濾胞腺腫細胞像良悪性鑑別困難症例,悪性度不明な高分化腫瘍(WDT-UMP)・悪性度不明な濾胞型腫瘍(FT-UMP)[長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。
高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。
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Summary
濾胞腺腫細胞像良悪性鑑別困難症例は構造異型と核異型で分類。長崎甲状腺クリニック大阪では濾胞癌を疑う条件を伴えば手術を勧める。WDT-UMP:Well-differentiated tumor of uncertain malignant potentiaは乳頭癌に類似した核所見を有し、被膜浸潤や血管浸潤が存在しない、悪性度不明な高分化腫瘍。FT-UMP:follicular tumor of uncertain malignant potentialは乳頭癌に類似する核所見を欠いて、被膜浸潤や血管浸潤が疑わしいが確定的ではない、悪性度不明な濾胞型腫瘍。
Keywords
良悪性鑑別困難,WDT-UMP,Well-differentiated tumor of uncertain malignant potentia,悪性度不明,高分化腫瘍,FT-UMP,follicular tumor of uncertain malignant potential,濾胞型腫瘍
甲状腺専門医および病理診断医を最も悩ませる問題の1つが濾胞腺腫良悪性鑑別困難例です。
上條甲状腺クリニックのデータによると、4cm以上の濾胞腺腫良悪性鑑別困難例は、50%が甲状腺濾胞癌とされます。(「上條甲状腺クリニックの甲状腺疾患Q&A」より)
(以下の細胞診の所見は、医療関係者以外の方は無視してください。写真のみご覧になり、「こんなものか」と思っていただければ十分です。)
濾胞腺腫細胞像良悪性鑑別困難症例は、
- 腫瘍細胞が多く採取され、不整な配列(構造異型)
- 重積や細胞間結合性低下(構造異型)
- 核径不整、N/C比増大(核径増大)、核の大小不同(核異型)
- クロマチン顆粒の肥大(核異型)
構造の異型(配列等がおかしい)と核異型(核がおかしい)の程度により
favor benign(良性寄り)、borderline(境界)、favor malignant(悪性寄り)に分けられます。(写真;バーチャル臨床甲状腺カレッジより)
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、濾胞腺腫細胞像良悪性鑑別困難症であって、かつ3cm以上など濾胞癌を疑う条件(甲状腺濾胞性腫瘍の手術適応)を伴えば手術をお勧めしています。
好酸性腫瘍細胞が主体のときは鑑別困難の扱いになります。
濾胞腺腫良悪性鑑別困難例(好酸性腫瘍細胞主体)の具体例です。(Endocr J. 2012;59(6)483-7.)
これら濾胞腺腫良悪性鑑別困難例の細胞像は筆者の眼には癌細胞としか見えないのですが、良性と言い切れないなら中途半端な病名は考えずに、「濾胞癌の可能性を否定できない濾胞腺腫」に改めた方が良いと思います。

[内分泌甲状腺外会誌 34(2):76-80,2017 より改変]
UMP(uncertain malignant potential)とは良性と悪性を明確に分類できない腫瘍です。
- 乳頭癌に類似した核所見を有し、被膜浸潤や血管浸潤が存在しないものは、悪性度不明な高分化腫瘍(WDT-UMP:Well-differentiated tumor of uncertain malignant potential)
- 乳頭癌に類似する核所見を欠いて、被膜浸潤や血管浸潤が疑わしいが確定的ではない、悪性度不明な濾胞型腫瘍(FT-UMP:follicular tumor of uncertain malignant potential)
と定義されます(Int J Surg Pathol 2000; 8:181-183)。濾胞腺腫良悪性鑑別困難例とほぼ同じ意味です。
そもそも、手術しなけりゃ境界悪性病変か悪性病変か鑑別できないものに、名前を付ける意味があるのだろうか?手術標本でしか分からないなら、濾胞腺腫良悪性鑑別困難例の方がまだましです。
[Endocr J. 2022 Jul 28;69(7):757-761.]
※2023年10月に刊行された「第9版甲状腺癌取扱い規約」では、(必ずしも良性でない)低リスク腫瘍に分類されます。9回改訂され、今後も改訂され続ける「甲状腺癌取扱い規約」は、回を追うごとに細分化複雑化し、もはや病理医間の診断もばらつきが大きくなり、実臨床上の治療方針に大きな違いが生じています(実害が出ている)。
悪性度不明な高分化腫瘍(WDT-UMP);超音波(エコー)画像から判るように、良性濾胞腺腫よりも、腺腫様結節や濾胞型甲状腺乳頭癌に近い見え方です。
濾胞腺腫良性悪鑑別困難例・WDT-UMP・FT-UMPを手術すべきか、意見の分かれる所ですが、筆者自身は「疑わしきはオペする」のが良いと思います。経過観察の末、遠隔転移した後に「やっぱり甲状腺癌だったのか・・、早く手術しておけばよかった・・・。」では遅いからです。(Int J Thyroidol. 2019 May;12(1)15-18.)
そもそも、WDT-UMPと濾胞型甲状腺乳頭癌・Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP) を正確に鑑別できる病理専門医が、日本で一体何人いるのかも不明です(おそらく数えるくらい)。
とにかく、日本の病理診断には病理専門医の主観が色濃く入り、病理専門医によって診断は変わるため、(筆者も含めて)甲状腺専門医が振り回されるのは日常茶飯事です。「アメリカと同じく、AI(人工知能)による統一された病理診断へ切り替えるべきだ」との声は多い。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。














