甲状腺と救急(アウトドア編) 登山・急性高山病・高地肺水腫と甲状腺[橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 甲状腺機能亢進症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学大学院医学研究科(現、大阪公立大学大学院医学研究科) 代謝内分泌内科(2内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
急性高山病の発症に甲状腺ホルモンが関与。FT3/FT4 比が高い人は急性高山病になりやすい。甲状腺ホルモンが正常化していない甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者は、高地の低酸素状態・登山の運動強度増大による過剰な心臓への負荷から狭心症・心筋梗塞・たこつぼ型心筋症・不整脈・心不全・高地肺水腫・運動時高血圧症をおこす危険がある。高地は寒冷環境のため甲状腺機能低下症の低体温症が悪化。甲状腺機能低下症・甲状腺腫瘍による気管圧排で閉塞性睡眠時無呼吸症があると、山上で夜間、低酸素状態に。
Keywords
急性高山病,高山病,甲状腺ホルモン,甲状腺,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,低酸素,登山,高地肺水腫
急性高山病(acute altitude sickness /mountain sickness)は、1800mから2500mを越える高地の低酸素環境でおこり、日本なら富士山の五合目(2300m)から頂上(3776m)が危険区域です。甲状腺ホルモンは高地の低酸素環境への適応反応に不可欠[Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2004 Sep;287(3):R600-7.][Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2010 Dec;299(6):R1685-92.]。高地でFT3は代償的に低下し、酸素消費を抑えると考えられます[Adv Exp Med Biol. 2021;1335:111-119.]。そして、FT3/FT4 比が高い人は急性高山病になりやすいとされます[Exp Physiol. 2025 Dec;110(12):1880-1891.]。
また、甲状腺ホルモンは心臓に直接作用するため、甲状腺ホルモンの多い・少ない状態は、既に不整脈・心不全などが起こりやすい[甲状腺と心臓(心のう液,心臓弁膜症,心筋症,肺高血圧症,心房細動(Af) 頻脈性不整脈,徐脈性不整脈,高血圧]。
甲状腺ホルモンが正常化している甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症/バセドウ病なら問題ありませんが、未治療あるいは治療中でも正常化していない場合、登山による運動強度増大と低酸素状態による過剰な心臓への負荷が不整脈・心不全を引きおこす危険があります。結果、高地肺水腫(high-altitude pulmonary edema:HAPE)も起こりやすくなり、発症すればすぐに低地に下りないと命にかかわります(悪性高山病)[高山病で死なないために - 日本旅行医学会]。
高地肺水腫の病態は、
低酸素性血管収縮が不均等に生じる
→血管収縮が弱い所に血流が集中
→肺高血圧症となり肺胞毛細血管関門が破綻する
ものです。カルシウム拮抗剤で肺高血圧症が解除されます。
低酸素性血管収縮が重症化すると高地脳浮腫(頭痛、意識障害、異常行動など)、網膜出血も伴い、副腎皮質ステロイド剤投与を要します。
急性高山病の予防は、
高地は寒冷環境で、標高が1000m高くなると気温は6℃低下します。しかも山の気候は変わりやすく、急激な気温の低下もあります。甲状腺ホルモンが正常化していない甲状腺機能低下症では、元々低体温症になりやすいため、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)投与して甲状腺機能が正常化するまで登山を避けた方が良いでしょう(山を甘く見ない)。
高山病をおこさないような普通の山、通常の登山にも危険は多く存在します。甲状腺に問題がある状態での登山は、くれぐれも気を付けましょう。
甲状腺ホルモンが正常化していない甲状腺機能低下症、甲状腺腫瘍による気管圧排、先端巨大症で閉塞性睡眠時無呼吸症を発症している場合[甲状腺と睡眠障害:閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)]、山上で泊まるのは避けましょう。山の上は酸素分圧が低く、睡眠時無呼吸症がおきると、更なる低酸素状態を来します。眠れば、それが永遠の眠りになるやもしれません。[J Clin Sleep Med. 2022 Oct 1;18(10):2423-2432. ]
また、平時には明らかな睡眠時無呼吸症を発症していなくても、低酸素下の山上で睡眠をとれば、隠れていた睡眠時無呼吸症が顕在化するかもしれません。
登り道は傾斜が掛かる分、運動強度が増します。心臓に掛かる負荷が増大し、しかも、頂上に近着くにつれ、大気の酸素濃度は低くなり、更なる負荷が掛かります。
甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では、すでに動脈硬化が進行して狭心症・心筋梗塞が隠れている可能性があります(甲状腺と動脈硬化)。過剰な心負荷が掛かれば、それが顕在化するかもしれません。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、既に過剰な甲状腺ホルモンが心臓に負荷を掛けているため、狭心症・心筋梗塞、不整脈、たこつぼ型心筋症などをおこす危険が増します。[甲状腺と心臓(心のう液,心臓弁膜症,心筋症,肺高血圧症,心房細動(Af) 頻脈性不整脈,徐脈性不整脈,狭心症・心筋梗塞]
登山で運動強度が増せば、運動時高血圧症の危険が生じます。収縮期血圧が急上昇し、血管の破裂による脳内出血が起こります。甲状腺ホルモンが過剰な甲状腺機能亢進症/バセドウ病・甲状腺中毒症では、既に収縮期高血圧(上の血圧が高い高血圧)になっているため、運動時高血圧症がおきやすい状態です(甲状腺の血圧管理・高血圧)。
山で道に迷った・遭難した時に、沢を下ってはいけません(鉄則)。沢を下ればいつか麓にたどり着くと錯覚してしまいがちですが、どんどん登山道から離れて発見されにくくなります。さらに、沢が行き着く先は崖や滝で非常に危険です。
逆に、頂上へ向かって山を登っていくと登山道に出る確率が上がり、視界も広がって現在地を確認しやすくなります。少なくとも頂上付近は登山道のはずです。ただし、高山病をおこしていれば、標高をさげる必要があるため、頂上へ向かうのはダメです。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。




