低血糖症(各論)② 機能性低血糖症,アルコール性低血糖,食原性,薬剤性,詐病性,ケトン性低血糖症,成人発症Ⅱ型シトルリン血症[長崎甲状腺クリニック 大阪]
インスリン製剤・経口血糖降下剤など糖尿病治療薬の効き過ぎによる低血糖の解説ではありません。
純粋な内分泌代謝の病気による低血糖症の解説です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。糖負荷試験・低血糖症自体の診療を行っておりません。
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院(現、大阪公立大学附属病院) 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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- 低血糖症(総論)
- 低血糖症(各論)①[インスリノーマ (インスリン産生腫瘍)]
- 低血糖症(各論)②[本ページ]
- 低血糖性昏睡
Summary
食原性低血糖症は過剰なダイエットや肉体労働なのに糖分摂取が少ない等が原因。機能性低血糖症は糖質過剰摂取によるインスリンの制御不能状態。薬剤性低血糖は不整脈の薬、レボフロキサシン(クラビット)、プレガバリンなど。インスリノーマ (インスリン産生腫瘍)、アルコール性低血糖、副腎皮質機能不全・成長ホルモン(GH)分泌不全による低血糖症の事も。異常な偏食(高脂肪高蛋白低糖質の頻回摂取)・高アンモニア血症は成人発症Ⅱ型シトルリン血症。詐病性低血糖症は意図的な糖尿病治療薬の過剰使用。ケトン性低血糖症は幼児の嘔吐と全身性けいれんの原因。
甲状線機能亢進症・甲状線機能低下症による低血糖症の事も。甲状腺濾胞癌によるIGF-2(インスリン様成長因子2)の事も。インスリン自己免疫症候群は甲状線機能亢進症/バセドウ病治療薬のメルカゾールで起きる。インスリノーマ(インスリン産生腫瘍)は膵臓内分泌腫瘍。
Keywords
機能性低血糖症,薬剤,詐病,ケトン性低血糖症,アルコール性低血糖,食原性低血糖症,高アンモニア血症,インスリン,シトルリン血症,低血糖症
- 食原性低血糖症:過剰なダイエット、肉体労働なのに糖分摂取が少ないなど
- 機能性低血糖症
- インスリン自己免疫症候群
- インスリノーマ (インスリン産生腫瘍)
- IGF-2(インスリン様成長因子2)産生膵外性腫瘍
- 甲状線機能亢進症
- 甲状線機能低下症(インスリン拮抗ホルモンの機能不全:低インスリン性低血糖)
-
副腎皮質機能不全(インスリン拮抗ホルモンの機能不全:低インスリン性低血糖)
-
成長ホルモン(GH)分泌不全(インスリン拮抗ホルモンの機能不全:低インスリン性低血糖)
- アルコール性低血糖/アルコール性ケトアシドーシス
- 低血糖をおこす薬剤
- 詐病性低血糖症
- (かなり稀)異常な偏食・異常行動は成人発症Ⅱ型シトルリン血症
- ケトン性低血糖症
過剰なダイエット、肉体労働なのに糖分摂取が少ない等が原因でおきるのは食原性低血糖症。
食原性低血糖症では主に肝臓のグリコーゲンが分解され、血中グルコース濃度が維持されます。絶食後、10数時間で肝臓のグリコーゲンは枯渇するため、
- 脂肪を分解して生じる遊離脂肪酸・グリセロール
- 骨格筋が分解されて生じたアミノ酸・乳酸・ピルビン酸
を利用して、脂質酸化や糖新生を行いエネルギーを確保します。結果、
- 遊離脂肪酸から肝臓でケトン体が生成されてケトーシスに、最悪ケトアシドーシスになる
- 乳酸は肝臓に運ばれてグリコーゲンに再合成。(筋肉は分解されて筋力低下、将来、サルコペニアに)
- アミノ酸は肝臓での糖新生に利用される(筋肉は分解されて筋力低下、将来、サルコペニアに)
中枢神経系は、グルコースを唯一のエネルギー源としていますが、絶食が長期になると一部の脳ではケトン体が利用されます(非常時のセイフティーモードですが、ギリギリの綱渡りです)。
カフェイン・アルコール・タバコ等も、即時に血糖を上げる作用があるため、機能性低血糖症の危険因子となります。[J Diabetes Investig. 2021 Apr;12(4):651-657.]
機能性低血糖症の治療は、
- エネルギー補給におけるタンパク質の割合いを増やす
- 腸からの糖吸収を緩やかにするため、食物繊維を増やす
- 血糖値が落ち込みやすくなる前の、食後3時間を目安に糖質を取る
- 補助療法としてビタミンC・カルシウム・マグネシウムを使う場合がある
[Diabetes Metab. 2000 Nov;26(5):337-51.][Endocrinol Metab Clin North Am. 1989 Mar;18(1):185-201.]
