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高カルシウム血症は副甲状腺機能亢進症   [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺内分泌代謝等の長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、甲状腺学会で入手した知見を元にしています。

甲Joう君(高カルシウム血症は副甲状腺)

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Summary

原発性副甲状腺機能亢進症副甲状腺腺腫などが副甲状腺ホルモン(PTH)過剰産生、高カルシウム血症おこす。症状は骨そしょう症・病的骨折、高カルシウム血症による全身倦怠感、高血圧、不整脈、筋力低下、脱水、消化性潰瘍、膵炎/膵石、便秘、精神症状、腎結石・尿路結石・腎不全、胆石。超音波(エコー)検査・造影CT・99m-Tc MIBIシンチグラフィーで診断。ビタミンD 欠乏で原発性副甲状腺機能亢進症がマスクされる。生理食塩水大量輸液+利尿薬、ビスフォスフェート点滴など高カルシウム血症の治療、副甲状腺摘出術(PTX)、外科手術適応外はシナカルセト。

Keywords

原発性副甲状腺機能亢進症,副甲状腺腺腫,副甲状腺ホルモン,PTH,高カルシウム血症,検査,造影CT,99m-Tc MIBIシンチグラフィー,診断,シナカルセト

会社の検診、メタボ検診(市民検診)で見つからない副甲状腺の病気

会社の検診、メタボ検診(市民検診)で副甲状腺の病気が見つかる事は、ほとんどありません。血液検査に副甲状腺ホルモンが影響するカルシウム(Ca)、リン(P)の検査項目が入っていないからです。

例え、高カルシウム血症による高血圧、不整脈でも、生活習慣の乱れと診断されてしまいます。

唯一、見つかるとしたら尿検査で血尿が出て、腎結石・尿路結石が見つかり、その後の精密検査で高カルシウム血症から原発性副甲状腺機能亢進症が見つかります。ただし、尿検査で潜血を調べるのは一部の会社の検診のみで、メタボ検診(市民検診)には含まれません(尿糖・尿蛋白のみ)。

高カルシウム血症は副甲状腺

高カルシウム血症と副甲状腺

高カルシウム血症低カルシウム血症副甲状腺ホルモン(PTH)異常の可能性があります。副甲状腺は、人間の体で最も小さな臓器です。

副甲状腺

副甲状腺は、甲状腺の左右両葉の裏面の上下、計4個あります。

※ただし健康なひとでも10-15%は5個目の過剰副甲状腺があるとされます(Surgery of thyroid and parathyroid glands. 2nd edition.625.2013)。

長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ 甲Joう君

長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ Jo君 実は手足の部分は副甲状腺を意味します。

副甲状腺の役割

副甲状腺ホルモンは、骨・腎に作用して、血液中のカルシウム濃度を調節する働きをします。(図は第16回隈病院甲状腺研究会より提供)

副甲状腺の位置異常

副甲状腺の発生

副甲状腺の上2つは、第4咽頭嚢、下2つは、第3咽頭嚢から発生します。いずれも定位置に移動してくる過程で、止まってしまい、定位置を外れた場所に存在する場合があります。

副甲状腺の位置

定位置に無い場合、頚動脈近傍なら、超音波(エコー)検査で判りますが、胸腺内/縦隔内では後述のMIBI-SPECTでしか見つけられません。(図は第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

高カルシウム血症副甲状腺機能亢進症

副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰になると、カルシウムが骨から溶け出したり、腎臓から尿に捨てられず戻ってきたり、腸から吸収されたりして、血液中のカルシウム濃度が上昇します(原発性副甲状腺機能亢進症)。

原発性副甲状腺機能亢進症の頻度・男女比・好発年齢

原発性副甲状腺機能亢進症は、2万人に1人、男女比1:2、40-60代女性に多い病気です。

日本甲状腺学会で報告されている最年少の原発性副甲状腺機能亢進症は、16 歳、女性で、高カルシウム(Ca) 血症(16.3mg/dl)、低リン(P)血症(2.23mg/dl)、intact PTH上昇(1280pg/ml)、約20mm の副甲状腺腫だったとの事です。(第55回 日本甲状腺学会 P2-10-12 若年性副甲状腺機能亢進症の一例)

