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先天性・遺伝性甲状腺機能低下症②DEHAL1遺伝子変異、TSH受容体不活型変異、甲状腺ホルモントランスポーター(MCT8)異常[長崎甲状腺クリニック]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 年次学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等において学術目的で使用可能なもの(Creative Commons License)、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

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甲状腺ホルモントランスポーター(MCT8)異常[アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群](日本甲状腺学会雑誌より改変)

甲状腺ホルモントランスポーター(MCT8)異常[アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群]

先天性甲状腺機能低下症(Congenital hypothyroidism:CH)は、新生児2000~3000人に1人の頻度で見つかります。先天性甲状腺機能低下症(CH)の治療が遅れると、不可逆的な成長障害や知能障害をきたします。1979年に開始された新生児マススクリーニング(NBS)によって早期発見・治療が可能となり、ほとんどのケースで精神発達遅滞を回避できるようになりました。

遺伝性甲状腺機能低下症の種類

Summary

ヨード(ヨウ素)再利用に関与するDEHAL1遺伝子変異によって幼少期以降に著明な甲状腺腫を伴う甲状腺機能低下症が発症。TSH受容体不活型変異のホモ接合型は重症につき新生児マススクリーニング(NBS)で見つかる。非古典型TSH不応症は奇異性にI-123 摂取率高値。アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群(AHDS)はX連鎖性劣性遺伝のSLC16A2遺伝子変異により男性のみ発症。脳細胞内に甲状腺ホルモンを取り込む甲状腺ホルモントランスポーター(MCT8)異常。軽度甲状腺機能低下症と重度精神発達遅滞・脳神経障害。FT3 増加・FT4 減少・正常~軽度TSH増加。

Keywords

ヨウ素,再利用,DEHAL1遺伝子変異,甲状腺機能低下症,TSH受容体不活型変異,非古典型TSH不応症,アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群,AHDS,甲状腺ホルモントランスポーター,MCT8

DEHAL1(Iodotyrosine dehalogenase 1)遺伝子変異

DEHAL1(Iodotyrosine dehalogenase 1)は、甲状腺ホルモン合成に利用されなかった過剰なMIT(ヨードが1個のモノヨードチロシン)、DIT(ヨードが2個のジヨードチロシン)を脱ヨード化する細胞膜酵素です。遊離したヨード(ヨウ素)は甲状腺ホルモン合成に再利用されます。DEHAL1 の発現調節機構は未だ不明な点が多い。(FASEB J. 2004 Oct;18(13):1574-6.)

DEHAL1遺伝子変異によって先天性甲状腺機能低下症を発症します。ただし、生下時の甲状腺機能は正常で、新生児マススクリーニング(NBS)をすり抜け、幼少期以降に著明な甲状腺腫を伴う甲状腺機能低下症で見つかります(N Engl J Med. 2008 Apr24;358(17):1811-8.)

DEHAL1(Iodotyrosine dehalogenase 1)遺伝子変異

TSH受容体不活型変異

TSH受容体不活型変異は、TSH受容体(TSHR)遺伝子の異常で、遺伝性甲状腺機能低下症の1%を占めます。甲状腺ホルモン合成障害と同じく、両方の染色体に異常があるホモ接合型は重症甲状腺機能低下症として、新生児マススクリーニング(NBS)で見つかります。片方の染色体に異常があるヘテロ接合型は軽症甲状腺機能低下症なため、新生児マススクリーニング(NBS)で見つからず、幼児~成人発症になります(J Clin Endocrinol Metab. 2009 Apr;94(4):1317-23.)。

当然、橋本病の抗体陰性、エコー上、破壊性変化に乏しく、萎縮性甲状腺炎と同じに見えますが、TRAb(TSHレセプター抗体/TSBAb(TSHレセプター抗体[阻害型]、甲状腺刺激阻害抗体)は陰性なので鑑別できます。

R450H(p.Arg450His)は、日本人のTSH受容体不活型変異で高頻度に認められる遺伝子変異です(Thyroid. 2001 Jun;11(6):551-9.)。(第54回 日本甲状腺学会 O-3-1 新生児マススクリーニングで異常の認められなかった非自己免疫性甲状腺機能低下症の一兄弟例)

TSH受容体不活性型変異 超音波(エコー)画像

TSH受容体不活性型変異 超音波(エコー)画像;甲状腺は萎縮しており、左葉には単純性のう胞(単純性嚢胞)がある。それ以外の実質は、等エコー、均一で破壊性変化は皆無です。

甲状腺専門医以外は知らなくて良い非古典型TSH 不応症

あまりにもマニアックで甲状腺専門医以外は知らなくて良い非古典型TSH不応症が存在します。奇異性にI-123 摂取率高値を認める両アリル性TSHR(TSH受容体)変異です。世界で10例も報告されていません。昭和大学・慶應義塾大学が、その1例を報告しています。

