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遺伝性大腸ポリープ/大腸癌と甲状腺癌①篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌、家族性腺腫性ポリポーシス[長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、毎年10月以降に開催される日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等において学術目的で使用可能なもの(Creative Commons License)、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

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甲状腺乳頭癌モルラ 超音波(エコー)像(Ultrasonography. 2017 Apr 36(2) 103–110.)

甲状腺乳頭癌モルラ型 超音波(エコー)像

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。家族性腺腫性ポリポーシスの診療を行っておりません。

遺伝性甲状腺腫瘍

遺伝性に大腸ポリープ/大腸がんが多発する病気[家族性腺腫性ポリポーシス、ガードナー症候群、コーデン(Cowden)病]と甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌の関連が知られています。

近親者・御自分が大腸ポリープ/大腸がんの方は、甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。
また、近親者・御自分が甲状腺癌なら、大腸検査が必要です。

Summary

常染色体優性遺伝性に若年者で大腸ポリープ/大腸がんが多発する家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)(癌抑制遺伝子APC変異)・ガードナー症候群は篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌と関連あり。篩型甲状腺乳頭癌腺腫様甲状腺腫のような多結節病変、腫瘍のサイズ・数の割にサイログロブリン上昇が軽度。悪性度が高く紡錘型細胞・高細胞が篩(ふるい)とモルラ(渦巻き)を形成、通常の甲状腺乳頭癌と異なり、すりガラス状の核なし、細胞質もβ-カテニンで染まりサイログロブリン陰性・エストロゲン受容体プロゲストロン受容体(ER/PgR)陽性。

Keywords

遺伝,大腸ポリープ,大腸がん,家族性腺腫性ポリポーシス,ガードナー症候群,甲状腺乳頭癌,ふるい型乳頭癌,モルラ型乳頭癌,甲状腺,甲状腺癌

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌(cribriform-morular variant)

家族性腺腫性ポリポーシス、ガードナー症候群と篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌

APC遺伝子

家族性腺腫性ポリポーシス(家族性大腸腺腫症、家族性大腸ポリポーシス、familial adenomatous polyposis;FAP)のに発生する甲状腺癌の特徴は、

  1. 女性優位(94.3%)
  2. 甲状腺乳頭がん(88.5%)
  3. 30歳未満で発症(平均23.6歳、範囲16〜40歳)
  4. 家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)が同定されてから1〜17年後に発見(55.5%)
    FAPが診断される前に発見(29.6%)
    同時に発見(14.8%)
  5. 多発性(64%)

[Dig Dis Sci. 1993 Jan;38(1):185-90.]

家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、ガードナー症候群に関連する甲状腺乳頭癌篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌です。家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)の0.3–1.2%に甲状腺乳頭癌が発生し、篩型乳頭癌がほぼ100%を占めます(Histopathology. 1994 Dec;25(6):549-61.)。

家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)に合併する篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は、APC遺伝子異常により、腺腫様甲状腺腫濾胞性腫瘍のような多結節病変を形成します。通常の甲状腺乳頭癌とは異なり、甲状腺髄様癌に似た紡錘型細胞が特徴で、紡錘型細胞が篩(ふるい)・モルラ(渦巻状の小結節)構造を形成します(papillary carcinoma, cribriform-morular variant;CMPTC)。

もちろん、FAPと無関係の散発性篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌も存在します。FAP合併例は多発性ですが、非合併例は単発性が多い。

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌甲状腺乳頭癌の0.1%に過ぎず、ほとんど30歳以下の若年女性(男女比≒1:10)に発症し、常染色体優性遺伝形式を示しません。(APC遺伝子異常による家族性大腸ポリポーシスは常染色体優性遺伝ですが)。

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は、甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV)と同じく、悪性度が高い点が、通常型甲状腺乳頭癌と異なります。家族性大腸ポリポーシス(FAP)に合併する篩型乳頭癌の約10%が、転移もしくは甲状腺癌死したそうです(Histopathology. 1994 Dec;25(6):549-61.)。

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の血液検査所見

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の血液検査所見の特徴は、腫瘍のサイズ、数の割にサイログロブリン上昇が軽度なことです。

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の超音波(エコー)所見

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)画像

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)画像

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)画像2

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)画像2

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)画像2 (拡大)

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)画像 (拡大)

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の超音波(エコー)所見は、

  1. 腺腫様甲状腺濾胞性腫瘍のような形態
  2. 散発性篩(ふるい)型甲状腺乳頭癌なら単発性が多い。家族性大腸ポリポーシス(FAP)に合併すると、APC遺伝子異常により多結節病変
  3. 境界は明瞭平滑、血流に乏しい、可動性良好で悪性を疑う所見に乏しいが硬い(唯一、悪性を疑う所見)

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)画像[Ultrasonography. 2017 Apr 36(2) 103–110.]

