甲状腺濾胞癌(微小浸潤型濾胞癌,広汎浸潤型濾胞癌)超音波エコー検査・診断,Tumor in Tumor,辺縁粗雑,娘結節[長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。
その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用) 橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等において学術目的で使用可能なもの(Creative Commons License)、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
Summary
甲状腺濾胞癌は超音波エコー検査で良性濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫との鑑別が極めて困難。良性濾胞腺腫と比べ内部低エコー・不均質・石灰化・Tumor in Tumor・辺縁粗雑・不規則なハロー(境界部低エコー帯の一部途絶、 肥厚)内部血流多い・甲状腺外へ不自然に突出・被膜内部に低エコー領域・血清サイログロブリン値1000ng/mL以上・被膜外の衛星結節(娘結節)が存在。卵殻状被膜石灰化の事も。エラストグラフィーJTEC パターン1(良性濾胞腺腫・微小浸潤型濾胞癌)、パターン2と4(広範浸潤型濾胞癌)。腫瘍のサイズ増大が最大の決め手。嚢胞性微小浸潤型濾胞癌は診断難
key Words
甲状腺濾胞癌,超音波,エコー,検査,Tumor in Tumor,衛星結節,辺縁粗雑,娘結節,サイズ増大
甲状腺濾胞癌は、良性結節[良性濾胞腺腫、腺腫様甲状腺腫(腺腫様結節)]との鑑別が極めて困難です。甲状腺濾胞癌を見落とさないように、最大限の注意を払わねばなりません。
甲状腺濾胞癌組織は濾胞状で、良性濾胞腺腫と類似しているため、甲状腺濾胞癌の診断には、
- 腫瘍細胞の被膜浸潤(エコーで分る事もありますが、手術標本でしか分らない方が多いです)
- 脈管侵襲(手術標本でしか分りません)
- 甲状腺外への転移 [長崎甲状腺クリニック(大阪)では甲状腺濾胞癌が疑われた場合、甲状腺腫瘍そのものでは確定できないため、遠隔転移検索(肺・上半身骨の単純CT)をお勧めしています]
のいずれかを証明する必要があります。
超音波(エコー)上、甲状腺濾胞癌は良性濾胞腺腫と類似しますが、
- 内部が低エコー・不均質、いわゆる「Tumor in Tumor(tubercle-in-nodule signs)」(腫瘍の中に腫瘍がある)のパターンを取ることがある
石灰化が顕著(微細、粗大、辺縁石灰化)
※これらの所見は腺腫様甲状腺腫(腺腫様結節)でも認められる - 境界性状が良性濾胞腺腫よりも粗雑
- ハロー(周辺部低エコー)を全周性に認めれば、良性濾胞腺腫の可能性高いが、不規則なハロー(境界部低エコー)の一部途絶、 肥厚等)があれば甲状腺濾胞癌を強く疑う
※腺腫様甲状腺腫(腺腫様結節)でも認められる
- 内部血流が非常に多い
- 血清サイログロブリン値が1,000 ng/mL 以上(500 ng/mL以上あれば、十分疑い濃厚ですが)
- エラストグラフィーで腫瘍周囲が青くなる
- 被膜外の衛星結節(娘結節)の証明
で疑いが強くなります。[Asian J Surg. 2020 Jan;43(1):339-346.][Cancer Manag Res. 2021 May 17;13:3991-4002.][J Ultrasound Med. 2014 Feb;33(2):221-7.]
