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甲状腺のう胞と思っても副甲状腺のう胞・側頸嚢胞 [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺専門内分泌代謝長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、年次開催の日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

Summary

副甲状腺のう胞(上皮小体嚢胞)は血中副甲状腺ホルモン値が①上昇しない非機能性副甲状腺のう胞(副甲状腺細胞の単層配列につき腫瘍ではない)②過剰に分泌される機能性副甲状腺のう胞があり、発生や治療法が異なる。甲状腺のう胞と鑑別難なら穿刺(機能性副甲状腺のう胞高カルシウム(Ca)クリーゼの危険につき禁)①のう胞液は透明サラサラ(甲状腺のう胞は黄色い粘稠液)②のう胞液中の副甲状腺ホルモン(PTH)測定(FNA-PTH;インタクトPTHよりホールPTHが正確)。穿刺排液後の再貯留あり。側頸嚢胞は管が外耳道,口蓋扁桃,皮膚に開いている事も。穿刺液は濁。

Keywords

甲状腺のう胞,副甲状腺のう胞,側頸嚢胞,穿刺,非機能性副甲状腺のう胞,機能性副甲状腺のう胞,FNA-PTH,副甲状腺ホルモン,エコー,超音波

甲状腺のう胞と思っても実は副甲状腺のう胞

副甲状腺内に水溜まりができたものを、副甲状腺のう胞(あるいは上皮小体嚢胞)と呼びます。副甲状腺のう胞には、

  1. 血中副甲状腺ホルモン値の上昇を示さない非機能性副甲状腺のう胞
  2. 副甲状腺ホルモンが過剰に分泌される機能性副甲状腺のう胞

があり、それぞれ発生や治療法が異なります。

非機能性副甲状腺のう胞

そもそも副甲状腺は、胎生期に魚のえらに相当する鰓嚢が下垂し、甲状腺の背面に位置したものです。その下垂過程で管が残り非機能性副甲状腺のう胞になります。ほとんど症状はありません。内容液を穿刺・吸引し、内容液の副甲状腺ホルモン(インタクトPTH)やカルシウム濃度を測定すると診断が付き、かつそれが治療になります。

甲状腺内部にできる非機能性副甲状腺のう胞は、甲状腺のう胞との鑑別が難しい場合もあります。

機能性副甲状腺のう胞

副甲状腺腺腫副甲状腺副甲状腺過形成の内部で組織変性が起こり、嚢胞形成したものです。副甲状腺ホルモン(PTH)過剰産生により高カルシウム血症をおこします。(原発性副甲状腺機能亢進症

副甲状腺のう胞 超音波エコー画像

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 水平断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 水平断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 垂直断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 垂直断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 水平断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 水平断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 垂直断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 垂直断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 水平断)

巨大副甲状腺のう胞 (超音波エコー画像 水平断);鎖骨下動脈の高さまで進展し、穿刺排液が」必要

非機能性副甲状腺のう胞腺腫 超音波エコー画像

非機能性副甲状腺のう胞ですが、非機能性副甲状腺のう胞腺腫とも言えます。内部に無血流、等エコーの実質(組織)を認めるも血中カルシウム(Ca)、リン(P)、副甲状腺ホルモン(i-PTH)値は正常。

非機能性副甲状腺のう胞腺腫 超音波エコー画像 ドプラーモード

非機能性副甲状腺のう胞腺腫 超音波エコー画像 ドプラーモード

小型の副甲状腺のう胞

小型の副甲状腺のう胞 超音波エコー画像

バセドウ病アイソトープ治療後で萎縮した甲状腺 超音波エコー画像

バセドウ病アイソトープ治療後で萎縮した甲状腺。

バセドウ病アイソトープ治療後で萎縮した甲状腺の下方に非機能性副甲状腺のう胞

バセドウ病アイソトープ治療後で萎縮した甲状腺のはるか下方に非機能性副甲状腺のう胞。甲状腺は萎縮しても、副甲状腺の位置は変わらないので離れて見えます。

バセドウ病アイソトープ治療後で萎縮した甲状腺の下方に非機能性副甲状腺のう胞 ドプラーモード

バセドウ病アイソトープ治療後に萎縮した甲状腺の下方に非機能性副甲状腺のう胞 ドプラーモード。

FNA-PTH

副甲状腺のう胞が疑われる場合、甲状腺のう胞と鑑別が難しい場合には、のう胞を穿刺し、のう胞液を採取します(FNA-PTH)。

  1. 副甲状腺のう胞なら透明でサラサラの液が抜けます(甲状腺のう胞は黄色い粘稠な液)
  2. のう胞液中の副甲状腺ホルモン(PTH)を測定します(FNA-PTH)

[Endocr Metab Immune Disord Drug Targets. 2013 Dec;13(4):351-8.][J Assoc Physicians India. 1995 Nov;43(11):791.]

