Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP)[非浸潤型の濾胞型甲状腺乳頭癌]
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP);どうでもよい(いや、あほらしい)話です
Summary
非浸潤型の濾胞型甲状腺乳頭癌はNon-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP;乳頭癌様核の特徴を有する非浸潤性濾胞性甲状腺新生物)として低リスク腫瘍に分類。NIFTPと診断されても①骨転移・遠隔転移を来した報告あり②3%にリンパ節転移。超音波エコー画像は①砂粒状石灰化を認めない②濾胞型甲状腺乳頭癌、 濾胞性腫瘍、腺腫様結節と鑑別難。細胞診で濾胞型甲状腺乳頭癌と鑑別不可。NIFTP患者の4%に甲状腺乳頭癌と同様BRAF変異。
Keywords
非浸潤,Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features,NIFTP,乳頭癌様核,非浸潤性濾胞性甲状腺新生物,低リスク腫瘍,内分泌腫瘍WHO分類,鑑別
予想通り、Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP;乳頭癌様核の特徴を有する非浸潤性濾胞性甲状腺新生物)と診断されながらも骨転移・遠隔転移・リンパ節転移を来した報告が出始めています[BMC Endocr Disord. 2021 Nov 4;21(1):221.][ Endocrine. 2024 Jul;85(1):142-145.]。
さらに、NIFTPと診断されても3%にリンパ節転移を認めたとされます(浸潤性の濾胞型乳頭癌では9%)。[Mod Pathol. 2017 Jun;30(6):810-825.]
やはり、病理医が作成した内分泌腫瘍WHO分類は実害をもたらす危険がある(既にもたらしています)。
※2023年10月に刊行された第9版甲状腺癌取扱い規約において、NIFTPは(必ずしも良性でない)低リスク腫瘍に分類されています。9回改訂され、今後も改訂され続ける「甲状腺癌取扱い規約」は、回を追うごとに細分化複雑化されています。結果、病理医による診断もばらつきが大きくなり、実臨床上の治療方針に大きな違いが生じています(実害が出ている)。
2017年WHO腫瘍分類で濾胞型甲状腺乳頭癌の非浸潤型は、Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP;乳頭癌様核の特徴を有する非浸潤性濾胞性甲状腺新生物)と命名され、低リスク腫瘍(前癌的病変・境界病変)に位置付けられました。[J Am Soc Cytopathol. 2017 Sep-Oct;6(5):211-216.]
その理由は非常に不可解で、「外科切除のみ行われた非浸潤型の濾胞型甲状腺乳頭癌109人を平均14年経過観察しても再発転移、腫瘍死がない[Endocr Pathol. 2020 Jun;31(2):143-149.]」、「外科切除のみで治癒し、術後のI-131 アイソトープ治療せずとも再発しない」からとの事です。
- 不可解⓪;そもそも外科切除して病理標本を見なけりゃ浸潤の有無は分からない。濾胞型甲状腺乳頭癌かNIFTPか術前診断できない。穿刺細胞診で分かるわけない!
- 不可解①;「外科切除のみで再発しなければ癌ではない」と言う考え自体がおかしい。外科切除せずに約14年間放置しても浸潤・転移しなけりゃ「癌ではない」と言っても良いだろうが・・。
- 不可解②;14年しか経過観察していないのに「再発しない」と言い切れるのか?通常型乳頭癌では14年後の再発は稀ではない(甲状腺乳頭癌再発)。
- 不可解③;「甲状腺切除で治癒する」は、裏を返せば、「手術しないと治らない、経過観察で済ましてはいけない」と同じ事です。
- 不可解④;そもそも前癌病変なんて存在するのか?ただ単に、局所浸潤、リンパ節転移、肺・骨に遠隔転移する前の濾胞型甲状腺乳頭癌を前癌病変と言ってるだけじゃないの?だって、「外科切除のみ」は周囲のリンパ節郭清も含まれるんでしょ?
