ヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)(リラグルチド,チルゼパチド,セマグルチド)と甲状腺,甲状腺癌,甲状腺髄様癌,甲状腺炎[長崎甲状腺クリニック]
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甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌病態内科(第2内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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ヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)の有害事象[Diabetes Metab J. 2025 Jul;49(4):525-541.]
1型、2型糖尿病を問わず甲状腺疾患の合併が多いとされます[BMC Med. 2016 Sep 30; 14(1):150.][Clin Endocrinol (Oxf). 2011 Jul;75(1):1-9.]。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックに特化するため、糖尿病内科を廃止しました。
長崎甲状腺クリニック(大阪)ではヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)を取り扱っておりません。
ヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)による甲状腺障害の相談もお断りしています。
ヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)(リラグルチド,チルゼパチド,セマグルチド)と甲状腺,甲状腺癌,甲状腺髄様癌,甲状腺炎 (本ページ)
Summary
ヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)注射液で①甲状腺癌(甲状腺髄様癌)のリスク(エキセナチド・リラグルチド・チルゼパチド・セマグルチドなどで報告)②薬物誘発性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎)③甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の吸収率が上昇し甲状腺中毒症④消化器症状[吐き気・嘔吐・下痢]のため甲状腺機能が正常化していない甲状腺亢進症/バセドウ病患者では使用せぬ方が良い⑤腸閉塞(イレウス)甲状腺機能低下症の便秘には要注意⑥体重減量分の20~30%は筋肉量の減少につき甲状腺亢進症/バセドウ病で筋肉減少している人は要注意。
Keywords
GLP-1受容体作動薬,甲状腺癌,甲状腺髄様癌,リラグルチド,チルゼパチド,セマグルチド,甲状腺,甲状腺亢進症,バセドウ病,甲状腺機能低下症
Points
ヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)による甲状腺有害事象
- 甲状腺癌(甲状腺髄様癌)のリスク上昇(エキセナチド・リラグルチド・チルゼパチド・セマグルチドなどで報告)[Gastroenterology. 2011 Jul;141(1):150-6.][J Clin Pharm Ther. 2021 Feb;46(1):99-105.][Pharmacol Rep. 2026 May 28.]
- 薬物誘発性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎)のリスク上昇[Clin Obes. 2026 Jun;16(3):e70084.]
- 甲状腺機能低下症患者において、甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン、チラーヂンS)の吸収率が上昇し甲状腺中毒症に[Cureus. 2026 Apr 8;18(4):e106680.]
- 消化器症状[吐き気・嘔吐・下痢]のため甲状腺機能が正常化していない甲状腺亢進症/バセドウ病患者では使用しない方が良い
- 腸閉塞(イレウス)を来す危険があるため、甲状腺機能低下症の便秘には要注意
- 体重減量分の20~30%は筋肉量の減少につき、甲状腺亢進症/バセドウ病で既に筋肉減少している人は要注意
ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、インクレチンとよばれる消化管ホルモンで、食物摂取に応じて小腸下部から分泌されます。GLP-1が膵臓を刺激、
- インスリン分泌を促進
- 血糖値が高い時には「血糖値の上昇を促すグルカゴンの作用」を弱める
- 胃の中の食物排出を遅らせ、急激な食後血糖値の上昇を抑え、満腹感を持続させる
糖尿病治療薬として使われるヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)注射液は作用時間により
- 長時間型;膵臓のインスリン・グルカゴン分泌を改善。空腹時血糖の低下、体重減少。
- 短時間型;リキスミア®(リキシセナチド)は胃に作用し、胃内容物排出遅延、グルカゴン分泌抑制して糖の吸収を抑制
があります。
ヒトGLP-1アナログ(GLP-1受容体作動薬)注射液はエキセナチド(商品名:バイエッタ、ビデュリオン)、リラグルチド(商品名:ビクトーザ)、チルゼパチド(商品名:マンジャロ)、セマグルチド(商品名:オゼンピック)など
チルゼパチド(商品名:マンジャロ)は、GLP-1受容体作動作用だけでなく、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体作動作用も有します。
GLP-1受容体作動薬はSGLT2阻害剤と同様に、糖尿病性腎症の進行を抑えるため、透析導入を減らす事が期待されています。また、気管支喘息の増悪を抑える効果が報告されています(Am J Respir Crit Care Med. 2020 Oct 14.)
