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亜急性甲状腺炎と甲状腺機能亢進症/バセドウ病・萎縮性甲状腺炎の合併/移行[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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亜急性甲状腺炎の診療停止について

日本での新型コロナウイルス感染が完全に終息するまで亜急性甲状腺炎の診療は停止(ステロイド投与中のコロナ感染は重症化するため)

亜急性甲状腺炎のステロイド治療は、新型コロナウイルス感染にすぐ対処できるよう、コロナ病床のある病院で行った方が良いと思います。

甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。

その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用) 橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

亜急性甲状腺炎とバセドウ病の合併/移行

Summary

亜急性甲状腺炎バセドウ病の合併/移行がありうる。亜急性甲状腺炎の経過中、TSH受容体抗体(TRAb)・TSAbが陽性なら①元々バセドウ病だった②誘発された可能性。亜急性甲状腺炎が終息後、これら抗体は持続もしくは一過性で消失。甲状腺の痛みが消失、CRPも陰性化したのにFT4・特にFT3が上昇する場合、甲状腺機能亢進症/バセドウ病への移行を疑う。回復期に甲状腺機能低下症を認めたら、TSBAb(TSHレセプター抗体[阻害型]、甲状腺刺激阻害抗体)が誘導されて萎縮性甲状腺炎へ移行した可能性。TRAbのみ陽性化し、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行しない事も。

Keywords

亜急性甲状腺炎,バセドウ病,合併,移行,TRAb,TSAb,TSBAb,萎縮性甲状腺炎,甲状腺機能亢進症,甲状腺機能低下症

亜急性甲状腺炎とバセドウ病、橋本病(慢性甲状腺炎)の合併/移行

亜急性甲状腺炎

  1. 発見時(同時なのか、発症前に存在していたのか不明)(Case Rep Endocrinol. 2018 Oct 30;2018:3210317.)
  2. 経過中
  3. 数ヶ月後から数年後(Clin Endocrinol (Oxf). 1998 Apr; 48(4):445-53.)

バセドウ病の自己免疫抗体(TSH受容体抗体:TRAb)が、血液検査で検出されることがあります。

その理由として、

  1. 既にバセドウ病である人が亜急性甲状腺炎発症
    (第55回 日本甲状腺学会 P2-08-03 バセドウ病診断時に亜急性甲状腺炎を合併していた1 例)
    (第54回 日本甲状腺学会 P075 バセドウ病に亜急性甲状腺炎が合併した症例と無痛性甲状腺炎が合併した症例の甲状腺機能の相違)
     
  2. もともとバセドウ病素因がある人で、
    亜急性甲状腺炎によって破壊され、血中へ放出された甲状腺濾胞細胞(もしくは細胞成分)が抗原となって自己免疫反応が誘発された
    亜急性甲状腺炎の炎症性サイトカイン(サイトカインストーム)が原因で、自己免疫反応が誘導された
    ③ステロイドを減量する際、リバウンド的に自己免疫反応が誘導された(筆者の印象では、急激にステロイド剤を減量した報告に多いような気がします。例えば、プレドニゾロン20mgを5日後に10mgにする)

    (第55回 日本甲状腺学会 P2-08-02  亜急性甲状腺炎からバセドウ病を発症した比較的高齢女性の1 例)
    (第56回 日本甲状腺学会 P1-048 亜急性甲状腺炎の加療中にバセドウ病を発症した一例)

と考えられます。HLAタイピングでB35とDR3が検出され、亜急性甲状腺炎バセドウ病の両方に対する遺伝的感受性を認めた報告があります(Thyroid. 1996 Aug;6(4):345-8.)(Thyroid. 2011 Dec;21(12):1397-400.)。

亜急性甲状腺炎終息後、

  1. ほとんども患者でTSH受容体抗体(TRAb)消失
  2. TSH受容体抗体(TRAb)が残存し、バセドウ病へ移行
    バセドウ病抗体については下記参照

(Thyroid. 1996 Aug;6(4):345-8.)(Clin Endocrinol (Oxf). 1998 Apr;48(4):445-53.)(Intern Med. 2003 Aug;42(8):704-9.)