しかし、上記のエラストグラフィー以外の特徴は、腺腫様甲状腺腫でも説明が付くため、甲状腺濾胞癌の決め手にはならないのです。
結局、甲状腺超音波(エコー)検査を定期的に行い、腫瘍の増大速度が速いのを確認するのが最大の決め手です。長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺超音波(エコー)検査による甲状腺腫瘍のサイズ計測と、腫瘍マーカーの血清サイログロブリン値測定を定期的に行います。(サイズ増大で甲状腺濾胞癌と診断)
ケース①
ケース②
ケース③
tumor in tumor あるいはnodule-in-nodule の結節内結節は、TERT-p変異を有する低分化成分の可能性もあります(甲状腺低分化がん)[Cancers (Basel). 2022 Jul 22;14(15):3577.]。
卵殻状の被膜石灰化を伴う結節は、微小浸潤型濾胞癌の事があります。広汎浸潤型濾胞癌なら、卵殻状被膜石灰化の外へ癌細胞が広がる(低エコー領域が周囲へ拡大していく)のを、超音波検査(エコー)にて確認可能ですが、微小浸潤型濾胞癌の場合は不可能です。しかも、被膜が石灰化して針が通らないため、穿刺細胞診も難しい。
(前頭骨を含めた多発骨転移を認めた微少浸潤型甲状腺濾胞癌の1例 内分泌甲状腺外会誌 30(3):221-225,2013)
被膜が石灰化する形態は、甲状腺濾胞癌以外にも腺腫様結節、良性濾胞腺腫、甲状腺乳頭癌、いずれでもあり得ます。(何でもあり石灰化被膜・卵殻状石灰化の中にある腫瘍)
ケース① 1年後にサイズ増大
ケース② 1.5年後にサイズ増大
ケース③ 3年後にサイズ増大
甲状腺腫瘍の硬さを評価するエラストグラフィーによって診断できることもあります。左の緑に見える腫瘍は良性濾胞腺腫、右の青い腫瘍は甲状腺濾胞癌です(写真:MEDIX Vol.53 p4-7)。
このように典型的パターンなら簡単に鑑別可能だが、筆者の経験では、微小浸潤型濾胞癌は良性濾胞腺腫と同じく緑に見える(硬くない)ケースが多いため安心できません。
エラストグラフィーの詳細は、 エラストグラフィー(甲状腺癌を瞬時に診断) を御覧ください。
JTEC エラストグラフィーパタ-ン
- パターン1;腺腫様甲状腺腫・良性濾胞腺腫・微小浸潤型濾胞癌・悪性リンパ腫
- パターン2;広範浸潤型濾胞癌
- パターン3;乳頭癌
- パターン4;乳頭癌・広範浸潤型濾胞癌・低分化癌・未分化癌・転移性甲状腺癌(他臓器からの転移)
ただし、人間が手でプローブを腫瘍に押し当てて判定するため、力の加減に個人差が生じ、どうしても検者の主観が入ってしまいます(絶対的なものではありません)。
一目見て甲状腺癌ですが、濾胞性腫瘍や濾胞癌には見えないケースもあります。かといって甲状腺乳頭癌でもなく、あえて言うなら他臓器原発の転移性甲状腺癌が最も疑われる見え方です。
ケース① 微小浸潤型濾胞癌
穿刺細胞診しても濾胞細胞のみ、術中の迅速病理標本でも濾胞性腫瘍、摘出標本で初めて被膜浸潤が見つかり、微小浸潤型濾胞癌の確定診断が付きました。
ケース② 広汎浸潤型濾胞癌
ケース③ 広汎浸潤型濾胞癌
ケース④ 広汎浸潤型濾胞癌
のう胞性微小浸潤型濾胞癌(嚢胞性微小浸潤型濾胞癌)は、診断が非常に難しい。と言うか、遠隔転移しない限り、診断の仕様がありません。見た目はのう胞型良性濾胞腺腫(のう胞腺腫)、穿刺細胞診でも「正常または良性」「意義不明な濾胞性病変」にしかなりません(J Med Ultrason (2001). 2014 Apr;41(2):233-7.)。
血清サイログロブリン高値は参考になりますが、のう胞内出血(嚢胞内出血)でも高値になり、抗サイログロブリン抗体陽性なら偽低値になるため判定が難しい。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
も御覧ください
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区,天王寺区も近く。














