GLP-1受容体作動薬は甲状腺髄様癌リスクを高めます(もちろん、甲状腺髄様癌の既往がある患者には禁忌)。動物試験(ラットやマウス)では甲状腺C細胞腫瘍(甲状腺髄様癌)が認められるも、ヒトC細胞にGLP-1受容体はほとんどないため、影響は少ないと考えられていました。しかし、現実には人でも甲状腺髄様癌の発生率が高くなるとの論文が、海外で複数出ています。具体的には、
- エキセナチドで甲状腺癌(甲状腺髄様癌を含むと考えられる)のリスクがオッズ比4.73に増大[Gastroenterology. 2011 Jul;141(1):150-6.]
- リラグルチドで甲状腺癌、甲状腺髄様癌の発生率が最も強く、次いでエキセナチド[J Clin Pharm Ther. 2021 Feb;46(1):99-105.]
- チルゼパチドを服用中に甲状腺髄様癌・甲状腺乳頭癌の混合癌が新たに発見された報告 [Cureus. 2026 Apr 27;18(4):e107836.]
- 肥満成人に対するチルゼパチドの短期治療(12週間)で、血清カルシトニン値(甲状腺髄様癌の腫瘍マーカーでもある)がわずかながら統計的に有意な増加を示した[Endocrine. 2026 May 4;91(1):180.]
- セマグルチドはチルゼパチドよりも甲状腺がん関連有害事象の報告確率が低い[Pharmacol Rep. 2026 May 28.]
- 数年間セマグルチドで治療を受けていた40歳男性に甲状腺乳頭癌が見つかった報告。ただし、因果関係は証明できず[Hormones (Athens). 2026 Jun 25.]
GLP-1受容体作動薬投与中の方は、血中カルシトニン値の測定や甲状腺超音波(エコー)検査を定期的に行うことが望ましい。
また、GLP-1/GIP作動薬チルゼパチドを1年間(週2.5〜15mg)投与した患者527人のうち、28人(5.3%)が甲状腺疾患を発症または甲状腺疾患が進行しました。最多は結節性甲状腺腫(甲状腺のしこり・腫瘤)と薬物誘発性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎)でした。特に、危険因子は末期腎疾患(OR = 2.94)と元々ある甲状腺疾患(OR = 3.78)。[Clin Obes. 2026 Jun;16(3):e70084.]
更に、甲状腺機能低下症患者において、チルゼパチドによる胃排出遅延から甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン、日本ではチラーヂンS)の吸収率が上昇し、甲状腺中毒症を来した報告があります。[Cureus. 2026 Apr 8;18(4):e106680.]
それ以外の副作用は、
- 消化器症状[吐き気・嘔吐・下痢](約10〜18%);投与1〜2日後に出やすく、数週間から数ヶ月で治まることが多い。悪心(むかつき)26.1%、嘔吐(吐く)8.5%、下痢。制吐剤、胃粘膜保護剤、整腸剤・下痢止めで対処
甲状腺機能が正常化していない甲状腺亢進症/バセドウ病患者には使用しない方が良い - 急性膵炎
- エキセナチドで膵炎のオッズ比が6倍に増加、膵臓癌もオッズ比2倍以上に増加(Gastroenterology. 2011 Jul;141(1):150-6)
- 胆嚢炎;胆石症がある場合、胆石発作・急性胆嚢炎
- 腸閉塞(イレウス)(甲状腺機能が正常化していない甲状腺機能低下症では要注意)
- 虫垂炎 [Diabetes Metab Syndr Obes. 2025 Jan 31;18:261-265.]
- 逆流性食道炎 [喉(のど)の違和感・痛み、嗄声(させい、声のカスレ)を甲状腺の病気と間違える]
- 橋本病(慢性甲状腺炎)患者に高プロラクチン血症を引き起こした報告[Case Rep Med. 2026 May 27;2026:3016596.]