多発性内分泌腺腫症(MEN)の病変の一部としての発症(副甲状腺過形成)は、若年が多いです。

原発性副甲状腺機能亢進症の症状

原発性副甲状腺機能亢進症は、特に症状が無く、血液検査でカルシウム(Ca)値が高かったり、頚部超音波(エコー)検査で(甲状腺腫瘍と間違われて)発見される事が多いです

症状がある場は、

  1. 副甲状腺ホルモン(PTH)が骨を溶かすため、骨そしょう症になり、骨吸収部は線維組織に置き換わり(汎発性線維性骨炎)病的骨折しやすくなります。
    少し転んだだけで、簡単に骨折したりします。お年寄りなら分かりますが、若い人でこれなら、ただの骨そしょう症ではありません。
     
  2. 高カルシウム血症による
    全身倦怠感
    高血圧、不整脈
    筋力低下
    脱水(尿へのカルシウム排泄増加)(下記)
    消化性潰瘍(かいよう)、膵炎/膵石、便秘(下記)
    いらいらなど精神症状、思考力・集中力の低下、頭痛、中枢神経にダメージを与え記憶障害や傾眠(下記)
     
  3. 過剰な血清カルシウムが腎結石・尿路結石になり、腎不全(下記)
     
  4. 過剰な血清カルシウムが胆石・総胆管結石になる(下記)

をきたします。

高カルシウム血症と脱水

尿へのカルシウム排泄増加で脱水になり、常に喉が渇くためペットボトルを離せない。甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも、発汗過多と高カルシウム血症による脱水がおこり、鑑別必要です。また、多飲・多尿で糖尿病、尿崩症 とも鑑別必要です。

高カルシウム血症と腎結石・尿路結石

原発性副甲状腺機能亢進症の約4%に、高カルシウム血症による腎結石・尿路結石を認めます(日本臨床30:828~837,1972)。再発性あるいは多発性尿路結石患者の12.6%が原発性副甲状腺機能亢進症とされます(泌尿器科紀要 (1984), 30(7): 975-979)。

原発性副甲状腺機能亢進症の腎結石・尿路結石はリン酸カルシウム結石です。

高カルシウム血症と消化器症状

便秘

高カルシウム血症では神経細胞のナトリウムチャンネルが阻害され、信号を伝える脱分極が起こりにくくなります。胃腸を動かす神経の活動が低下するため、胃腸の収縮が低下し便秘します

消化性潰瘍

高カルシウム血症では、幽門線のG細胞のカルシウム受容体が刺激され、ガストリン(胃酸分泌作用のある消化管ホルモン)の分泌が促進されます。結果、胃酸分泌が高まり、胃潰瘍が好発します。

膵炎, 膵石症

原発性副甲状腺機能亢進症の1.1〜1.5%に膵炎合併します(JAMA 1980;243:246-7)。高カルシウム血症が急性膵炎を引き起こす機序は不明ですが

  1. トリプシノーゲンがトリプシンに活性化され膵の自己消化を引き起こす(Am J Med 1960;29:424-33)
  2. 膵実質や膵管に石灰沈着おこし膵管が閉塞(Ann Surg 1957;145:857-63)
  3. 原発性副甲状腺機能亢進症でのSPINK1 trypsin inhibitor (N34S)遺伝因子の関与(Am J Gastroenterol 2008;103:368-74)

が考えられています。

膵石は膵管内に形成された石(結石)で、慢性膵炎の約40%にみられます。膵石の主成分は炭酸カルシウムです。膵石は膵液の流れを妨げ、慢性膵炎を増悪させます。

胆石・総胆管結石

胆石 ・総胆管結石も原発性副甲状腺機能亢進症の合併症との報告があります。原発性副甲状腺機能亢進症の約25%に胆石症を認めるとの報告が多いです。胆汁中のカルシウム濃度の上昇がカルシウム結石形成に関与するとされます(Arch Surg 105: 369-374, 1972)。

