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甲状腺と救急(アウトドア編) 減圧症,キノコ中毒,レプトスピラ症,アルカロイド中毒,自己ハーブ治療,オレアンドリン中毒[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺エキノコックス症

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学大学院医学研究科(現、大阪公立大学大学院医学研究科) 代謝内分泌内科(2内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等において学術目的で使用可能なもの(Creative Commons License)、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など)  糖尿病編 をクリックください。

甲状腺と救急(アウトドア編)

長崎甲状腺クリニック(大阪)では救急外来を行っておりません。

Summary

毒キノコのシビレタケ中毒やカエンタケ中毒、レプトスピラ症[ワイル病、黄疸出血熱]チョウセンアサガオ(マンダラゲ)のアルカロイド中毒は甲状腺中毒症甲状腺クリーゼの様。アマニタ属のキノコ中毒で中枢性甲状腺機能低下症低血糖・血清カルシトニン濃度上昇により低カルシウム血症と代償性の副甲状腺ホルモン濃度上昇。減圧症による指先の震えは特定の指先だけで、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の姿勢時振戦と異なる。浄水用のヨウ素化製剤で甲状腺中毒症甲状腺機能低下症/橋本病に対する自己ハーブ治療でキョウチクトウを摂取し続け、オレアンドリン中毒になった報告あり。

Keywords

キノコ中毒,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,レプトスピラ,アルカロイド中毒,ハーブ,甲状腺

甲状腺と救急:毒キノコのシビレタケ中毒を甲状腺中毒甲状腺クリーゼと勘違い

毒キノコのシビレタケ中毒を甲状腺中毒・甲状腺クリーゼと勘違い

毒キノコのシビレタケを山菜採り(キノコ狩り)で持ち帰り食べると、シロシビンによるドーパミン分泌促進、セロトニン症候群(瞳孔散大、頻脈、高血圧、幻覚)をおこします。あたかも甲状腺中毒症甲状腺クリーゼのような紛らわしい症状です。

治療は活性炭投与。

毒キノコのシビレタケ

アマニタ属のキノコ中毒

アマニタ属のキノコは死の帽子(カサ)、破滅の天使と呼ばれ、その毒素によるアマトキシン中毒はアメリカで増加しています。アマニタ属のキノコ中毒で内分泌異常がおこり、糖代謝、カルシウム、甲状腺ホルモン系が障害されます。

  1. 中枢性甲状腺機能低下症
  2. インスリンとCペプチド濃度は上昇し低血糖
  3. 血清カルシトニン濃度上昇により低カルシウム血症と代償性の副甲状腺ホルモン濃度上昇

が起こります。(J Toxicol Clin Toxicol. 1987;25(1-2):21-37.)(J Toxicol Clin Toxicol. 1994;32(6):715-21.)

(写真 PLoS One. 2017 Aug 2;12(8):e0182131.)

アマニタ属のキノコ

猛毒キノコ「カエンタケ」

猛毒キノコ「カエンタケ」は、毒キノコの中でも最強の毒性を持ち、かび毒(マイコトキシン)のトリコテセン類(マイコトリコテセン)が主成分。

  1. 触るだけでも皮膚がただれる
  2. 食べると10分程で、腹痛、嘔吐、水様性下痢、その後、発熱、めまい、手足のしびれ
    2日後に消化器不全、小脳萎縮による運動障害など脳神経障害により死に至ります
    発熱、下痢、意識障害など甲状腺クリーゼ  のような症状

(きのこ図鑑より改変)

猛毒きのこ カエンタケ

減圧症

減圧症は、ダイビングの急速浮上時など、急激な減圧により

  1. 組織内に窒素の気泡
  2. 血管内に窒素の空気塞栓

が生じ、血流障害、炎症・凝固亢進を引き起こす病態です。例えば、末梢の細血管が障害されるI型減圧症(末梢型)では、ダイビング後数時間~数日して

  1. 指の関節痛(関節内の窒素気泡)、筋肉痛
  2. 骨壊死(骨髄内に生じた窒素の気泡による虚血壊死)
  3. 知覚障害(シビレ)、運動障害(字を書く時に指先が震える)が生じます。この場合、あくまで特定の指先だけの震えであり、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の姿勢時振戦とは異なります。
  4. 皮疹、かゆみ、出血斑、大理石斑