亜急性甲状腺炎とバセドウ病の同時合併

亜急性甲状腺炎バセドウ病の同時合併(Case Rep Endocrinol. 2018 Oct 30;2018:3210317.)

寛解中のバセドウ病に発生した亜急性甲状腺炎

寛解中のバセドウ病に発生した亜急性甲状腺炎

寛解中のバセドウ病に発生した亜急性甲状腺炎 ドプラーモード

寛解中のバセドウ病に発生した亜急性甲状腺炎

寛解中のバセドウ病に発生した亜急性甲状腺炎 エラストグラフィー

寛解中のバセドウ病に発生した亜急性甲状腺炎 エラストグラフィー

どの様な時に、亜急性甲状腺炎のバセドウ病移行を疑うか

どの様な時に、亜急性甲状腺炎バセドウ病移行を疑えば良いでしょうか?

  1. プレドニゾロン(PSL)開始後、甲状腺の痛みは消失し、CRPも陰性化したのに、FT3、FT4(特にFT3)が上昇する場合(通常は低下します)
    (第57回 日本甲状腺学会 P2-018 亜急性甲状腺炎が誘因となり発症したバセドウ病の1 例)
    (第61回 日本甲状腺学会 O19-3 亜急性甲状腺炎の発症から、徐々にBasedow病が顕在化してく る病態を継時的に観察し得た一例)
     
  2. 亜急性甲状腺炎発症時から、
    ①TSH受容体抗体(TRAb)陽性
    ②FT3優位の甲状腺中毒症(破壊性変化が勝る場合はFT4優位のケースが多い)
    ③アイソトープ検査(99mTc シンチグラフィー、I-123 シンチグラフィー)でバセドウ病パターン、あるいは亜急性甲状腺炎の炎症巣で取り込み欠損・非炎症巣で集積率高値)。
    (Thyroid. 1996 Aug;6(4):345-8.)(Clin Endocrinol (Oxf). 1998 Apr;48(4):445-53.)(Intern Med. 2003 Aug;42(8):704-9.)
    有痛性バセドウ病」の中には亜急性甲状腺炎バセドウ病の合併が含まれていると筆者は考えます。

長崎甲状腺クリニック(大阪)では、亜急性甲状腺炎からバセドウ病への移行を見逃さないため、初診の方にはFT3だけでなく、破壊/バセドウ病の活動性を示すサイログロブリンも測定します。

萎縮性甲状腺炎への移行もあり

萎縮性甲状腺炎は、バセドウ病抗体であるTSHレセプター(受容体)抗体(TRAb)が甲状腺を刺激する事無く、TSH(甲状腺刺激ホルモン)とTSHレセプターの結合を阻害して甲状腺機能低下症に至る病気(萎縮性甲状腺炎)。この時のTRAbは、特殊型のTSBAb(TSHレセプター抗体[阻害型]、甲状腺刺激阻害抗体)です。

実は、既にTSBAb亜急性甲状腺炎の急性期(破壊期)に陽性化しているが、甲状腺中毒症によりマスクされてしまいます(Endocr J. 1996 Apr;43(2):185-9.)。

埼玉医科大学の報告では、亜急性甲状腺炎の急性期にTRAb 17.6 IU/Lと強陽性、回復期(低下期)にはTSBAb 99.2 %(<31.7%)・TSAb(TSHレセプター抗体[刺激型]、甲状腺刺激抗体) 221%(<120%)となって、1年以上も甲状腺機能低下症が続いているそうです(第59回 日本甲状腺学会 P2-2-4 一過性にTRAb 高値を示し、1年以上甲状腺機能低下症が持続する亜急性甲状腺炎の一例)。