TSH受容体変異患者の大半は、TSHに反応が悪いため、I-123 摂取率が低値から正常値を示します。極まれに、I-123 摂取率高値のTSH受容体変異患者が存在し、非古典型TSH 不応症と呼ばれます。

昭和大学・慶應義塾大学の報告例は、新生児マススクリーニング(NBS)で先天性甲状腺機能低下症(CH)と診断され、甲状腺ホルモン剤(LT4)補充療法中。甲状腺ホルモン剤休薬時のTSH 68.49 μIU/mL、FT4 1.1 ng/dL、甲状腺サイズ(超音波)-1.4 SD、I-123 摂取率(24 時間値)60.16 %(基準値8-40)、パークロレイト放出率57.09 %。TSH受容体の両アリルに既報と異なる変異をそれぞれヘテロ接合性に同定(p.Arg109Gln/Arg450His)。

TSH受容体に変異があるのにI-123 摂取率が高値とは不思議な病態です。非古典型TSH 不応症ではGs 活性化能とGq 活性化能が不均衡である変異(Arg450His またはLeu653Val)を少なくとも1 アリル有するのが条件です。(第57回 日本甲状腺学会 O5-4 奇異性123I 摂取率高値を認めた両アリル性TSHR 変異の一男児例:世界で5 例目の非古典型TSH 不応症)(Clin Pediatr Endocrinol. 2018;27(3):123-130.)

筆者の推論ですが、「TSH受容体の片アリル1変異でTSH不応になり、もう片アリル2つ目の変異でGs 活性化能とGq 活性化能が不均衡になって、I-123 を取り込むが甲状腺ホルモンは合成できない。」と考えれば辻褄が合います。

(甲状腺専門医以外は知らなくて良い)TSH受容体(TSHR)遺伝子にホモ接合性変異と、DUOX2遺伝子にヘテロ接合性変異を認める軽症(潜在性)甲状腺機能低下症

かなり例外的ですが、TSH受容体(TSHR)遺伝子にホモ接合性変異、加えてDUOX2遺伝子にヘテロ接合性変異を認める軽症(潜在性)甲状腺機能低下症の報告があります。TSH受容体(TSHR)遺伝子にホモ接合性変異があるだけでも、重症甲状腺機能低下症になって新生児マススクリーニング(NBS)で見つかるはずです。しかし、実際は新生児マススクリーニング(NBS)に掛からず、24歳時に潜在性甲状腺機能低下症が見つかるまで成長発達は正常だった。変異遺伝子は、TSHR R450H(ホモ接合型)[最も高頻度な変異型]、DUOX2 I1080T(ヘテロ接合型)[ありふれた変異][Ann Lab Med. 2016 Mar;36(2):145-53.]と同定された。 

「遺伝子型と表現型は必ずしも一致しない」という結論です。(第61回 日本甲状腺学会 O3-4 高TSH血症として経過観察した、TSH受容体遺伝子にホモ接合性、 DUOX2遺伝子にヘテロ接合性変異を有する男性)

Iodothyrosine deiodinase遺伝子異常

Iodothyrosine deiodinase遺伝子異常(SBP2遺伝子異常症)も甲状腺腫性の先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)を発症します。

新しく見つかったアラン・ハーンドン・ダッドリー (Allan-Herndon-Dudley)症候群

アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群(AHDS:Allan-Herndon-Dudley syndrome)は、X連鎖性劣性遺伝のSLC16A2遺伝子変異によって、男性のみ発症。

脳細胞内に甲状腺ホルモンを取り込む甲状腺ホルモントランスポーター[Monocarboxylate transporter 8(MCT8)]に異常を来します。

胎内発育・生下時に問題はなく、新生児マススクリーニングをすり抜けます。

アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群(AHDS)は、一般的な先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)より

  1. 甲状腺機能低下症・成長障害が軽度(成長軟骨などのMCT10は無事のため)
  2. 乳児期より重度の精神発達遅滞・脳神経障害。てんかんの合併多い(脳はMCT8だけなので)
    いわゆるフロッピー・インファント(下肢優位筋緊張低下)

が特徴。

アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群(AHDS)の血液検査も特徴的で、

  1. FT3 増加
  2. FT4 減少
  3. 正常ないし軽度のTSH増加
  4. rT3(リバースT3)減少[保険適応外]

[Am J Hum Genet.2004 Jan;74(1):168-175.][Lancet. 2004 Oct 16-22;364(9443):1435-1437.][GeneReviews® [Internet]1993–2024.]

アラン・ハーンドン・ダッドリー (Allan-Herndon-Dudley)症候群
アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群(AHDS)12カ月男児のMRI T2強調画像

アラン・ハーンドン・ダッドリー症候群(AHDS)12カ月男児のMRI T2強調画像;広範な白質の異常[GeneReviews® [Internet]. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993–2024.]

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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

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長崎甲状腺クリニック(大阪)


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