が生じます。

40 kPaの酸素とヘリウムを吸って、300 m s.w.の水圧で体の変化を調べたところ、甲状腺ホルモンと窒素のバランスが影響を受けるも、減圧症は発生しませんでした。[Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 1984 Jan 7;304(1118):119-41.]

Travelers' thyrotoxicosis(旅行者甲状腺中毒症)

中南米へのバックパッキング旅行中、浄水用のヨウ素化製剤で甲状腺中毒症無痛性甲状腺炎破壊性甲状腺炎)を呈した報告があります。‎「Travelers' thyrotoxicosis(旅行者甲状腺中毒症)」と命名されています[Arch Intern Med. 1996 Apr 8;156(7):807-10.]。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で服薬中、甲状腺クリーゼ、無顆粒球症?重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

ダニ媒介性疾患は①自己免疫疾患に似た急性症状をおこす②自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病橋本病)の誘発因子になる。マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は無顆粒球症甲状腺クリーゼに似た症状・検査所見。ライム病(ライムボレリア症)は、シカダニに媒介されるスピロヘータ属のボレリア感染症。ボレリアのアミノ酸配列はTSH受容体、サイログロブリンTPOと一部共通してるためバセドウ病・橋本病を引き起こす可能性。ダニの一種ツツガムシ(恙虫)が媒介するリケッチアがツツガムシ病の原因。ツツガムシ病で亜急性甲状腺炎を発症した報告あり。

マダニ,重症熱性血小板減少症候群,SFTS,ライム病,シカダニ,ボレリア,ツツガムシ,リケッチア,ツツガムシ病,甲状腺

ダニ媒介性疾患(TBD)とは、ダニによって伝染する古典的な、あるいは新たに発見された疾患で

  1. 自己免疫疾患に似た急性症状をおこす(筋骨格症状、皮膚症状、神経障害、腎不全など)
  2. 自己免疫疾患の誘発因子になる[関節リウマチ(RA)、自己免疫性甲状腺疾患(バセドウ病橋本病)、血管炎]
  3. ツツガムシ病で亜急性甲状腺炎を発症する

などの危険があります。特にダニの生息地域では注意が必要です。‎[J Autoimmun. 2018 Mar;88:21-42.]

2019年に北海道でマダニによって媒介される新規ナイロウイルスが見つかりました。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の感染者数は、2013年1月に国内第一号患者が確認されてから2025年1月31日までに1058人。死亡者数は116人。西日本を中心に感染者が増えています。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)服薬中、特に①飲み始めの数か月、②再発後の再服用では無顆粒球症への注意が必要です。また、甲状腺ホルモンが正常化していない未治療あるいは治療中の甲状腺機能亢進症/バセドウ病では甲状腺クリーゼの危険があります。

マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は無顆粒球症甲状腺クリーゼに似た症状・検査所見です。抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)服薬中、あるいは甲状腺ホルモンが正常化していない甲状腺機能亢進症/バセドウ病の方が、アウトドアで森や山へ行き、マダニに咬まれて重症熱性血小板減少症候群(SFTS)を発症すれば、無顆粒球症甲状腺クリーゼと見誤る可能性があります。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

石川県以西の西日本では、年間60-70人が重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に罹患します(国立感染症研究所HPより)。さらに、温暖化の影響で感染地が北上しています。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、マダニに咬まれることによるSFTSウイルス感染が原因で発症。感染後6-14日程の潜伏期を経て発症するが、そもそも皮膚症状は無く、刺し口が分からなければ、ダニ咬傷を思いつかない場合があります。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の症状・検査所見は、