亜急性甲状腺炎の回復期に甲状腺機能低下症を認めた場合、

  1. 患者の約20%でTSBAb(TSHレセプター抗体[阻害型]、甲状腺刺激阻害抗体)が陽性化している。1.2~3.5年の甲状腺ホルモン補充療法を必要とするが、最終的にTSBAbは消失し、甲状腺機能は正常に。
     
  2. TSBAbが陰性なら、甲状腺機能低下症は一過性(2〜6ヶ月間)の事が多い

とされます(J Clin Endocrinol Metab. 1991 Aug;73(2):245-50.)。

ただし、急性期はTRAbの有無に関わらず、甲状腺組織破壊が進行中のため甲状腺中毒症状態で、回復期(低下期)は炎症・破壊のダメージから甲状腺機能低下症になるのは当然です(2. が該当)。甲状腺組織の破壊が重度であれば、永続性の甲状腺機能低下症に至ります(下記、亜急性甲状腺炎の転帰 参照)。

亜急性甲状腺炎の終息後、甲状腺超音波エコー検査で、甲状腺内部が大して破壊されていない、あるいは回復しているのに甲状腺機能低下症が続く場合はTSBAb(TSHレセプター抗体[阻害型]、甲状腺刺激阻害抗体)による萎縮性甲状腺炎の可能性を考えるべきです。

バセドウ病抗体(TRAb)のみ陽性になるが甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行しない(一過性で終息)

バセドウ病抗体(TRAb)のみ陽性になるが、甲状腺機能亢進症/バセドウ病は発症せずに終息する場合もあります。亜急性甲状腺炎

  1. 約2.3%で第1世代バセドウ病抗体(TBII)が陽性
  2. 約1.2%は第1世代バセドウ病抗体(TBII)が陽性でも甲状腺機能正常
  3. 約0.09%はTSAb(TSHレセプター抗体[刺激型]、甲状腺刺激抗体)が陽性で、一時的な甲状腺機能亢進症/バセドウ病になるか、またはTSBAbが陽性で一時的な萎縮性甲状腺炎(甲状腺機能低下症)になる。その後、最終的に抗体は消失し甲状腺機能正常に。
  4. 約0.02%はTSAbが陽性で、そのまま甲状腺機能亢進症/バセドウ病に移行するか、またはTSBAbが陽性で萎縮性甲状腺炎(甲状腺機能低下症)に移行する

(Clin Endocrinol (Oxf). 1998 Apr; 48(4):445-53.)

兵庫県立加古川医療センターの報告では、

  1. 症例1;血液検査でTSH 0.003 μIU/mL,FT4 1.66 ng/dL,FT3 4.45 pg/mL,CRP 1.95 mg/dL と破壊性甲状腺炎のパターン。後日、TRAb 3.4 IU/L(<2.0)が判明、99mTcシンチグラフィでは右葉にのみ集積。プレドニゾロン漸減・投薬中止後も甲状腺機能は正常を維持(その後、TRAb が下がったか不明)。
     
  2. 症例2;TSH 0.003 μIU/mL,FT4 3.03 ng/dL,FT3 9.21 pg/mL,CRP 3.09 mg/dL と甲状腺機能はバセドウ病パターン。初診時TRAb 1.1 IU/L(<2.0)とグレーゾーン、1ヶ月後に8.6 IU/L まで上昇、99mTcシンチグラフィでは右葉にのみ集積。プレドニゾロン漸減して投薬中止後、一時的に甲状腺機能低下になったが、甲状腺機能は正常を維持(その後、TRAb が下がったか不明)。

(第60回 日本甲状腺学会 P1-3-3 TRAb陽性を認めバセドウ病との鑑別を要した亜急性甲状腺炎の2例 )

ただ単に、TRAbのみ陽性になっただけか、実際に甲状腺機能亢進症/バセドウ病になったのか、99mTcシンチグラフィを行えば、はっきりする可能性があります。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,天王寺区,浪速区,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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