甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症の動脈硬化と狭心症・心筋梗塞・急性冠症候群[橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
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動脈硬化:専門の検査/治療/知見 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
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Summary
甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症による動脈硬化が原因でおきる急性冠症候群は不安定狭心症・急性心筋梗塞・虚血性心臓性突然死の総称。冠動脈プラークが突然破裂し血栓形成。急性心筋梗塞は発症後6時間以内に血管再疎通すれば予後良好。発症後間もない急性心筋梗塞では心筋逸脱酵素の上昇、心電図異常が検出されない、心筋バイオマーカーの心筋トロポニンは発症後3-5時間後に上昇。心エコーで心室壁の動きが悪い箇所あり。心臓カテーテル検査後にコレステロール塞栓症おこりうる。前胸部激痛症候群、過敏性剣状突起症候群との鑑別要。
Keywords
狭心症,心筋梗塞,甲状腺機能低下症,潜在性甲状腺機能低下症,動脈硬化,心筋トロポニン,コレステロール塞栓症,急性冠症候群,心臓カテーテル,甲状腺
急性冠症候群は
- 不安定狭心症:心筋壊死に至らず。CK-MB・トロポニンT、トロポニンI 軽度上昇(発症後3~8時間後)。
- 急性心筋梗塞:心筋壊死。CK-MB・トロポニンT、トロポニンI は高度上昇。両肩への放散痛があれば、心筋梗塞の可能性が最も高い(JAMA. 1998 Oct 14;280(14):1256-63.)
- 虚血性心臓性突然死
の総称。冠動脈プラーク(コレステロールエステルを大量に含んだ脂質の塊)が突然破裂し血栓形成され、冠動脈血流が減少・途絶しておこります。(※もともと冠動脈に高度狭窄部があるわけではありません。)
発症後、間もない急性心筋梗塞では、
- 心筋逸脱酵素の上昇、心電図異常が検出されない
- 心筋バイオマーカーの心筋トロポニンは、発症後3-5時間経たないと上昇しない
※心筋トロポニンは、腎機能障害でも上昇するので注意 - 心エコーを行えば、心室壁で動きの悪い箇所がある
- 大動脈解離を疑い、ダイナミックCTを行うと、心筋の造影不良域を検出できる事がある
心電図でST上昇型心筋梗塞(STEMI)と診断されれば、心筋バイオマーカー(心筋トロポニン、発症後3-5時間経たないと上昇しない)の結果を待たず、速やかに経皮的冠動脈形成術(PCI)を行います。
緊急PCIの適応は発症12時間以内ですが、心筋梗塞は発症後2~3時間で急速に進展するためdoor to balloon(病院のドアから再灌流まで)時間90分以内が求められます。
非ST上昇型心筋梗塞の一つ心内膜下梗塞は、心筋の完全閉塞ではないためST上昇は認めません。ST低下、陰性T波で心筋虚血と鑑別難。
非ST上昇型急性冠症候群は軽症-左主幹部病変による超重症例まで多様です。心筋トロポニンが陽性なら重症でCCU入院後早期(24時間以内)に冠動脈造影。心筋トロポニンは発症後6時間経たないと陽性化しないため、6時間以内に測定し陰性の場合、数時間後に再検査。
心筋梗塞で、左脚ブロックの出現は広範囲の心筋障害を示します。
右冠動脈に閉塞病変がある場合は、下壁梗塞や右室梗塞を生じます。
下壁には副交感神経が集中しているため、下壁梗塞では
- 心機能低下に伴い副交感神経が刺激され、心窩部痛・吐き気・食欲不振
- 低血圧、徐脈・洞停止・房室ブロックなどの徐脈性不整脈(甲状腺機能低下症と同じ)
が起こります。
右室梗塞は、心臓に戻ってきた血液を肺に送り出すポンプ機能が障害されます。そのため、血液(静脈血)が心臓に戻れず、うっ滞します(静脈還流不全)。鎮痛剤モルヒネ、冠血管拡張剤ニトログリセリンを使うと、末梢血管が拡張し、さらに静脈還流不全が悪化し、心源性ショックを起こす危険性があります。
急性下壁梗塞・右室梗塞は、特発性食道破裂(ブールハーヴェ症候群)との鑑別が必要です。頸部皮下気腫/縦隔気腫があれば、急性下壁梗塞・右室梗塞は否定的。
筆者は甲状腺の専門医で、心臓移植については素人ですが、それ故、心臓移植の基準に違和感を感じます。専門家が、非専門家にクイズ形式で出題したセルフトレーニング問題の正解と解説を読んで愕然とした。その内容は、
「心臓移植を受ける事に積極的であれば、呼吸器障害などがなければ、喫煙歴は禁忌とならない」
「”55歳の女性、虚血性心筋症でバイパス術の既往がある。1日40本、25年間の喫煙歴があり、1年前から禁煙している”は、心臓移植の適応である」
と言うものです。虚血性心筋症=(心筋梗塞・狭心症で心臓の筋肉が障害された) 、早い話、不節制に何十年もタバコを吸い続け、周囲の人にも受動喫煙の健康被害を及ぼし、自業自得・因果応報の心筋梗塞・狭心症になったのに、1年間禁煙しただけで、心臓移植で命を伸ばそうなど言語道断です。ある意味、善意のドナー(臓器提供者)に対する冒涜(ぼうとく)に思えます。
筆者が思うに、本来、心臓移植は特発性拡張型心筋症、劇症型心筋炎など、患者自身に何の過失もないのに、不幸にも背負ってしまった死の運命に、命のリレーとして行う人道的な治療です。好き放題、タバコを吸いまくったオヤジ、オバサンが、貴重な移植心臓を横取りする事を認めれば(実際、行われていないでしょうが、専門家が公然と認めているのは事実です)、誰が善意でドナー登録をするというのでしょうか?