  1. 高熱;甲状腺クリーゼ無顆粒球症のよう
  2. 消化器症状(嘔吐・下痢);甲状腺クリーゼのよう
  3. 汎血球減少;血小板減少による下血、無顆粒球症の様に白血球減少
  4. 骨髄で血球貪食像(血球貪食症候群);;甲状腺クリーゼのよう
  5. 中枢神経症状(意識障害・けいれん);;甲状腺クリーゼのよう

です。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の治療には、ステロイドパルス療法を行いますが、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に対する特効薬はなく、死亡率45%とされます。無理にマダニを引き剥がすと、皮膚に食いついた頭部だけが残るので、皮膚ごと切除せねばなりません。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスは猫にも感染し、猫から人間へ感染するため、弱った猫には無暗に近付かない方がよいでしょう。

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の予防は、マダニに咬まれないようにすることです。肌の露出を避け、市販の虫よけスプレーを使用します。

深刻でないライム病

ライム病(ライムボレリア症)は、シカダニに媒介されるスピロヘータ属のボレリア感染症です。

本州中部以北(特に北海道)で患者が多く、北海道でマダニに咬まれて医療機関を受診した人の8%がライム病(ライムボレリア症)を発症したそうです。欧米では現在でも年間数万人が感染し、感染者数は年々増加しています。

ライム病(ライムボレリア症)の80%以上が若年男性。

ライム病(ライムボレリア症)の症状は、

  1. 感染初期(stage I);マダニ刺咬部を中心とする遊走性紅斑(環状紅斑または均一性紅斑)、発熱、頭痛、悪寒、筋肉痛、関節痛
     
  2. 播種期(stage II );神経症状(顔面神経麻痺、視神経炎、髄膜炎)、心筋炎による房室ブロック・心膜炎(約1%)[Front Biosci. 2003 Sep 1;8:s769-82.]
      
  3. 感染後期(stage III);感染から数カ月ないし数年で、慢性萎縮性肢端皮膚炎、慢性関節炎、慢性脳脊髄炎

ライム病(ライムボレリア症)の治療は、アモキシシリン、ドキシサイクリン、セフトリアキソンなどの抗生物質。

ライム病
ライム病と橋本病

重度の甲状腺機能低下症のため、ライム病(ライムボレリア症)の診断が遅れた報告があります[J Am Osteopath Assoc. 1995 Jul;95(7):435-7.]。

ボレリアのアミノ酸配列はTSHレセプター(TSH受容体)、サイログロブリン甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)と一部共通してるため、ボレリアに対する免疫反応が、バセドウ病橋本病を引き起こす可能性が考えられます[Rev Endocr Metab Disord. 2016 Dec;17(4):485-498.]。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病で服薬中、甲状腺クリーゼ、無顆粒球症?レプトスピラ症(ワイル病)

レプトスピラ症[ワイル病、秋疫(あきやみ)、黄疸出血熱]は、らせん状のレプトスピラ菌(グラム陰性桿菌、スピロヘータ目レプトスピラ科)感染により起こります。 タヌキやネズミなどの野生動物(死骸を含む)、豚・牛などの家畜を触ったり、それらの糞尿が混じった川の水を飲んだり、土を触ったり、自生の山菜を食べたりすると感染します。水辺のレジャーや、台風や水害の後で集団感染をおこす事があります。

潜伏期は5~14日で、症状は、

  1. 感冒様症状(発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛)
  2. 出血、結膜充血、青あざ(紫斑)が治らない、鼻血(粘膜出血)
  3. 肝障害で黄疸
  4. 腎障害

と、甲状腺クリーゼ無顆粒球症に似ており、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の方は要注意です。ワイル病では、早期に適切な治療(ドキシサイクリン投与)がなされない場合の死亡率は20~30%です。

レプトスピラ症 結膜充血

(国立感染症研究HPより)

