甲状腺と突発性難聴,老人性難聴,加齢性難聴,職業性難聴,耳硬化症[橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会年次集会で入手した知見です。
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内耳孔内には顔面神経と内耳神経があります。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。甲状腺のみの診療です。耳鼻・難聴の診療を行っておりません。
Summary
甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症ともに突発性難聴のリスク高い。治療して甲状腺機能が正常化しても突発性難聴のリスクは低下しない。突発性難聴でステロイド治療後にバセドウ病が発症する事も。性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン) の変化は老人性難聴(加齢性難聴)に影響、甲状腺ホルモンの関与は不明。両側騒音性難聴の職業性難聴では、甲状腺ホルモン 遊離サイロキシン(FT4)値が低くなる。耳硬化症のTPO抗体価は正常。
Keywords
突発性難聴,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,老人性難聴,加齢性難聴,甲状腺,職業性難聴,耳,耳硬化症
甲状腺と難聴②
甲状腺と難聴①
甲状腺と中耳炎
突発性難聴とは?
甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症ともに突発性難聴のリスクが高い
突発性難聴を発症するリスクは、
- 甲状腺機能低下症(調整オッズ比、1.54;95%CI、1.02-2.32;p=0.042)
- 甲状腺機能亢進症(調整オッズ比、1.41;95%CI、1.07-1.85;p=0.015)
ともに高く(Int J Environ Res Public Health. 2020 Jan 29;17(3):834.)、
- 耳管または中耳粘膜浮腫による伝導性聴覚障害
- 蝸牛コルチ器内外の障害、聴覚中枢障害による感音難聴
が原因と考えられます。(Clin Neurophysiol. 2008 Apr; 119(4):786-90.)
例え治療して甲状腺機能が正常化しても、突発性難聴を発症するリスクは有意に低下しないとされます。(Int J Environ Res Public Health. 2020 Jan 29;17(3):834.)
また、
- 甲状腺機能障害の内、特に甲状腺機能低下症が突発性難聴に関連するとされます(Otolaryngol Head Neck Surg. 2006 Dec; 135(6):995-6.)。
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病では高音性難聴を来します(Endocrine. 2012 Feb;41(1):116-21.)。
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病の凝固能亢進による循環障害(バセドウ病/甲状腺機能亢進症で血栓できやすい?)が突発性難聴を発症する原因の一つと考えられます(Clin Appl Thromb Hemost. 2008 Jul; 14(3):356-9.)。
逆に、突発性難聴患者が甲状腺機能障害を持っている頻度は、健常人の約2倍とされます(Clinics (Sao Paulo). 2010; 65(11):1149-553.)
突発性難聴治療後にバセドウ病が発症(高用量ステロイドの急激な減量が原因?)
突発性難聴でステロイド治療後にバセドウ病を発症する事があります。ステロイドパルスも含め、高用量のステロイドを投与した後、亜急性甲状腺炎・甲状腺眼症(バセドウ病眼症)などに比べてかなり早いペースでステロイド減量していきます(突発性難聴自体はそれで良いのでしょうが)。
ステロイドで免疫を強力に抑えた後、いきなり解除させるので、急激な免疫系の変動が起こり、潜在的な自己免疫が呼び起される危険があります。(バネを目いっぱい抑えて放すと、跳ね上がるように)
よって、元々バセドウ病の遺伝的素因がある人なら、バセドウ病を顕在化させる可能性があります。(第55回 日本甲状腺学会 P2-06-08 ステロイド治療後バセドウ病へ移行した巨大甲状腺腫を呈する橋本病の一例)
急ではなく、自分でも気付かないうちに、ゆっくりと難聴の進行する場合があります。これは加齢による内耳の衰えで、65歳以上の約40%に見られる老人性難聴(加齢性難聴)です。とくに、携帯などの電子音が聞き取りにくくなります
老人性難聴(加齢性難聴)と思っていても、
の事もあるので注意を要します。
性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン) の変化は老人性難聴(加齢性難聴)に影響します(Hear Res. 2021 Mar 15;402:108093.)。老人性難聴(加齢性難聴)に対する甲状腺ホルモンの関与は、現時点で不明です。
老人性難聴(加齢性難聴)によって、他者とのコミュニケーションが減ると、
- 社会的孤立を引き起こす
- 認知症が進行する
- うつ病を発症する
可能性があります。
老人性難聴(加齢性難聴)は治せませんが、補聴器による聴覚リハビリテーションで聞こえをやや改善できます。
老人性難聴(加齢性難聴)の予防には、若い時から大音量の音を避ける(例えばイヤホンで大音量の音楽を長時間効かない)ことが重要です。
耳硬化症(otosclerosis)とは、両側のアブミ骨底板と内耳骨包に進行性の骨異形成が生じ、癒合・硬化して進行性伝音難聴と耳鳴を来す疾患です。若年発症(思春期頃)で女性に多く、妊娠・出産を契機に進行します。[JAAPA. 2017 Feb;30(2):17-22.]
耳硬化症患者の抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)価は健常人と変わりません、[Acta Otolaryngol. 1998 Jun;118(3):375-80.]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,東大阪市も近く。







