家族性/後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症・薬剤性[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌病態内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。高カルシウム血症の診療は行っておりません。
Summary
①常染色体優性遺伝による副甲状腺・腎尿細管のカルシウム感受性受容体(Caセンサー:CaSR)遺伝子異常の家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、②後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症はCaSRに対する自己抗体。共に原発性副甲状腺機能亢進症と同じく副甲状腺ホルモン(PTH)上昇するが、Ca排泄FEca≦0.01と低い。シナカルセト塩酸塩(レグパラ®)有効との報告も。骨粗しょう症に対する安易なビタミンD製剤の使用で医原性ビタミンD中毒、薬剤性高カルシウム血症(サイアザイド利尿薬・テオフィリン製剤・ビタミンA製剤・炭酸リチウムなど)が作り出される。
Keywords
カルシウム感知受容体,家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症,ビタミンD中毒,高カルシウム血症,カルシウム,甲状腺,副甲状腺,悪性リンパ腫,副甲状腺機能亢進症,CaSR
家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症とは
家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症は、常染色体優性遺伝によるカルシウム感受性受容体(Caセンサー:CaSR)遺伝子の異常で起こります。副甲状腺や腎尿細管のカルシウム感受性受容体(Caセンサー)のカルシウムの感知が鈍いため、血中のカルシウムが上昇しても反応せず、尿中へ捨てられるカルシウムも減ります。カルシウムが高ければ分泌が抑制されるべき副甲状腺ホルモン(PTH)も、カルシウムを感知できずに上昇し、あたかも原発性副甲状腺機能亢進症のようになります。
尿Ca/クレアチニン比 測定(原発性副甲状腺機能亢進症では上昇します)
Ca排泄率 FEca=(尿Ca/クレアチニン比)/(血Ca/クレアチニン比) (正常は0.01~0.02)
≦0.01 家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症
0.01~0.06 原発性副甲状腺機能亢進症
≧0.06 HHM(悪性腫瘍に伴う高Ca血症)
甲状腺機能亢進症/バセドウ病が合併
家族性低Ca尿性高Ca 血症(FHH)に甲状腺機能亢進症/バセドウ病が混在した家系が報告されています。甲状腺機能亢進症/バセドウ病でメルカゾール治療後、甲状腺機能が正常化しても高Ca血症が持続するため精査したら家族性低Ca尿性高Ca 血症(FHH)だったそうです。患者本人(27 歳、女性)と母親にCys437Tyrの新規Ca 感受性受容体(CASR)遺伝子の変異を認めたとの事です。(第56回 日本甲状腺学会 P2-043 新規Ca 感受性遺伝子(CASR)の変異による家族性低Ca尿性高Ca 血症(FHH)にビタミンD 欠乏、バセドウ病が混在した1 家系)
後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症は、副甲状腺・腎尿細管のカルシウム感受性受容体(Caセンサー:CaSR)に対する自己抗体が原因。高カルシウム血症が原因なのに、
- 副甲状腺のPTH分泌が抑制されない
- 腎のカルシウム排泄が促進されない
家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症との鑑別は
- 抗CaSR抗体の検出(測定できる医療機関は、ほぼ皆無です)
- 後天性なので以前は正常Caだった
後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症の治療は
- 高カルシウム血症の治療
- 副腎皮質ステロイドホルモン剤
骨粗しょう症に対する安易なビタミンD製剤の使用で、医原性(医療処置が原因の)ビタミンD中毒、薬剤性高カルシウム血症が作り出されています。
尋常性乾癬・掌蹠膿疱症で使用するビタミンD軟こうの長期使用によるビタミンD中毒(高カルシウム血症・高リン血症)が報告されています。
小児のカルシウム基準値は5歳くらいで成人値です。最近、カルシウム・ビタミンDを強化した乳製品を大人以上に食べ続け、ビタミンD中毒(高カルシウム血症・高リン血症)になる小児が長崎甲状腺クリニック(大阪)でも見られます。
薬剤性高カルシウム血症をおこす薬剤は、前述のビタミンD製剤の他に
- サイアザイド利尿薬:尿中へのカルシウム排泄低下、高尿酸血症・高血糖も起こします
- テオフィリン製剤:高尿酸血症も起こします
- ビタミンA製剤:ビタミンA中毒
- 炭酸リチウム(リーマス®):長期服用で副甲状腺がPTH自律性分泌能を獲得。原発性副甲状腺機能亢進症と区別できません。甲状腺機能低下症・無痛性甲状腺炎、SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)も起こします
皮膚石灰沈着症は関節の伸側、屈側、臀部などが赤く腫れるが痛みも痒みも無い。白く硬いぶつぶつができる。種類は①転移性石灰沈着症;血清カルシウム(Ca)またはリン(P)濃度上昇により組織にカルシウムが沈着。原因は高カルシウム血症:原発性副甲状腺機能亢進症、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症、サルコイドーシス、ビタミンD中毒、薬剤性高カルシウム血症、牛乳・アルカリの摂取過剰、腫瘍随伴体液性高カルシウム血症(HHM)・局所性骨溶解性高カルシウム血症、高リン血症;慢性腎臓病②代謝性(栄養障害性)石灰沈着症③医原性石灰沈着症。
皮膚石灰沈着症,転移性石灰沈着症,カルシウム,リン,高カルシウム血症,原発性副甲状腺機能亢進症,高リン血症,慢性腎臓病,代謝性石灰沈着症,医原性石灰沈着症
「転移性石灰沈着症」は、血清カルシウム(Ca)またはリン(P)濃度の上昇に伴い、組織にカルシウムが沈着する病態です。原因として、
- 高カルシウム血症;原発性副甲状腺機能亢進症、高カルシウム血症:家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、後天性低カルシウム尿性高カルシウム血症、サルコイドーシス、ビタミンD中毒、薬剤性高カルシウム血症、牛乳・アルカリの摂取過剰、腫瘍随伴体液性高カルシウム血症(HHM)・局所性骨溶解性高カルシウム血症
- 高リン血症;慢性腎臓病
代謝性(栄養障害性)石灰沈着症は、血清カルシウム、リン濃度は正常。膠原病、シェーグレン症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎などによる組織障害が原因です (AJR 124: 358-364,1975)。
医原性石灰沈着症は、カルシウムを含む注射剤を
- 不眠のため塩酸ジフェンヒドラミン・臭化カルシウムを10年以上、皮下や筋肉内に自己注射(皮膚の科学 2003 2(6) 518-521)
- ハンセン病患者の痛みに対して, スルピリンを10年以上、皮下注射(IRYO 1992 46(6) 463~468)
保存的加療が優先されるが、増大傾向、疼痛・潰瘍・感染などの場合は外科的切除が必要になる事もあります(日臨外会誌 76(12),3079-3082,2015)。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,浪速区,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区も近く。