レプトスピラ菌

甲状腺エキノコックス症

甲状腺と医動物

キタキツネの糞が感染源の甲状腺エキノコックス症では甲状腺に虫のう胞(虫嚢胞)形成。マムシ咬傷で下垂体前葉機能低下症尿崩症重度の甲状腺中毒症。ふぐ毒テトロドトキシン中毒やシガテラ毒による食中毒は甲状腺機能異常に類似。狂犬病ワクチン接種後にベーチェット病亜急性甲状腺炎を発症した報告あり。ジビエブーム下、加熱不十分な熊肉による旋毛虫食中毒(トリヒナ食中毒)が増加。筋肉痛や眼瞼浮腫(バセドウ病眼症のよう)、重症例は全身浮腫などの症状が特徴。

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多包性エキノコックス症の原因となる多包条虫(エキノコックス)は、もともと北海道全域にいたのではありません。元は北方の礼文島で、毛皮を取るのと野ねずみ駆除目的で持ち込まれたキツネが感染源です。流氷に乗って北海道東部に上陸したキツネによって、北海道全域に多包性エキノコックス症が広がりました。

キタキツネの糞が主な感染源となり、糞で汚染ざれた食物、水などを介してエキノコックス虫卵が人の口から入りエキノコックス症を発症します。

北海道の放し飼い犬や、愛知県で捕獲された野犬からもエキノコックス症が確認されています。

キタキツネ
エキノコックス
甲状腺エキノコックス症 超音波(エコー)画像

海外のエキノコックス症を含めた報告では、肝臓に虫のう胞(虫嚢胞)を形成する他、肺、脳・脊髄(脳中小)、筋骨格系、心臓、腎臓甲状腺、唾液腺、副腎乳房卵巣にも虫のう胞(虫嚢胞)が生じる場合もあります(嚢虫症)。‎[Iran J Med Sci. 2013 Mar;38(1):2-14.][Int J Otolaryngol. 2011;2011:713089.]

甲状腺単独嚢虫症を生じた報告もあります[Medicine (Baltimore). 2016 Mar;95(10):e2929.]。

自己ハーブ治療でオレアンドリン中毒

キョウチクトウ

自然であるが故に副作用の無いと信じられているハーブの力で病気を治そうとする自己ハーブ治療があります(日本よりも欧米で)。しかし、自然界には有毒な草木が五万と存在します。

薬草と思っても実は、青酸カリの1,000倍の毒性を持つ強心配糖体オレアンドリンを含むキョウチクトウ(夾竹桃)だった場合、オレアンドリン中毒を発症します。成人の致死量は葉5〜15枚です。(Forensic Sci Int. 1988 Feb; 36(3-4):247-50.)しかし、こんな雑草をハーブと間違えるとは・・・・。

一方、キョウチクトウ(夾竹桃)は、消化不良、マラリア、ハンセン病、精神病、性病、中絶の薬として使用されてきた歴史があり、抗がん剤としても研究されています(Integr Cancer Ther. 2007 Dec; 6(4):354-64.)。まさに、「毒にも薬にもなる」です。

甲状腺機能低下症/橋本病に対する自己ハーブ治療目的でキョウチクトウ(夾竹桃)を摂取し続け、オレアンドリン中毒になった60歳女性の報告があります(Balkan Med J. 2016 Sep;33(5):559-562.)。

オレアンドリン中毒の症状は、ジギタリス中毒と類似し、

  1. 嘔気・嘔吐(100%)
  2. 四肢脱力(84%)
  3. 下痢(77%)
  4. 非回転性めまい(66%)
  5. 腹痛(57%)
  6. 徐脈
  7. 意識障害

(Toxicon. 2010 Sep 1;56(3):273-81.)