測定する副甲状腺ホルモン(PTH)はインタクトPTHとホールPTHがありますが、隈病院の工藤先生によるとホールPTHの方が正確に副甲状腺のう胞を診断できるとの事です。

副甲状腺のう胞

(下右:第15回隈病院甲状腺研究会より提供)

副甲状腺のう胞 穿刺液
FNA-PTH

機能性副甲状腺のう胞にFNA-PTHを行わない方が良い

機能性副甲状腺のう胞にFNA-PTHを行うと、高カルシウム(Ca)クリーゼをおこす危険があるため、よほど診断が付かない場合を除けば、止めた方が良いとの報告があります。[Chin Med J (Engl). 2010 Dec;123(24):3731-3.](第54回 日本甲状腺学会 P106 甲状腺嚢胞との鑑別が困難であった機能性副甲状腺嚢胞の一例)

一方で、11名の機能性副甲状腺のう胞にFNA-PTHを行ったが、特に何も起こらなかった報告もあります[Int J Endocrinol. 2018 Jul 15;2018:3745239.]。

副甲状腺のう胞でなく甲状腺のう胞腺腫だった

副甲状腺のう胞でなく甲状腺のう胞腺腫 超音波(エコー)画像

超音波(エコー)画像では副甲状腺のう胞甲状腺のう胞腺腫か分かりませんが、穿刺液は粘稠で、のう胞液中のPTH濃度は正常につき甲状腺のう胞腺腫でした。

副甲状腺のう胞でなく甲状腺のう胞腺腫 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

副甲状腺のう胞でなく甲状腺のう胞腺腫 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

副甲状腺のう胞でなく甲状腺のう胞腺腫

甲状腺の下極に位置し、ギリギリ甲状腺内か甲状腺外か分かりずらい。甲状腺外なら副甲状腺の可能性が高いが、穿刺液は赤褐色粘稠で、のう胞液内i-PTHは正常値。甲状腺のう胞腺腫でした。

副甲状腺のう胞でなく甲状腺のう胞腺腫 ドプラーモード

副甲状腺のう胞でなく甲状腺のう胞腺腫 超音波(エコー)画像 ドプラーモード

副甲状腺のう胞 病理組織

副甲状腺のう胞 単層配列

非機能性副甲状腺のう胞は副甲状腺細胞の単層配列につき、腫瘍ではありません。超音波エコー画像の矢印の部分が細胞層で、病理組織は以下の様になります。

副甲状腺のう胞 病理組織

非機能性副甲状腺のう胞 病理組織;非腫瘍性の副甲状腺細胞が単層に並んでいます。

副甲状腺のう胞穿刺排液後

副甲状腺のう胞を穿刺排液すれば、比較的簡単に、のう胞液は抜けます(サラサラで抜けやすい)。再貯留することが多いですが、穿刺排液前ほどの量は貯まりません(筆者が思うに、のう胞液が貯留するには年単位の時間が掛かるのでしょう)。

側頸嚢胞のことも・・・

側頸嚢胞とは、胎生期のえらの名残である鰓溝(さいこう)が残り、頸部に嚢胞ができたものです。溝のため嚢胞につながる管が外耳道や口蓋扁桃、下咽頭、皮膚表面に開いていることがあります。

側頸嚢胞は手術による切除が必要です。嚢胞の頻回の穿刺(せんし)(針で刺すこと)排液は細菌感染の可能性を高め、また、根治治療になりません。手術は、のどなどにつながる管を含めた嚢胞の完全摘出です。

側頸嚢胞 超音波(エコー)画像
側頸嚢胞 超音波(エコー)画像

側頸嚢胞 超音波(エコー)画像

内部のもろもろした物質は、粘稠なコロイド状の液体です。ドプラーモードで見ると血流はありません。

(Case Rep Surg. 2014;2014:801745.)

側頸嚢胞 超音波(エコー)画像

側頸嚢胞 超音波(エコー)画像

巨大側頸のう胞 超音波(エコー)画像2

巨大側頸のう胞 超音波(エコー)画像

巨大側頸のう胞 超音波(エコー)画像1

巨大側頸のう胞 超音波(エコー)画像

側頸嚢胞 穿刺液

側頸嚢胞の穿刺液は濁っていてます。

側頸嚢胞 細胞診

側頸嚢胞 細胞診は、のう胞液中に、多数の組織球(泡沫細胞)、リンパ球と一部扁平上皮を認めます。

側頸嚢胞の鑑別診断として、のう胞変性した甲状腺乳頭癌のリンパ節転移は重要です[J Laryngol Otol. 2001 Mar;115(3):240-2.][Ann Otol Rhinol Laryngol. 1983 Sep-Oct;92(5 Pt 1):521-4.]。

側頸嚢胞でなく、 のう胞変性した甲状腺乳頭癌のリンパ節再発 超音波(エコー)画像

側頸嚢胞でなく、 のう胞変性した甲状腺乳頭癌のリンパ節転移再発 超音波(エコー)画像;写真は鎖骨上窩で、かつ充実部分が優位のため、側頸嚢胞と間違えませんが・・・。

もっとも、甲状腺切除手術の既往が無いなら、甲状腺内部を見れば甲状腺乳頭癌の原発巣があるので一目瞭然です。

超音波(エコー)画像、穿刺細胞診ともに側頸嚢胞で矛盾なくても、摘出標本の病理組織診断では、嚢胞壁内と壁在結節に異形成に乏しい甲状腺濾胞の集簇を認め、頸部異所性のう胞型腺腫様結節だった報告があります。[日臨外会誌. 2014;75(11):2971-5.]

頸部異所性のう胞型腺腫様結節2

頸部異所性のう胞型腺腫様結節;矢印の石灰化を伴う充実部分から側頸嚢胞よりも、のう胞変性をおこした甲状腺乳頭癌リンパ節転移を疑います[日臨外会誌. 2014;75(11):2971-5.より改変]

頸部異所性のう胞型腺腫様結節1

頸部異所性のう胞型腺腫様結節[日臨外会誌. 2014;75(11):2971-5.より改変]

側頸嚢胞でなく、奇形嚢腫だった報告もあります。 胎生期に存在した前腸の遺残として、筋肉、軟骨、膵臓組織(外分泌・内分泌組織両方)を含んでいたそうです。[Histopathology. 1997 Oct;31(4):378-80.]

異所性甲状腺

異所性甲状腺 を御覧ください。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

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長崎甲状腺クリニック(大阪)


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