2022年3月、日本医師会は、GLP-1受容体作動薬を糖尿病治療以外で投与する適応外使用を問題視し、厚生労働省に対して適切な対応を求めました。
日本糖尿病学会とリベルサスの製造元(ノボノルディスクファーマ社)も、「糖尿病ではない日本人に使用した場合の安全性と有効性は確認できていない」(特に甲状腺癌の発生)との見解を出しています。体重減量分の20~30%は筋肉量の減少と考えられ、高齢者ではフレイルやサルコペニアを来す危険があります。甲状腺亢進症/バセドウ病の既往があり、すでに筋肉量の減少を来している人は要注意。
マンジャロ® (チルゼパチド)やウゴービ®・リベルサス®(セマグルチド)は肥満症も改善するため、高度肥満者の甲状腺手術前減量にも有効と考えらえます。
肥満者の手術は、
- 全身麻酔前、人工呼吸器に接続するための気管内チューブを入れにくい(気管内挿管が難しい)
- 麻酔薬が脂肪に蓄積するので、麻酔が覚めにくい
- 手術時の姿勢により、脂肪が肺を圧迫するため、酸素の取り込みに支障を来す。また、術後肺合併症(術後肺炎)の頻度が増える
- 血流障害がおきやすく、静脈血栓症→肺血栓塞栓症の危険
- 体重が背中側の組織へ掛かって褥瘡(床ずれ)ができやすい
などの問題が生じるため、甲状腺手術に限らず、術前の減量が必要です。
マンジャロ® (チルゼパチド)は個別反応が大きく、血中濃度が安定するのに約4週間かかります。
- 初期用量;2.5mgを週1回投与し、吐き気・嘔吐・下痢などの副作用を確認
- 維持用量;5mgを週1回 x 4週間投与→血糖改善、体重減少
筆者の個人的な意見ですが、中間用量7.5mg、高用量10mg、12.5mgは副作用の危険(特に甲状腺癌の発生)からお勧めできません。最大用量15mgなんて、トンデモない
恐ろしいことに、マンジャロ® (チルゼパチド)の投与期間には、明確な制限が無く、週1回の皮下注射が延々と継続されるかもしれません。いくら動物(ラットやマウス)と異なり、甲状腺C細胞にGLP-1受容体が少ない人間でも、甲状腺C細胞腫瘍(甲状腺髄様癌)が発生する危険は高くなると考えられます。
2型糖尿病治療薬マンジャロ皮下注®(有効成分チルゼパチド)には肥満症の適応はありません。しかし、同一成分(チルゼパチド)のゼップバウンド皮下注®には2型糖尿病単独の適応はないものの、以下のごとく、肥満症と肥満を伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)に適応があります。
-
肥満症ただし、高血圧、脂質異常症又は耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常等)のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、かつ①BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する②BMIが35kg/m2以上
-
中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群ただし、BMIが27kg/m2以上に該当する場合に限る。
よって、同一成分(チルゼパチド)であっても、マンジャロ皮下注®とゼップバウンド皮下注®は適応症が異なり、互いに混同して処方・使用することは認められていません。
当然、他のGLP-1受容体作動薬と同じく、雌雄ラットを用いた2年間がん原性試験において甲状腺C細胞腫瘍(腺腫及び癌)の発生頻度の増加がみられます。
人に対するゼップバウンドの投与期間は原則、最大72週間(約1年4ヶ月)と定められています。危惧されるのは、患者が72週間(約1年4ヶ月)の投与終了後、別の医療機関(オンライン クリニックを含む)を受診し、ゼップバウンドの再投与を受けることです(あるいは、ゼップバウンド®の次にウゴービ®を使うかもしれません)。さすがに、それ程の長期投与になると甲状腺癌の発生率が上昇してもおかしくありません。
オゼンピック皮下注®(有効成分セマグルチド)には肥満症の適応はありません。しかし、同一成分(セマグルチド)のウゴービ皮下注®には2型糖尿病単独の適応はないものの、以下のごとく、肥満症と肥満を伴う代謝機能障害関連脂肪肝炎に適応があります。
- 肥満症
ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合
①BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
②BMIが35kg/m2以上
- 肝硬変を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎。ただし、中等度又は高度の線維化を有する場合に限る
当然、他のGLP-1受容体作動薬と同じく、ラット及びマウスにおける2年間がん原性試験において、臨床用量を下回る用量で、甲状腺C細胞腫瘍の発生頻度の増加が認められたとの報告があります。
人に対するウゴービ®の投与期間は原則、最大68週間(約1年4ヶ月)と定められています。危惧されるのは、患者が68週間(約1年4ヶ月)の投与終了後、別の医療機関(オンライン クリニックを含む)を受診し、ウゴービ®の再投与を受けることです(あるいは、ウゴービ®の次にゼップバウンド®を使うかもしれません)。さすがに、それ程の長期投与になると甲状腺癌の発生率が上昇してもおかしくありません。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。