甲状腺乳頭癌モルラ型 超音波(エコー)像

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の細胞診

篩(ふるい)

篩(ふるい)

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の細胞診は、

  1. 索状構造や充実性集塊を認め、これが篩(ふるい)とモルラ(渦巻き)である事に気が付けば上出来。気付かなくても、甲状腺低分化癌を疑い組織生検に進めば確定診断できます
     
  2. 通常の甲状腺乳頭癌のようなすりガラス状の核はありません。
     
  3. 高細胞・多発空胞・硝子球・peculiar nuclear clearing[充実性領域の細胞を主体に核が明るく抜ける像]など特徴的
     
  4. あるいは結合性に富み重積性を示す紡錘形細胞集塊、アミロイド様の無構造物質を認める事も[甲状腺髄様癌胸腺様分化を伴う紡錘形細胞腫瘍(SETTLE)と鑑別→血清カルシトニンCEAは正常]

(Thyroid. 2009 Aug;19(8)905-13.)

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌 ベータカテニン染色

通常型甲状腺乳頭癌では核のみβカテニン染色で染まりますが、篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は細胞質も染まります。

※β-カテニンはAPC蛋白の下流の物質

(Arch Pathol Lab Med. 2019 Nov;143(11)1382-1398.)

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の組織診

(病理組織:Int J Med Sci 2004;1(1):43-49.)

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織[篩(ふるい)型構造]

モルラ型甲状腺乳頭癌
篩(ふるい)型構造:濾胞の内腔にコロイドがない;弱拡大

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織(高細胞)

モルラ型甲状腺乳頭癌:高細胞

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織モルラ(渦巻状)構造

モルラ型甲状腺乳頭癌:モルラ(渦巻状の小結節)構造

モルラ型甲状腺乳頭癌 エストロゲン受容体

モルラ型甲状腺乳頭癌は、通常型甲状腺乳頭癌と異なりサイログロブリン陰性で、乳癌と同じくエストロゲン受容体プロゲストロン受容体(ER/PgR)を持ち、免疫染色にて鑑別できます。通常型甲状腺乳頭癌と同じくTTF-1は陽性です。

(Thyroid. 2009 Aug;19(8)905-13)

また、Ki-67スコアリング(MIB-1 index)10%以上の高値が多い[Pathobiology. 2019;86(5-6):248-253.]。

家族性腺腫性ポリポーシス(familial adenomatous polyposis;FAP)

家族性腺腫性ポリポーシス(familial adenomatous polyposis;FAP)とは

日本における家族性腺腫性ポリポーシス(familial adenomatous polyposis;FAP)の頻度は、17000人に1人と比較的稀です。

家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)は、常染色体優性遺伝による癌抑制遺伝子APC(adenomatous polyposis coli)変異で若年者に大腸癌が発生。若年時のがん検診で便潜血陽性を指摘され、100個を超える大腸ポリープで見つかり診断されるケースが多いです(普通、20-30代の若年時に、がん検診を受ける人はほとんどいないのですが・・・)。

甲状腺、子宮、卵巣でもAPC遺伝子が存在します。女性では甲状腺がん(前述の篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌(cribriform-morular variant))の発生が多く、子宮がんが出きる事も、卵巣がんは非常に稀。消化管以外では脳腫瘍、腹腔内デスモイド腫瘍が多いとされます。

60歳頃までに、ほぼ100%大腸癌が発症するため、予防的大腸切除が推奨されます。胃底腺ポリープも密生しますが癌化率は大腸ほど高くなく、年1回の内視鏡検査のみ。十二指腸がんが発生する事もあります。小腸ポリープも多発しますが、癌化率は低い。

家族性大腸腺腫症
家族性大腸ポリポーシス 胃

家族性大腸ポリポーシス(左) 大腸内視鏡 (右)胃内視鏡

家族性腺腫性ポリポーシスの遺伝子診断

家族性大腸ポリポーシス[家族性腺腫性ポリポーシス、familial adenomatous polyposis;FAP]の原因遺伝子、APC遺伝子を持っていると100%大腸がんになります。APC遺伝子診断を行い、APC遺伝子変異陽性者は予防的大腸切除術が必要になります。

ガードナー症候群(Gardner症候群)

ガードナー(Gardner)症候群:常染色体優性遺伝性のAPC遺伝子変異で

  1. 骨腫と軟部腫瘍、乳頭部癌、線維腺腫、歯牙異常、デスモイド腫瘍を発症
  2. 40歳までに100%大腸癌化する

[Arch Pathol Lab Med. 2019 Nov;143(11):1382-1398.]

甲状腺癌を発症するガードナー症候群の特徴は、

  1. 女性優位(89%)
  2. 若年(78%が30歳未満)
  3. 甲状腺乳頭癌(88%)
  4. 多発性(70%)
  5. 甲状腺癌が遺伝性ポリポーシスの診断に先行(30%)

[Aust N Z J Surg. 1993 Jun;63(6):505-9.]

胃カメラ・大腸カメラ

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