チョウセンアサガオ(マンダラゲ)でアルカロイド中毒

チョウセンアサガオ(マンダラゲ)は、華岡青洲が麻酔に使用した痛仙散の原料です。山菜採りでオオバ、アシタバ、モロヘイヤ等と誤認し、また根をゴボウと誤認して食べるとアルカロイド中毒を起こします。食後約1.5時間で発症し、抗コリン作用による吐き気、嘔吐、腹痛、口の渇き、しびれ、瞳孔拡大、幻覚、精神錯乱、意識障害を呈します。まるで、甲状腺クリーゼ  の様です。

アルカロイドとは、窒素原子(N)を含んで、ほとんどの場合、塩基性を示す天然由来有機化合物の総称です。チョウセンアサガオ(マンダラゲ)に含まれるアルカロイドは、アトロピン、スコポラミンです。

チョウセンアサガオ
ゴボウとチョウセンアサガオの比較

ゴボウとチョウセンアサガオの比較(岡山県庁HPより)

ヘビ咬傷と甲状腺

ヘビ毒は局所組織損傷・炎症(咬まれた場所に2 か所の咬傷を認め、そこを起点に腫脹する)→血液凝固 or 出血、ショック、神経毒性、急性腎臓障害を引き起します。南アジアと東南アジア10カ国に生息するラッセルマムシ(Vipera russelli)咬傷で

  1. (急性、慢性)下垂体前葉機能低下症;ヘビ毒による下垂体のフィブリン沈着、微小塞栓、出血
  2. 尿崩症
  3. 重度の甲状腺中毒症

を起こした報告があります(J Assoc Physicians India. 2014 Nov;62(11):55-7.)(QJM. 2011 Feb;104(2):97-108.)。

マムシ咬傷の治療は、

  1. 古典的に局所の血液吸引、切開、駆血;効果がないため、最近はあまり行われない
  2. 抗マムシ血清投与;アナフィラキシーをおこす危険があるので要注意
  3. 細胞外液の補液
  4. 抗菌薬投与;2次感染の予防

ハブ(沖縄・奄美地方のみに生息)咬傷;ハブ毒は局所組織損傷・炎症が強く、減張切開を必要とする場合が多い

ヤマカガシ(山楝蛇)咬傷;ヤマカガシ毒の抗凝固作用で出血傾向

ヘビ咬傷と甲状腺

ヘビ咬傷

マムシ

マムシ

ハブ

ハブ(沖縄県ホームページより改変)

ヤマカガシ

ヤマカガシ(環境省ホームページより改変)

ハンピ(反鼻)は、毒蛇であるマムシの皮と内臓を取り除いて乾燥させた生薬です。現代でも滋養強壮剤として、滋養ドリンク剤や薬用酒に入っています。

ふぐ毒、テトロドトキシンと甲状腺

フグは、上下2本ずつ計4本(テトラ)の歯を持つため、学術名称はテトラオドンティダエ(Tetraodontidae)です。ふぐ毒はそれにトキシン(毒素)を組み合わせてテトロドトキシンと命名されました。

ふぐ毒テトロドトキシンを含んだ海鮮シチューを食べて、甲状腺クリーゼ と可逆性甲状腺中毒性心筋症を発症した報告があります(Thyroid. 2011 Jun;21(6):679-82.)。

と言うより、元々の甲状腺機能亢進症/バセドウ病に、テトロドトキシン中毒の症状が加わり、甲状腺クリーゼ の診断基準を満たしてしまったと考えるべきでしょう。

テトロドトキシンはフグ(ふく)だけでなく、ヒョウモンダコにも含まれますが、その毒々しい見栄えから、食べる人はいないでしょう。興味本位で触ると、咬まれてテトロドトキシン中毒になります。

テトロドトキシン中毒の症状は、

  1. 口や顔周囲のしびれ(低カルシウム血症の様)
  2. 四肢麻痺[低カリウム性周期性四肢麻痺(甲状腺中毒性周期性四肢麻痺)の様]
  3. 消化器症状(嘔吐、下痢など)(甲状腺機能亢進症/バセドウ病の様)
  4. 循環不全;不整脈、心不全、心停止(粘液水腫性昏睡の様)
  5. 呼吸筋麻痺→呼吸不全、低酸素血症(粘液水腫性昏睡の様)