高カルシウム血症と精神神経症状、中枢神経症状

高カルシウム血症による精神神経症状、中枢神経症状は、いらいらなど精神症状、思考力・集中力の低下、頭痛、中枢神経にダメージを与え記憶障害や傾眠(日に日に睡眠時間が長くなる、昼間でも眠い)。

脱水がひどくなり(水分を失って血が濃くなり)、血中カルシウム濃度が急上昇すると、急に意識を失い倒れる事があります。

副甲状腺機能亢進症診断

副甲状腺機能亢進症の診断。副甲状腺ホルモン(PTH)測定①インタクトPTHは最も高感度だが不安定。腎機能悪いと実際より低値、PTH活性を反映しない②ホールPTH(全長PTH)は腎機能に影響されず、ホルモン活性を持つ完全体のPTHのみ測定する。副甲状腺超音波(エコー)検査で副甲状腺腫瘍の位置を特定。造影CT、99m-Tc MIBIシンチグラフィー, 99m-Tc MIBI-SPECTで再確認、また、縦隔内、食道背側、喉頭背側の異所性副甲状腺腫に有用。甲状腺内で甲状腺腫瘍と区別できない時、穿刺細胞診(salt and pepper状クロマチン核の神経内分泌細胞)と針先洗浄液でPTH測定(FNA-PTH)。

副甲状腺機能亢進症,診断,副甲状腺ホルモン,インタクトPTH,ホールPTH,超音波,検査,副甲状腺腫,造影CT,MIBIシンチグラフィー

副甲状腺ホルモン(PTH)測定

副甲状腺ホルモン(PTH)測定
インタクトPTH:かつて主流でした。最も高感度だが、不安定で、分解され易いです。腎機能が悪い方は、実際より低い値になります(偽低値)。1~6番目のアミノ酸が欠けたホルモン活性を持たないPTHも同時に測定しているため、副甲状腺ホルモン(PTH)活性を反映しません。
ホールPTH(全長PTH):腎機能に影響されません。ホルモン活性を持つ完全体のPTH(1~84番目のアミノ酸が1つも欠けていない全長PTH)のみを測定する点が、インタクトPTHと異なります。いわば、生物活性型PTHです。

副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP):悪性腫瘍(甲状腺未分化癌、肺癌,食道癌,口腔・頭頸部癌,子宮内膜癌/卵巣明細胞癌(PTHrP産生明細胞癌),乳癌,膵癌,肝細胞癌,腎癌,膀胱癌,成人T細胞性白血病,悪性リンパ腫など)から分泌される副甲状腺ホルモン(PTH)の類似体で、骨吸収サイトカインIL-1, IL-6, TNF-alphaとともに高カルシウム(Ca)血症をおこします。

ホールPTHとインタクトPTH

ホールPTHは生理活性型PTHで、PTHの作用そのものを反映します。

副甲状腺超音波(エコー)検査

(➸)原因となる副甲状腺腺腫、副甲状腺癌、副甲状腺過形成デジタルハイビジョン超音波診断装置で診断。エコーでは、甲状腺とのインピーダンスの違いにより、甲状腺-副甲状腺境界部に線状高エコーが生じます(右図の↓)。内部は中心血流を認め、リンパ節でないのが分かります。

副甲状腺腺腫 超音波(エコー)画像
副甲状腺腺腫 超音波(エコー)画像
離れた位置の副甲状腺腺腫 超音波(エコー)画像

離れた位置の副甲状腺腺腫 超音波(エコー)画像;定位置より外れた所にある事も

離れた位置の副甲状腺腺腫(ドプラー)

離れた位置の副甲状腺腺腫(ドプラー)

