺癌,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,橋本病,ドナー,さい帯血移植

水泳選手の白血病が報道されたのを機に、「甲状腺の病気でもドナー(臓器提供者、今回は造血幹細胞の提供者ですが)になれるの?」と言う質問を多く受けるようになりました。答えは ドナー適格性判定基準と甲状腺 の通りです。

骨髄移植では、ドナー(臓器提供者)とレシピエント(臓器受領者)の間で、4つの領域のHLA(組織適合抗原)の3つでそれぞれ一致しなければ拒否反応が出てしまいます(臍帯血移植なら2つ)。完全一致する確率は兄弟間なら1/4、親子なら1/1000、他人なら1/数万-数百万であるため、骨髄バンクには膨大な数の登録が必要となります(2021年、骨髄バンクのドナー登録数は約53万人)

日本で骨髄移植が必要な人は年間2000人ほど、実際に移植が行われるのは半分です。

しかしながら、甲状腺の病気があるとドナー登録できない場合が多いのです。

造血幹細胞移植と甲状腺機能低下症

造血幹細胞移植(Hematopoietic stem cell transplantation)は、正常な血液を作れない白血病、再生不良性貧血などに、提供者(ドナー)の造血幹細胞を移植し、正常な血液を作れるようにする治療です。

特に、小児では成人より移植成績が良く長期生存率が高いが、移植前処置の全身放射線照射と大量化学療法、移植後の慢性移植片対宿主反応(GVHD) により、やせ、低身長や内分泌障害(成長障害・甲状腺機能障害)が高率に起きます。

  1. 潜在性甲状腺機能低下症(TSH値上昇、遊離T4値正常)は、移植後1年以内15%に発症。
  2. 顕在性甲状腺機能低下症は約50%と報告されています。(Blood. 2009 Jan 8;113(2):306-8.)
  3. 甲状腺癌の発生率増加(Blood. 2009 Jan 29; 113(5):1175-83.)(N Engl J Med. 1997 Mar 27; 336(13):897-904.)。増加しないとの報告もあり。
     
  4. 視床下部-下垂体への放射線照射による成長ホルモン分泌不全、放射線やステロイドによる骨端線(成長線)の障害(Thomas’ Hematopoietic Cell Transplantation (ed 4th Ed). Malden, Blackwell Publishing Ltd, 2007, 1608–1619.)
  5. 思春期発達遅延(二次性徴の遅れ)や不妊症。男性ホルモン補充、女性ホルモン補充(Kaufmann療法など)。将来に備えて思春期以降の男子は精子保存。未受精卵子の保存に一般的な方法はないとされるが、不妊治療で使われている採卵などは難しいのか?
  6. 移植後メタボリックシンドローム(肥満・インスリン抵抗性・耐糖能異常・脂質異常症・ 高血圧)により心血管系障害で早期に死亡するリスクが高い(Blood. 2007 Feb 15;109(4):1765-72.)
     
  7. 慢性GVHDにより
    ①甲状腺機能障害、甲状腺癌の発生(Marrow Transplant. 2013;48:363–368.)
    ②唾液腺が障害され、唾液の分泌が著しく低下、嚥下障害(飲み込みにくい)、口腔内雑菌が増え、齲歯(虫歯)に成り易い。涙腺が障害され乾燥性角結膜炎(ドライアイ)。(橋本病(慢性甲状腺炎)合併シェーグレン症候群(ドライアイ,口内乾燥) のよう)(Pediatr Blood Cancer 61: 407–416, 2014.)(Biol Blood  Marrow Transplant 21: 1687–1691, 2015.)

最近では自己免疫性甲状腺疾患, 橋本病/バセドウ病に合併した多発性硬化症・全身性強皮症に造血幹細胞移植が行われています。

造血幹細胞移植と免疫再構築症候群(immune reconstitution syndrome)

造血幹細胞移植後の免疫再構築症候群(immune reconstitution syndrome)として、ドナーの免疫系がレシピエントの臓器を攻撃する可能性があるため、下記の様に自己免疫疾患を持つ者はドナーに成れません(ドナー適格性判定基準と甲状腺)。

盲点は臍帯血輸血で、同種造血幹細胞移植よりも臓器適合性基準が緩く、そもそも胎児が将来自己免疫性甲状腺疾患のバセドウ病橋本病を発症するかどうか分かりません(父母の家系を詳しく問診すれば予測できる可能性もありますが)。

ただ、筆者が調べた限りでは、2022年11月の時点で、臍帯血輸血による免疫再構築症候群の報告はありません。

臍帯血輸血3カ月後に免疫再構築から抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性化、無痛性甲状腺炎をおこし、抗GAD抗体も陽性化した報告があります。(第61回 日本甲状腺学会 O20-6 臍帯血輸血後に無痛性甲状腺炎と抗GAD抗体陽性を呈し免疫再構築症候群が疑われた急性骨髄性白血病の一例)

骨髄移植後に発生する甲状腺乳頭癌

骨髄移植後は、前処置の放射線被爆、移植後の免疫抑制療法による二次発癌をきたす危険があります。骨髄移植後は、甲状腺癌の発生を念頭に定期的な頸部超音波検査を行う必要があります。