などで、甲状腺機能異常に似ています。

テトロドトキシン中毒に解毒薬はないため、人工呼吸器管理を含む対症療法を続けるしかありません。

ふぐ毒 テトロドトキシン

ふぐ毒 テトロドトキシン

ヒョウモンダコ

ヒョウモンダコ;水揚げされた状態では、毒性を示唆する警告色がありません。

ヒョウモンダコ

ヒョウモンダコ;海水では明らかな警告色になります。

シガテラ毒

シガテラ毒による食中毒(ciguatera fish poisoning)は、バラハタ、イッテンフエダイ、バラフエダイ、オニカマス、大型のイシダイなど、熱帯・亜熱帯のサンゴ礁周辺に生息する魚を食べておこります。シガテラ毒(シガトキシン)を含む渦鞭毛藻(プランクトンの一つ)を食べた小型の魚を、さらに大型の魚が食べ、シガテラ毒が蓄積されていきます(生物濃縮)。最後に、人間が食べてシガテラ毒中毒を発症。

シガテラ毒中毒の症状は、

  1. 腹痛、嘔吐、下痢 (甲状腺機能亢進症/バセドウ病の様)
  2. 手足のしびれ、舌や口のしびれ[副甲状腺機能低下症(低カルシウム血症)の様]
     
  3. ドライアイスセンセーション;冷たいものに触れると、ドライアイスに触れたように感じる。温かいものに触れると、冷たく感じる(シガテラ中毒特有の症状)
     
  4. 関節痛

シガテラ毒による食中毒

沖縄県では、シガテラ毒による食中毒が毎年発生しており、啓発用のパンフレット、リーフレットをネットで公開しています。

海で働く人、海に入るのが好きな人、サーファーに納豆アレルギーが多い

クラゲの触手にはポリガンマグルタミン酸(PGA、これ自体は毒ではない)が含まれ、毒針の注入を助けます。海で働く人、海に入るのが好きな人、サーファーは頻回にクラゲに刺されてポリガンマグルタミン酸(PGA)に感作されます[ポリガンマグルタミン酸(PGA)アレルギー]。

一方、納豆菌も発酵過程でポリガンマグルタミン酸(PGA)を産生します。そのため、海で働く人、海に入るのが好きな人、サーファーには納豆アレルギーが多いとされます。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病を持っていて海で働く人、海に入るのが好きな人、サーファーは要注意(甲状腺とアレルギー性鼻炎好酸球増加症 )。

クラゲに刺され続け納豆アレルギーに

クラゲに刺され続け納豆アレルギーに

納豆アレルギー

納豆アレルギー

狂犬病

狂犬病の末期

狂犬病の末期 (Wikimedia Commons)

狂犬病 アライグマ

アライグマも狂犬病ウイルスを持っている可能性があります。[North Carolina Health News より改変]

‎狂犬病(rabies)は最も有名な人獣共通感染症でrす。

狂犬病予防法が制定されて以降、日本では50年以上‎、狂犬病の国内発症はありません。犬の登録、予防注射、野犬対策が徹底されたためです。狂犬病予防法では、飼い犬に対する年1回の狂犬病予防接種を義務付けていますが、令和6年度の接種率は70.8%です。

しかし、海外のほとんどの地域で‎狂犬病は撲滅されておらず、海外で犬やコウモリ、アライグマに咬まれて帰国後に狂犬病を発症する可能性はあります。インドは狂犬病死亡者の最も多い国であり、WHO(世界保健機関)によると、世界の狂犬病死亡者の約36%を占めます。

‎狂犬病は発症するとほぼ100%死に至ります。

狂犬病ワクチン®は予防目的の3回接種と、犬やコウモリに咬まれた後の発症阻止目的の6回接種があります。

狂犬病ワクチン接種後にベーチェット病亜急性甲状腺炎を発症した報告があります[Clin Exp Rheumatol. 2020 Sep-Oct;38 Suppl 127(5):126.]。