- 不可解⑤;百歩譲ってNIFTPが存在するとして、局所浸潤、リンパ節転移、肺・骨に遠隔転移する前の濾胞型甲状腺乳頭癌と鑑別できません。臨床の現場で役に立たない分類に一体何の意味があるのか?
Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP) 超音波(エコー)画像;見かけは濾胞型甲状腺乳頭癌、 濾胞性腫瘍、腺腫様結節と鑑別できまない
Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP) 超音波(エコー)画像 (水平断)
Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP) 超音波(エコー)画像;見かけは濾胞型甲状腺乳頭癌、濾胞性腫瘍と鑑別できまない
(a)Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP) 超音波(エコー)画像;見かけは濾胞型甲状腺乳頭癌、甲状腺濾胞癌、腺腫様結節と鑑別できまない
(b)細胞診所見;濾胞型甲状腺乳頭癌と鑑別できない
(c)組織所見;被膜を有し、濾胞構造。浸潤所見は無いが、手術標本でしか分からない
(d)組織所見;濾胞型甲状腺乳頭癌と鑑別できない
[Endocr Pathol. 2019 Jun;30(2):155-162.]
Non-invasive follicular thyroid neoplasm with papillary-like nuclear features (NIFTP)の超音波(エコー)所見は、
- 被膜が存在(被膜のない場合もある)
- 充実性、等エコーが多い
- 砂粒状石灰化を認めない
などで、濾胞型甲状腺乳頭癌、濾胞性腫瘍(良性濾胞腺腫 、甲状腺濾胞癌)と鑑別できません。砂粒状石灰化のない濾胞型甲状腺乳頭癌なんて普通に存在します。NIFTPの60.1%は悪性を疑う所見が無いとされます[Endocrine. 2021 Jul;73(1):131-140.]。
細胞診は当然、濾胞型甲状腺乳頭癌で
- コロイドに乏しい腫瘍性背景
- 不完全な乳頭癌の核異型(核の増大、不整、クロマチンの異常)
- 構造異型(核間距離の不整、不規則重積性、結合性の低下、小濾胞構造)
細胞診で良悪性を診断できる場合は少なく、クラス3、鑑別困難、atypical cell clusterの診断が多い(49.7%)とされます[Endocrine. 2021 Jul;73(1):131-140.]。筆者なら、不完全な乳頭癌の核異型があれば「限りなく黒に近いグレー」とみなし、手術を勧めます。NIFTPも浸潤型の濾胞型甲状腺乳頭癌も細胞診所見は同じのため手術するしかありません。NIFTPという分類を廃止して、濾胞型甲状腺乳頭癌に統一した方が、内科系甲状腺専門医も患者さんも納得します。
大爆笑するのが、2017年第4版WHO甲状腺腫瘍分類、NIFTPの章で提案された「濾胞形成性腫瘍の診断アルゴリズム」です。「被膜形成する濾胞形成性腫瘍は乳頭構造がなく、充実増生は30%以下」が第一条件ですが、こんなもの手術標本でしか分からない、つまり手術後にしか診断できない事になります。(臨床医は手術すべき甲状腺腫瘍かどうかで迷うんです。)
結局、NIFTPなんて顕微鏡で見えるものしか見えない(見ない)病理屋さんが作り出した虚構、臨床の現場を混乱させるだけの迷惑な命名に過ぎないと思います。新型コロナウイルス問題で無能をさらけ出したWHOらしいと言えば、そこまでですがね。
更に混乱を招くのが、 NIFTPは「乳頭癌類似の核所見を示すRAS腫瘍である」と言う説です。、RASは甲状腺濾胞癌・濾胞癌の前癌病変に多い遺伝子変異ですが、乳頭癌にも10-20%認められます(甲状腺癌の遺伝子変異)。NIFTPと診断された患者の4%に甲状腺乳頭癌のBRAF変異を認め、やはり濾胞型甲状腺乳頭癌と分けて考える意味は無いと思います。を誤診している事実が証明されています[Endocr Pathol. 2020 Jun;31(2):143-149. ]。
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