医原性クッシング症候群;アレルギー性鼻炎治療薬セレスタミン・整形外科の関節注射でクッシング症候群・中止で副腎不全[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を長期間投与すれば、人工的なクッシング症候群を作り出す(医原性クッシング症候群)。膠原病など副腎皮質ホルモン剤を止めれば命に係わる場合は中止できない。長期投与の必要が無いのに、あるいは医者がステロイドを含む薬なのを知らずに漫然と投与する典型例が花粉症・アレルギー性鼻炎治療薬セレスタミン(ベタメタゾン配合)。整形外科の関節注射やステロイド軟膏剤の場合もある。急激な中止と感染症やストレスなどによる副腎皮質ホルモンの需要増大で急性副腎不全/副腎クリーゼに至る。医原性クッシング症候群の眼球突出は甲状腺眼症:バセドウ病眼症の鑑別。
Keywords
副腎皮質ホルモン,ステロイド,クッシング症候群,医原性クッシング症候群,セレスタミン,中止,急性副腎不全,副腎クリーゼ,長期投与,ベタメタゾン
副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を数年-数カ月、長期間投与すれば、人工的なクッシング症候群を作り出す事になります(医原性クッシング症候群:iatrogenic Cushing's syndrome)。もちろん、膠原病やネフローゼ症候群、気管支喘息など、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)を止めれば命に係わる・悪化する場合、医原性クッシング症候群と分かっていても中止できません[甲状腺で言えば、橋本病急性増悪やリーデル甲状腺炎(Riedel甲状腺炎)])。
しかし、中には、本来、長期投与の必要が無いのに、あるいは医者がステロイドを含む薬である事を知らずに、漫然と投与することで、不必要な医原性クッシング症候群が作られます。その典型例が、花粉症やアレルギー性鼻炎の治療薬セレスタミン®です。
セレスタミン®は、抗ヒスタミン剤(d-クロルフェニラミン)と副腎皮質ホルモン(ステロイド;ベタメタゾン)の合剤です。たかがアレルギー性鼻炎の治療に、まさか強力な副腎皮質ホルモン(ステロイド)剤が含まれているとは、処方する医師すら知らない事があります。
セレスタミン®の後発品(ジェネリック)は、
- セレスターナ配合錠(小林化工)
- エンペラシン配合錠(沢井製薬)
- サクコルチン配合錠(日医工)
- ヒスタブロック配合錠(共和薬品)
- プラデスミン配合錠(日医工岐阜工場)
- ベタセレミン配合錠(東和薬品)
花粉症の時期に限定して短期間あるいは頓服的に使用するなら問題ありません。しかし、何年も毎日服用した場合、トンデモナイことになります。
セレスタミン®1錠中に、
ベタメタゾン0.25 mg=コルチゾール 6.25-7.5 mg 相当[コルチゾール20mgは、健康人が1日に必要な副腎皮質ホルモン量の上限値]=プレドニゾロン1.56-1.88 mg 相当
含まれます。添付文書で「成人には1回1〜2錠を1日1〜4回経口投与する。」となっており、過剰な副腎皮質ホルモンが体内に入り込み、様々な有害症状(医原性クッシング症候群)を引き起こします。同時に、自身の副腎は廃用萎縮し、もはや自力で副腎皮質ホルモンを産生できなくなります。[Endocrinol Metab Clin North Am. 2005 Jun;34(2):371-84,]
血液検査では、副腎から分泌されるべきコルチゾールが低値になります。
急激なセレスタミン®中止と、感染症・ストレスなどによる副腎皮質ホルモンの需要増大で急性副腎不全/副腎クリーゼを来します。
整形外科によっては、関節注射でステロイド剤を混ぜるで施設があります。それこそ、1週間、2週間に一度でも、数年続ければ医原性クッシング症候群を来し、関節注射の中止で急性副腎不全/副腎クリーゼを引きおこします。大抵、関節注射を受けるのは高齢者で、注射液にステロイド剤が入っていることなど気にも留めません。
ステロイド軟膏・クリーム剤の長期使用による医原性クッシング症候群が報告されています。なぜか、原疾患は乾癬と甲状腺が多いです。[Eur J Rheumatol. 2022 Apr;9(2):106-107.][Indian Dermatol Online J. 2021 Mar 2;12(2):237-243.]
ステロイド軟膏のプロピオン酸クロベタゾール0.05% 局所投与による医原性クッシング症候群。上肢には白い鱗屑を有する紅斑性丘疹(乾癬)を認めます。[J Med Case Rep. 2024 Dec 19;18(1):602.]
メチルプレドニゾン注射を毎週行い、眼球突出と眼球運動障害、眼圧上昇を来した医原性クッシング症候群の報告があります。眼窩脂肪が増加しているため、甲状腺眼症:バセドウ病眼症 との鑑別を要しました。[Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2015 Oct;253(10):1809-11.]
16 mmを超える眼球突出は、活動性クッシング症候群の45%、医原性クッシング症候群の21%、治療されたクッシング症候群の20%、正常対照者の2%に認められました。クッシング症候群の眼球突出は、甲状腺眼症:バセドウ病眼症 と異なり重大な症状を示さず、コルチゾール濃度が正常になると改善します。[Clin Endocrinol (Oxf). 1996 Aug;45(2):167-70.]
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,浪速区も近く。