忍術「憑き移し」は狂犬病に感染した犬をターゲットに咬みつかせるか、ターゲットの飼い犬に咬みつかせ、感染した飼い犬がターゲットに咬みつくように仕向ける恐ろしい忍法です(忍風カムイ外伝 第20話 「憑き移し」)。

熊(クマ)と甲状腺

ヒグマ

(知床財団HPより改変)

東北地方環境事務所提供

秋田県内で目撃された親子とみられるツキノワグマ(東北地方環境事務所より)

2025年は、市街地にクマの出没が相次ぎ、熊のニュースが多い年でした。千葉県だけはクマなし県で、房総半島が他県の山と隔絶しているためと考えられます。

クマの嗅覚は犬の5倍以上で、風下にいる人間の気配を見逃しません。もし、熊(クマ)に出くわしてしまっても、落ち着いて行動しましょう。背を向けて走って逃げたら追ってきます(追いつかれます)。熊(クマ)を刺激せず、ゆっくりと後退して、障害物の後ろへ移動します。2人以上ならくっついて、自分達を大きく見せたり、もし近付いて来たら大声で威嚇するのも効果的。

当然、熊にも甲状腺は存在し、アメリカツキノワグマ(Ursus americanus)は、冬の間、一時的にインスリン抵抗性と甲状腺機能低下症を生じます。これは、野生のクマ、飼育下の冬眠クマ、飼育下の非冬眠クマを問わず共通の生理現象です[J Zoo Wildl Med. 2004 Mar;35(1):82-7.]。

アメリカツキノワグマ(Ursus americanus)にも のう胞型濾胞腺腫(のう胞腺腫)が発生し、甲状腺機能低下症に至った報告があります[J Zoo Wildl Med. 2004 Mar;35(1):82-7.]。

東グリーンランドホッキョクグマ(Ursus maritimus)においても環境ホルモン(内分泌かく乱物質)の影響が認められ、有機ハロゲン汚染物質が

  1. 視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸
  2. 視床下部-下垂体-甲状腺(HPT)軸
  3. 甲状腺ホルモンの標的組織における脱ヨウ素酵素活性

を障害している可能性があります。[Environ Res. 2012 Jul;116:26-35.][Environ Res. 2015 Jan;136:413-23.]

ジビエ料理のブームに伴い、熊肉を食べて旋毛虫による食中毒(トリヒナ食中毒)をおこした報告が増えています。

熊肉で旋毛虫による食中毒(トリヒナ食中毒)

2025年は熊による死傷者が多数出た厄年でした。2021年度から2025年10月までの5年間で熊被害が最も多かったは秋田県、岩手県、長野県、福島県でした。

熊を食べて増えすぎた個体数を管理しようと言うネットユーザーの呼びかけもあり、また折からの野生鳥獣肉ジビエブームから熊肉を食べる人が以前より増えました。

しかし、同時に食中毒も増えています。加熱不十分な熊肉を食すると、旋毛虫(Trichinella)による食中毒(トリヒナ食中毒)が起こります。厚生労働省も「75℃で1分間以上の加熱」を推奨しています。冷凍処理や乾燥処理は無効。

旋毛虫による食中毒(トリヒナ食中毒)では、筋肉痛や眼瞼浮腫(バセドウ病眼症のよう)、重症例は全身浮腫など、一般的な食中毒では見られない症状が特徴。

熊肉 旋毛虫症

ツキノワグマ(CBC HPより改変)

旋毛虫症

旋毛虫 (CDC HPより改変)

航空機事故

旅客機の客室内が急に減圧すると、上から酸素マスクが落ちて来ます。幼児同伴の場合、先に親が酸素マスクを装着しなければなりません。急激な減圧は急激な低酸素を伴い、短時間で意識を失います。親が意識を失えば子どもを助けられないため、自身が酸素マスクを付けた後、速やかに幼児にも付けます。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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