甲状腺でも低血糖 を御覧ください
アルコール性低血糖は、食事を十分摂らずに飲酒すると起こります。アルコール自体は高カロリーなので、どんどん内臓脂肪が増えます(ビール腹)。一方、アルコールは肝臓で分解されるため、その代償で肝臓からのブドウ糖放出が抑制されて、低血糖(アルコール性低血糖)になります。
過度の飲酒を長期間続け、食事をほとんど摂らないと、最後はアルコール性ケトアシドーシスに至ります。
糖の代わりに体脂肪が燃焼してケトン体が増え、血液が酸性に傾くアルコール性ケトアシドーシスに至ります。ビタミンB1欠乏による乳酸アシドーシスも合併し、急激なショック・意識障害を起こして死亡するケースも多々あります。(詳細はアルコール性ケトアシドーシス)
糖尿病の薬を除き、以下の薬で薬剤性低血糖を引き起こす事があります。特に高齢者・腎機能低下した人で起こりやすい。
- 不整脈の薬:
ジソピラミド(リスモダン®,ノルペース®)
シベンゾリン(シベノール®):クラスIa群の抗不整脈薬で、膵β細胞のATP感受性K+チャンネルを閉鎖し、インスリン分泌を促進
ソタロール:クラスⅢ群の抗不整脈薬で、低血糖症状をマスクするおそれがあります
- ニューキノロン系抗生剤:レボフロキサシン(クラビット®)①膵β細胞のATP感受性K+チャンネルを閉鎖し、インスリン分泌を促進、②末梢組織でのインスリン感受性を亢進
- 降圧薬のARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬):インスリン抵抗性改善薬の塩酸ピオグリタゾン(アクトス®)と同様に「チアゾリジン環」を構造式の中に持っています
- プレガバリン(商品名:リリカカプセル)
- 切迫流早産治療薬 リトドリン(ウテメリン®):β2刺激作用
- パーキンソン病治療薬セレギリン塩酸塩(エフピー®):脳内ドーパミン代謝を抑制しますが、低血糖がおこる原因は不明。筆者は、脳下垂体からのTSH(甲状腺刺激ホルモン)分泌を抑制するためと考えています。
詐病性低血糖症は、医療従事者や糖尿病患者の家族に多い。ダイエット目的(実は下がった血糖は脂肪になって体に付くので逆効果ですが・・・)や糖尿病に対する過度の恐怖から、インスリン注射・経口糖尿病治療薬を自己判断で使用し、効き過ぎて低血糖こなる病態です。
常染色体劣性遺伝による成人発症Ⅱ型シトルリン血症とは、アンモニアを処理する肝酵素(アルギノコハク酸合成酵素)の先天的異常です(両親はいとこ結婚など近親婚が多い)。染色体7q21.3に座位するSLC25A13 遺伝子異常が原因[Nat Genet. 1999 Jun;22(2):159-63.]。アンモニア処理回路が停滞し、高シトルリン血症・高アルギニン血症(アミノ酸分析にて診断)をおこします。
SLC25A13変異のヘテロ接合体は約50~80人に1人と非常に多く、ホモ接合体の頻度は17000人に1人と、それなりに多い。しかし、食癖を変化させて発症を回避するよう適応している患者も多いため、実際の発症頻度は10~20万人に1人。[J Hum Genet. 2002;47(7):333-41.]
青年期までの成人発症Ⅱ型シトルリン血症は、
- 食癖異常;高脂肪高蛋白低糖質の頻回摂取、特にアスパラギン酸やアルギニンが多い豆類・乳製品・卵を好み、細胞内NADHが上昇する米飯や甘いもの・アルコールを嫌う
※糖質の過剰摂取で生命に危険が及びます。
- 成長障害(体重増加不良)
- 検査所見は、軽度の肝機能異常
成人期には、肝不全から来る高アンモニア血症(けいれん、精神症状、異常行動など)、肝臓での糖新生低下による低血糖症をおこします。高脂血症、脂肪肝、肝癌、膵炎も起こります。
ヨード(ヨウ素)有機化障害(遺伝性甲状腺機能低下症)に成人発症Ⅱ型シトルリン血症を合併した報告があります[Nihon Rinsho. 1974 Jul 10;32(7):2439-42.]。
血清アンモニア濃度は朝や絶食では低くなり、夕方から夜間に高くなる
成人発症Ⅱ型シトルリン血症の治療は、肝移植(家系内の健常人がドナーとなることが多い)。正常なアルギノコハク酸合成酵素を持った肝臓を移植するのがベストな選択。
[Appl Clin Genet. 2018 Dec 12;11:163-170.][Mol Genet Metab. 2004 Apr;81 Suppl 1:S20-6.]
ケトン性低血糖症は、1歳半-5歳くらいの幼児が嘔吐と全身性けいれんを来す原因の一つ(2~10 歳児に好発)。幼児は蓄積エネルギーが少ないため、絶食で容易に低血糖症、および異化亢進によるケトン血症[アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)]を来します。
ケトン性低血糖症・アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)の症状は、
- 朝覚醒せず、うとうとした状態
- ぐったりして顔面蒼白
- 強い腹痛
- 頻回の嘔吐(リンゴの腐ったような酸臭アセトン臭がある)
- 発熱は無い
- 全身性けいれん
を呈しますが、腹部は平坦・軟で所見に乏しい。股動脈音を聴取するなど脱水所見を認めます。
ケトン性低血糖症・アセトン血性嘔吐症(周期性嘔吐症)の検査所見は
- 低血糖
- 異化亢進(蛋白・脂肪分解)によるケトン尿、アセトン血症・ケトン血症
以上の病状を繰り返すのが特徴
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区も近く。