超音波(エコー)検査で見つからない副甲状腺

超音波(エコー)検査で見つからない副甲状腺は、

  1. 縦隔内
  2. 食道背側
  3. 喉頭背側

に存在する場合です。

副甲状腺造影CT, 99m-Tc MIBIシンチグラフィー, 99m-Tc MIBI-SPECT

副甲状腺腫瘍 造影CT画像

造影CTで副甲状腺腫瘍の位置を再確認します。

99m-Tc MIBIシンチグラフィー, 99m-Tc MIBI-SPECTで99m-Tc MIBIを取り込めば副甲状腺腫瘍と診断できます。

原発性副甲状腺機能亢進症手術症例の2.6-6.8%は、定位置にない異所性副甲状腺腫です。縦隔などエコーが届かない場所にある異所性副甲状腺腫に、造影CT, 99m-Tc MIBI-SPECTは有用です。

[長崎甲状腺クリニック(大阪)では大阪市立大学医学部附属病院 代謝内分泌内科に依頼します]

99m-Tc MIBIシンチグラフィー

FNA-PTH

穿刺細胞診:甲状腺の中にあり、どうしても甲状腺腫瘍と区別できない時、穿刺細胞診と針先洗浄液でPTHを測定(FNA-PTH)。カットオフ値はintactPTH>103pg/mlで、感度・特異度ともに100%です。(Eur J Endocrinol. 2012 Dec 10;168(1):49-58.)

FNA-PTH

ただし、副甲状腺は被膜が破れやすく針に沿った副甲状腺細胞のばらまき・出血があるので最後の手段です。特に副甲状腺癌は播種しやすく、針に沿って癌細胞をばらまく危険あるため禁忌。(ただし米国のメイヨークリニックはじめ、イタリア、ポルトガルなどFNA-PTHの統計を報告していますが、実際に播種した例は1例もないようです。出血の危険は、甲状腺腫瘍と同じです[Endocrine Practice 07/2012; 18(4):441-9.])

隈病院では、FNA-PTHを多数おこなっているものの、甲状腺の中にある/甲状腺に接している副甲状腺腫は、甲状腺組織がバリケードになり、播種しないとの事でした(隈病院の第15回隈病院甲状腺研究会)。図は、セミナー時、隈病院の工藤 工 (くどう たくみ)先生が提示されたものです。

測定する副甲状腺ホルモン(PTH)インタクトPTHホールPTHがありますが、隈病院の工藤先生によるとどちらでも良いようです(副甲状腺のう胞はホールPTHの方がよいとの事です)。

甲状腺内副甲状腺腫

原発性副甲状腺機能亢進症で、異所性副甲状腺腫は6.8%です(日臨外会誌 2002;63:2353―2357)。咽頭後・食道背側・甲状腺内・頸動脈下・前または後縦隔内・大動脈弓/心臓周囲など、どこも可能性がある(日臨 1995;53: 920―924) 。

甲状腺内副甲状腺腫は、超音波(エコー)検査で甲状腺腫瘍と形態的に区別できません。99m-Tc MIBIシンチグラフィーで99m-Tc MIBIを取り込めば甲状腺内副甲状腺腫と診断できます。I-123 MIBIを取り込まない甲状腺内副甲状腺腫もあり、穿刺細胞診と針先洗浄液でインタクトPTHを測定(FNA-PTH)。甲状腺内副甲状腺腫は、甲状腺が周囲にあるため、針に沿った副甲状腺細胞のばらまき・出血の危険が少なくなります。(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺内副甲状腺腫に穿刺細胞診おこなった場合、索状配列で、甲状腺髄様癌のようなsalt and pepper状クロマチンの核を持つ神経内分泌細胞を認めます。免疫染色すると甲状腺由来のTTF-1陰性、副甲状腺由来のクロモグラニンA陽性です。

副甲状腺腺腫は、神経内分泌細胞なので紡錘形細胞を認めます。

副甲状腺腺腫は、salt and pepper状クロマチンの核を持つ神経内分泌細胞です。

副甲状腺腺腫は、クロモグラニンAで染色されます。

腺腫様甲状腺腫に合併する甲状腺内副甲状腺腫

腺腫様甲状腺腫に合併する甲状腺内副甲状腺腫は、腺腫様結節と区別が難しいだけでなく、多腺性(5-6腺)の事あります。

(第55回 日本甲状腺学会 P2-09-10 バセドウ病と甲状腺内副甲状腺腫を合併した1 例)