東北大学病院が、小児期に骨髄移植歴がある小児甲状腺乳頭癌の2症例を報告しています。いずれも10歳前に骨髄移植し、7年後に小児甲状腺乳頭癌を発症したそうです。(第59回 日本甲状腺学会 P3-3-5 骨髄移植歴がある小児甲状腺乳頭癌の2 例)

ドナー適格性判定基準と甲状腺

日本骨髄バンク

財団法人 骨髄移植推進財団のドナー適格性判定基準では、ドナー登録できるのは、第一に20歳以上、55歳以下です。56歳以上では、甲状腺云々の前にドナー登録できません。

体重にも制限があり、男性45kg以上/女性40kg以上に限られますが、痩せすぎよりも肥満・メタボが問題の現代日本では、あまり問題にならないでしょう。

本題の内分泌疾患;甲状腺疾患では、

  1. 甲状腺機能亢進症は不可(既往・I-131 アイソトープ治療後・手術後も含む)
  2. 甲状腺機能低下症の既往があるものは不可
  3. 単純性甲状腺腫(非中毒性甲状腺腫)の既往は、橋本病(慢性甲状腺炎)が否定されれば可
  4. 甲状腺腫瘍の既往は、良性結節であれば可。
    甲状腺癌の既往は不可ですが、甲状腺に限らず、悪性腫瘍(がん)は全て不可になっています。
  5. 急性(化膿性)甲状腺炎亜急性甲状腺炎は治癒していれば可. 

となっています。甲状腺専門医が作成した基準でないため、片手落ちはありますが、大体こんなものでしょう。甲状腺機能亢進症は、正確には甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症は、甲状腺機能低下症/橋本病の事を言っているのだと思います。バセドウ病橋本病共に、自分の免疫細胞(白血球)が自分の甲状腺を攻撃する病気なので、移植された幹細胞より作り出される白血球が、レシピエント(移植された人)の甲状腺を攻撃するだろう事は容易に推測できます。自分の甲状腺すら攻撃する白血球なら、他人の甲状腺を更に激しく攻撃するはずです。

単純性甲状腺腫は、橋本病(慢性甲状腺炎)の予備軍が多いので、どうかと思います。

甲状腺癌の既往は、放射線療法をしていない限り、ドナー白血球に無関係なので理由は不明です。癌細胞がドナー幹細胞に混じるのか?あるいは、骨髄採取がドナーの健康状態に悪影響を及ぼす可能性を考えての事でしょう。

実際の症例

実際の症例も報告されています。HLA完全一致の姉より同種骨髄移植を施行されたが、移植2年後にバセドウ病発症。移植前の姉の甲状腺機能正常で抗甲状腺抗体陽性だったそうです。(臨床血液 2002 43(9)833-835)

まさか甲状腺の病気を持っているとは夢にも思わない人がドナー登録して、移植されたレシピエントが橋本病(慢性甲状腺炎)による甲状腺機能低下症になった後、ドナーが遅れて甲状腺機能低下症/橋本病を発症した症例も報告されています。(Bone Marrow Transplant. 1990 May;5(5):357-61.)

非常に興味深いのは、ドナーがバセドウ病TS-Ab(TSHレセプター抗体[刺激型]; TSH刺激性レセプター抗体) 優位)なら、レシピエントは萎縮性甲状腺炎TSB-Ab(TSHレセプター抗体[阻害型])  保険適応外 優位)になったと言う報告が複数あった事です。(Endocr J. 2004 Aug;51(4):439-43.)(Bone Marrow Transplant. 2000 Dec;26(11):1217-20.)

さい帯血移植ではどうなの?

さい帯血移植とは、へその緒(さい帯)と胎盤に残っている血液(約 50-150mL)をに移植(静脈輸血)するものです。さい帯血には造血幹細胞(血液細胞を造る大元の細胞)が豊富に含まれており、通常の造血幹細胞移植と異なり、拒絶反応が少ない利点があります。しかも、ドナー(骨髄提供者)に、入院の上、全身麻酔で骨髄を採取させてもらう手間が省けます。

「公的さい帯血バンク」に登録するだけで、今まで捨てられていたへその緒(さい帯)と胎盤が有効に使われます(へその緒は血液を採取した後、記念に返せばよい事でしょう)。拒絶反応が少ないなら、移植後の慢性移植片対宿主反応(GVHD) による、やせ、低身長や内分泌障害(成長障害・甲状腺機能障害)が軽減されるかもしれません。

難点は、血液量が少ない(約 50-150mL)ため、小児でしか使えない事が多いです。

 

血縁者間同種骨髄移植

血縁者間同種骨髄移植で、血縁ドナー候補者は、患者(レシピエント)や他の家族から臓器提供して当然と期待され、圧力を掛けられる場合もあります。

提供意思は本人の善意と自由意思でなければならず、示された意思は尊重されねばなりません。従って、提供意思を確認するための面談の場に患者(レシピエント)本人や他の家族の同席を避けます。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療     長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,浪速区,天王寺区,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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