自己免疫性肝炎(AIH)と甲状腺、抗平滑筋抗体(ASMA),抗肝腎ミクロゾーム抗体(抗LKM-1抗体),出産後自己免疫性肝炎[長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 年次学術集会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等において学術目的で使用可能なもの(Creative Commons License)、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
自己免疫性肝炎(AIH)1型、インターフェース肝炎(Interface hepatitis) 組織像[Cell Mol Immunol. 2022 Feb;19(2):158-176.]
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。肝臓病自体の治療を行っておりません。
Summary
自己免疫性肝炎(AIH)の10%は慢性甲状腺炎(橋本病)合併。シェーグレン症候群や関節リウマチも合併。1型は抗核抗体(ANA)や抗平滑筋抗体(ASMA)陽性、2型は抗肝腎ミクロゾーム抗体(抗LKM-1抗体)陽性。甲状腺機能亢進症/バセドウ病の合併は稀だが、甲状腺ホルモンの肝細胞毒性や抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)治療後の代謝変動・副作用による肝障害と紛らわしく、抗甲状腺薬を使用し難い。出産後(無痛性)甲状腺炎に出産後自己免疫性肝炎を合併すれば重篤な肝機能障害。
Keywords
自己免疫性肝炎,AIH,甲状腺,橋本病,抗平滑筋抗体,抗LKM-1抗体,バセドウ病,抗肝腎ミクロゾーム抗体,ASMA,出産後自己免疫性肝炎
自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis;AIH)は、
- 中年以降の女性に多く、組織適合抗原 HLA-DR4が関与
- 慢性甲状腺炎(橋本病)(10%)、シェーグレン症候群(7%)、関節リウマチ(RA)(3%)を合併
- 抗核抗体(ANA)陽性(74%)、抗平滑筋抗体(ASMA)陽性(40%)になる1型がほとんどで、それらが陰性なら抗肝腎ミクロゾーム抗体(抗LKM-1抗体)が陽性の2型
- 組織検査(生検)でインターフェイス肝炎(Interface hepatitis)の像;肝細胞と門脈域の境界(界面:インターフェイス)で、リンパ球などの炎症細胞(形質細胞を含む単核球細胞)が肝細胞を削り取るように破壊。門脈域は拡大。
[J Clin Transl Hepatol. 2025 Oct 28;13(10):869-877.]
ウイルス感染[A型肝炎、エプスタイン‐バールウイルス (EBV)、サイトメガロウイルス、麻疹ウイルス]や薬剤は自己免疫性肝炎(autoimmune hepatitis;AIH)発症の誘因で、日本ではC型肝炎ウイルス血症を伴う自己免疫性肝炎(AIH)が報告されています。
抗平滑筋抗体 (ASMA)
抗平滑筋抗体 (ASMA) は、自己免疫性肝炎(AIH)・ルポイド肝炎の80~85%、 原発性胆汁性肝硬変・胆管炎(PBC)の40%程度に高力価で検出される疾患特異的抗体です。
保険適応外につき、保険診療で測定する事はできません。
抗肝細胞膜抗体(ALMA)
原発性胆汁性肝硬変・胆管炎(PBC)、自己免疫性活動性慢性肝炎で陽性。保険適応外なので、保険診療で測定する事はできません。
抗ミトコンドリア抗体
自己免疫性肝炎(AIH)での抗ミトコンドリア抗体陽性率は約10%です。つまり、抗ミトコンドリア抗体陽性だからと言って原発性胆汁性肝硬変・胆管炎(PBC)とは限りません。
院長の執筆
-
ワンポイントアドバイス:見逃されやすい甲状腺疾患1 原因不明の肝障害 (文光堂 メディカルプラクティス)
待合にお持ち帰り用コピーがあります!
無投薬で肝機能が正常化することは稀。
自己免疫性肝炎(AIH)の治療は、
- ごく軽度の肝機能障害ならウルソデオキシコール酸600mg/日の内服
- それ以外は、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)の内服;甲状腺炎や甲状腺機能亢進症/バセドウ病もついでに軽快
自己免疫性肝炎(AIH)は様々な自己免疫性疾患と合併しますが、甲状腺機能亢進症/バセドウ病との合併はまれです。しかし、1.8%-6%の合併率という報告もあります(J Clin Gastroenterol. 2010 Mar; 44(3):208-13.)(QJM. 2002 Sep; 95(9):559-69.)
抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)内服開始後の薬剤性肝障害と紛らわしく、特にAST、ALT 数百IU/L に増悪した場合、鑑別診断(肝生検)・リンパ球刺激試験(DLST)が終わるまで抗甲状腺薬を中止せざる得ません。あるいは、最初から、抗甲状腺薬を使用できません。
また、例え薬剤性肝障害が否定され、自己免疫性肝炎(AIH)が確定しても、
- 今後も薬剤性肝障害が起きる可能性はあるため、もし起これば自己免疫性肝炎(AIH)を誘発・増悪させる(Nagoya J Med Sci. 2011;73:205–209.)
- 自己免疫性肝炎(AIH)がコントロールできない場合、最悪、肝臓移植になる(Cureus. 2019 May 11;11(5):e4647.)
など、抗甲状腺薬の再開は難しく、
- 手術療法(甲状腺全摘出)(日消誌 2007;104:52―56)
- アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療(Cureus. 2019 May 11;11(5):e4647.)
が無難です。
自己免疫性肝炎(AIH)に甲状腺機能亢進症/バセドウ病を合併する場合、
-
若年女性が多い(日本消化器病学会雑誌 104 (1) 52-56, 2007.)
- 混合性結合組織病(MCTD)、腎炎、重症筋無力症など他の自己免疫疾患も合併する事が多い(Endocr J. 1999 Feb;46(1):173-7.)(日本消化器病学会雑誌 104 (1) 52-56, 2007.)
-
プロピルチオウラシル(PTU;プロパジール、チウラジール)による薬剤性肝障害が自己免疫性肝炎(AIH)を誘発・増悪させる(Nagoya J Med Sci. 2011;73:205–209.)
出産後自己免疫性症候群として、出産後(無痛性)甲状腺炎は高頻度におこります。稀に、出産後自己免疫性肝炎も合併するケースがあって、甲状腺中毒症による肝障害と鑑別しなければなりません。また、出産後自己免疫性症候群は、出産回数が増えるたびに重篤(重症)化する傾向があるため、1回目より2回目の出産に注意が必要です。
橋本病が基盤にあり、出産後(無痛性)甲状腺炎に出産後自己免疫性肝炎を合併した症例では、出産後3 か月目に倦怠感などの症状とともにAST 997 IU/L、ALT 1233 IU/L の肝機能障害を認めるも副腎皮質ステロイド剤投与で軽快。再度妊娠後は、初回よりも重篤(重症)化する可能性が予見できたため、出産後早期よりステロイドを開始。出産後(無痛性)甲状腺炎は軽度で済み、出産後自己免疫性肝炎もAST・ALT最大100 IU/L 前後で終わったそうです。(第56回日本甲状腺学会 P2-062 出産後に重篤な自己免疫性肝炎を発症した橋本病の1 例―2 度の出産経過について―)
出産後自己免疫性肝炎の診断に、抗チトクロム2D6(CYP2D6)抗体測定が抗平滑筋抗体よりも有用との報告があります[Am J Reprod Immunol. 2003 Oct;50(4):355-62.]。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区、住吉区、阿倍野区、住之江区、松原市、生野区、天王寺区も近く、堺市、羽曳野市、八尾市、東大阪市、生野区、浪速区も圏内。