縦隔内異所性副甲状腺腺腫

縦隔内異所性副甲状腺腺腫は、原発性副甲状腺機能亢進症の約2%(内分泌外科 1999; 16:273―277)で、頚部超音波(エコー)検査で見つかりません。胸部造影CT, 99m-Tc MIBIシンチグラフィー/99m-Tc MIBI-SPECTが有用です。見つかれば、胸腔鏡下縦隔腫瘍摘除術を行いますが、、胸腺組織や脂肪織に埋没しているため、術中に探すのが難しい事があるようです。

(写真;Head Neck. Author manuscript; available in PMC 2015 Jun 1.より改変)

縦隔内異所性副甲状腺腺腫 99m-Tc MIBIシンチグラフィー

高カルシウム血症の治療

急性期の高カルシウム血症の治療

  1. 生理食塩水大量輸液+ループ利尿薬(尿量2L/日, 最初の2日は3-4L/日)
     
  2. カルシトニン皮下注射
    即効性があり数時間でカルシウム低下
    1日2回、静注または筋注
    1-2週間でエスケープ現象おこし効かなくなる
     
  3. ビスフォスフェート点滴(ゾメタ®、アレディア®)
    24-72時間でカルシウム低下、1週間効果持続
    急速静注で急性尿細管壊死おこすため緩徐に点滴する
    発熱・頭痛・全身倦怠感おこす事ある
    治療により低リン血症が増悪する事多く、血中リン濃度が2mg/dl以下になると致命的な臓器障害がおこります。静脈用リン製剤を投与すると肺などに石灰化がおこり致命的になるので要注意
    繰り返しの治療で顎骨壊死症候群(骨髄炎の治癒が遷延したような病理組織像。糖尿病/肥満、喫煙/飲酒、口腔内の不衛生さ、悪性腫瘍の治療が危険因子。)

    経口ビスフォスフェートは、ほとんどカルシウム下がらない。
     
  4. 血液透析
    血中カルシウム濃度が16mg/dl以上で
    腎不全がある場合
    治療しても血中カルシウム濃度が下がらない場合

慢性期の高カルシウム血症の治療

シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)

シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)は、副甲状腺細胞上のカルシウム感知受容体(CASR)を活性化、カルシウム感受性 を増強します。結果、副甲状腺ホルモン分泌と血清カルシウム値を低下させます(理論上はそうですが、実際は異なります)。

カルシウム受容体作動薬シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)が、

  1. 副甲状腺癌
  2. 副甲状腺摘出術不能(主に高齢者、どうしても副甲状腺の位置が同定できない場合、患者が手術に同意しない場合)
  3. 術後再発の発性副甲状腺機能亢進症

高カルシウム血症に保険適応が認められました。

しかし、治療効果は副甲状腺摘出術(PTX)に比べれば劣ります(Ann Surg 255 : 981-985, 2012)。シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)は、

  1. Caは下がる。しかし、正常化する患者は70.6%のみ。
  2. 腰椎骨密度(BMD)改善する事多い;副甲状腺摘出(PTX)群で82.4%の患者が改善するが、シナカルセト群では70.6%。
  3. 大腿骨頸部骨密度(BMD)は変化しない事多い;副甲状腺摘出(PTX)群で58.8%の患者が改善するが、シナカルセト群では18.8%。
  4. 副甲状腺ホルモン(PTH)は65%が正常化しないす。副甲状腺摘出(PTX)群で76%の患者が正常化するが、シナカルセト群では35%。

たとえCaが下がるだけでも、高カルシウム(Ca)血症が死因となる副甲状腺癌の再発には非常に有用な治療です。

また、シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)だけでは不十分な場合、骨粗しょう症治療薬でCaが低下するビスホスホネート剤、デノスマブ、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)の併用も有効です。

胃酸分泌抑制薬、H2 ブロッカー(シメチジン、、ファモチジン(ガスター®))

シメチジンは、原発性副甲状腺機能亢進症の血清カルシウムと副甲状腺ホルモン(PTH)レベルを低下させるとされます。(否定的な報告もあります)。様々な報告を見ると、全ての原発性副甲状腺機能亢進症患者に有効では無いが、血清カルシウムが有意に低下する人は存在します(割合は不明ですが)。(Br J Clin Pharmacol. 1982 Nov; 14(5): 701–705.)