筆者は絶対にドナー登録しません。
心臓カテーテル検査後、経皮的冠動脈形成術などのカテーテル治療後にコレステロール塞栓症がおきる場合があります。コレステロール塞栓症は高齢男性、高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風、動脈硬化、大動脈瘤、腎不全でおこりやすく、その原因は、
- 特発性
- 血管内操作;心臓カテーテル検査後、経皮的冠動脈形成術などのカテーテル治療後
- 抗凝固剤
- 大血管手術
コレステロール塞栓症の病態は、主に大動脈壁の粥状硬化巣(プラーク)の破裂により遊離したアテローム組織片(流出したコレステロール結晶)の全身小動脈(皮膚、腎、脳、甲状腺など)への塞栓です。[Kokyu To Junkan. 1991 Feb;39(2):193-6.]
コレステロール塞栓症の典型的な経過は、心臓カテーテル検査後に
- 腎機能低下(急性腎臓障害(AKI)、慢性腎臓病(CKD)の原因); ヨード造影剤腎症と鑑別
- 好酸球増多、補体低下、軽度CRP上昇
- 少し遅れて①発熱、②両下肢足底の紫色変化を伴う疼痛、潰瘍形成[下肢痛+網状皮斑(リベドー:livedo racemosaor livedo reticularis、動脈網の緊張亢進と静脈網の緊張低下による皮膚の末梢循環障害)]
コレステロール塞栓症の治療は、
- 急性腎臓障害(AKI)の治療
- 副腎皮質ステロイド剤、スタチン剤、LDL アフェレーシスなど。
全身の動脈硬化が進展しているため予後不良。[Kokyu To Junkan. 1991 Feb;39(2):193-6.]
前胸部激痛症候群(Precordial Catch syndrome:PCS)は、小児・若年者に多く、前かがみ・悪い姿勢による肋間筋痙攣(けいれん)・胸膜痛が原因とされます。
- 安静時、軽労作時に発症することがある。激しい運動時におこらないため労作時狭心症・心筋梗塞と異なる。睡眠中は起こらないので、異型狭心症と異なる。
- 突然の鋭く、突き刺すような痛み-軽度の痛みで、左側に多く、圧痛がないため、狭心症・心筋梗塞を疑ってしまう。
- しかし、患者がピンポイントで痛みの場所を指さしできるのが、狭心症・心筋梗塞と異なる。
- 深呼吸で増悪し、浅い呼吸、姿勢を伸ばす、仰向けになると改善。
- 数秒~数分で自然軽快。30分以上続くこともあり、狭心症・心筋梗塞を疑ってしまう。
過敏性剣状突起症候群は、全人口の約2%を占めるとされ、
- 特発性(原因不明)
- 剣状突起の突出
- 剣状突起周辺の異所性骨化
が原因。
過敏性剣状突起症候群の症状は、
- 心窩部から背部、頸部、肩、上腕に痛みが放散(頚部放散痛で甲状腺の痛みのよう)。嘔気(吐き気)、下痢も伴う
- 体動、運動、食後、咳嗽(せき)で悪化、仰臥位で軽快しますが、これだけでは狭心症・心筋梗塞との鑑別難
- 剣状突起部に一致して圧痛を認める点が狭心症・心筋梗塞と異なる
過敏性剣状突起症候群の治療は、消炎鎮痛剤(NSAIDs)、局所麻酔、剣状突起切除術
(Intern Med. 2015;54(12):1563-6.)(Pract Neurol. 2018 Apr;18(2):137-142.)
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