また、透析中の2次性副甲状腺機能亢進症(異所性石灰着症)、石灰着性腱板炎にも有効との報告があります。(Proc Eur Dial Transplant Assoc. 1981;18:642-7.)

H2 ブロッカーがカルシウム代謝、石灰化に影響する機序は不明ですが、

  1. 副甲状腺細胞に存在する H2 受容体(ヒスタミン受容体)に作用し、副甲状腺ホルモン(PTH)分泌を抑制する(J Clin Endocrinol Metab. 1981 Jan;52(1):122-7.)
  2. 骨格筋内の血管に存在する H2 受容体に直接作用する

などが考えられます。

副甲状腺腺腫副甲状腺癌副甲状腺過形成自体の治療

副甲状腺腺腫、副甲状腺癌、副甲状腺過形成手術

現行のアメリカのガイドライン(2013年)では、

  1. 血中カルシウム濃度が、正常の上限より1.0mg/dlを超える、
  2. 骨量が、一定レベル以上低下
    椎体骨折
  3. 腎機能の数値であるeGFRが60ml/min未満
    尿Ca ≧400mg/日
  4. 腎臓結石/石灰沈着
  5. 年齢が50歳未満

に一つでも該当すれば無症候性(自覚症状がない)であっても副甲状腺摘出術(PTX)が推奨されます(Endocrine 39 : 199-204, 2011)。

原発性副甲状腺機能亢進症 手術基準

血清Ca値
正常化率

副甲状腺ホルモン
(PTH)
正常化率
大腿骨密度改善率
(Femur BMD)
脊椎骨密度改善率
(Spine BMD)
シナカルセト 70.6% 35% 18.8% 70.6%
副甲状腺摘出術(PTX) 100%  76% 58.8% 82.4%

副甲状腺癌

副甲状腺癌は原発性副甲状腺機能亢進症の0.3~5.6%で、一部に癌抑制遺伝子HRPT2変異(副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群の事も)。副甲状腺癌は高度の高カルシウム血症と骨脆弱性、腎不全の可能性高い。副甲状腺癌はエコーで副甲状腺腺腫と異なり球形に近い。穿刺吸引細胞診は被膜を破ると穿刺経路に癌細胞がばらまかれ(播種)禁忌。治療は、局所再発が多いため、副甲状腺癌が疑われる場合、周囲組織を含めたen bloc(ひと塊)外科切除術。頚部局所再発、遠隔転移巣は可能な限り外科切除。切除しきれず血清カルシウム下げられない場合、シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)投与。

副甲状腺癌,原発性副甲状腺機能亢進症,HRPT2変異,副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群,高カルシウム血症,腎不全,エコー,再発,診断,治療

副甲状腺癌とは

副甲状腺癌は、原発性副甲状腺機能亢進症の0.3~5.6%を占め、一部には癌抑制遺伝子であるHRPT2遺伝子の変異が認められます。(N Engl J Med 349: 1722-1729, 2003)

副甲状腺癌では、高度の高カルシウム血症と骨脆弱性、腎不全をおこす可能性高く、腎不全も高度なら高カルシウム血症に(低リン血症ではなく)高リン血症伴います。あたかもビタミンD中毒のようです。(Surgery 101: 649-660, 1987)

多量の輸液(3l/日)、血液透析、シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)、カルシトニン皮下注射、ビスフォスフェート点滴おこないます。

副甲状腺癌 超音波(エコー)画像

副甲状腺癌の診断

副甲状腺癌は、エコーでは、副甲状腺腺腫と異なり球形に近い(D/W 比が1以上)いびつな形です。穿刺吸引細胞診は、被膜を破ると、穿刺経路に癌細胞がばらまかれる(播種)ため禁忌です。そのため、術前に確定診断ができません。術後の病理標本の免疫組織染色で①parafibromin、E-cadherin発現消失(Cancer 115:334-344, 2009)(Eur J Endocrinol 160:695-703, 2009)  ②Ki-67 index 5%以上(Hum Pathol 26:135-138, 1995)が有用とされます。

副甲状腺癌  超音波(エコー)画像

副甲状腺癌  超音波(エコー)画像

副甲状腺癌 超音波(エコー)ドプラー

副甲状腺癌 超音波(エコー)ドプラー

副甲状腺癌の治療

副甲状腺癌の治療は、

  1. 副甲状腺癌は局所再発が多いため、疑われる場合)周囲の組織を含めたen bloc(ひと塊)の外科切除術
  2. 頚部局所再発、遠隔転移巣は可能な限り外科切除
  3. 切除しきれず、血清カルシウムを下げられない場合、シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)投与

副甲状腺癌の再発

副甲状腺癌

  1. 局所再発が多い
  2. 遠隔再発は、肺・肝・骨転移が多い(World J Surg 18:594-601, 1994)。 

副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群(Hyperparathyroidism-jaw tumor syndrome:HPT-JT症候群)

副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群(Hyperparathyroidism-jaw tumor syndrome:HPT-JT症候群)は、癌抑制遺伝子であるHRPT2遺伝子の変異が原因とされます(Nat Genet 32: 676-680, 2002)

ビタミンD 欠乏でマスクされる原発性副甲状腺機能亢進症

ビタミンD欠乏があると、尿中のCa 排泄(報告例ではCca/Ccr= 0.004)は有意に低下し、家族性低Ca 尿性高Ca 血症(FHH)と同じ所見になります(J Clin Endocrinol Metab 94: 340-350, 2009)。原発性副甲状腺機能亢進症と違う点は、家族性低Ca 尿性高Ca 血症(FHH)は基本的に骨量減少おこさない事ですが、例外もあり、年齢と共にPTHが上昇し、骨量減少や意識障害をおこす症例も報告されています。

いずれにせよ、骨量減少を食い止めるため、腫大した副甲状腺を見つけて摘出するか、手術不能例にはシナカルセト塩酸塩(レグパラ®)を投与する必要があります。

副甲状腺腺腫のように見えるも、実はただのリンパ節・異所性甲状腺

リンパ節 超音波(エコー)画像

副甲状腺腺腫と同じ位置(写真では右甲状腺の下極)にあり、副甲状腺腺腫のように見えるも、実はただのリンパ節です。

副甲状腺腺腫との違いは、リンパ節では

  1. 内部血流が無く
  2. リンパ門が存在します(ここだけ血流があります)

副甲状腺腺腫と同じ位置(写真では右甲状腺の下極)にあり、副甲状腺腺腫のように見えるも、実は異所性甲状腺です。

副甲状腺腺腫との違いは、異所性甲状腺では

  1. 内部血流が甲状腺組織と同じ
  2. 内部の形状が甲状腺組織と同じ

です。

異所性甲状腺 超音波(エコー)画像

異所性甲状腺 超音波(エコー)画像

異所性甲状腺 超音波(エコー)画像 ドプラー

異所性甲状腺 超音波(エコー)画像 ドプラー

原発性副甲状腺機能亢進症甲状腺機能亢進症が合併、クッシング症候群先端巨大症までも!?マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群

副甲状腺ホルモンが逆説的に骨形成を促進?

副甲状腺ホルモンアナログ製剤により骨形成マーカー血清I型プロコラーゲン‐N‐プロペプチド(PINP)が著明に上昇。骨形成過程で、PINPが切除され成熟型のI型コラーゲンが形成されます。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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