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膵内分泌腫瘍[ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ:ゾリンジャー・エリソン症候群),グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)、VIP産生腫瘍(ビポーマ)]

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内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)

膵内分泌腫瘍(ガストリノーマ)

甲状腺専門内分泌代謝長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等において学術目的で使用可能なもの(Creative Commons License)、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。膵内分泌腫瘍の診療を行っておりません。

Summary

膵内分泌腫瘍はインスリン産生腫瘍(インスリノーマ)ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)VIP産生腫瘍(VIPoma,ビポーマ)など。インスリノーマ以外は約50%が悪性。多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)の60%に膵内分泌腫瘍・消化管内分泌腫瘍。ガストリノーマによるZollinger-Ellison症候群(ゾリンジャー・エリソン症候群)は難治性・多発性胃/十二指腸潰瘍、グルカゴノーマ糖尿病・体重減少・アミノ酸欠乏、ビポーマは水溶性下痢・低カリウム血症・無酸症(WDHA症候群)。手術不能ならソマトスタチンアナログ。

Keywords

膵内分泌腫瘍,ソマトスタチンアナログ,ガストリノーマ,ゾリンジャー・エリソン症候群,グルカゴノーマ,ビポーマ,多発性内分泌腺腫症,VIP産生腫瘍,WDHA症候群,甲状腺

意外と多い膵内分泌腫瘍

膵内分泌腫瘍とは

膵内分泌腫瘍は

  1. 剖検例の10%に見られる
  2. 非機能性腫瘍が50%
  3. インスリノーマが最も多い。多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)ではガストリノーマが最多(ガストリノーマ40%, インスリノーマ10%)
  4. 多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)では60%に膵内分泌腫瘍・消化管内分泌腫瘍
  5. インスリノーマ以外では約50%が悪性

遺伝子異常はMEN1, DAXX/ATRX, mTORがあり、mTOR 阻害薬、腎臓癌(腎細胞癌)にも適応がある分子標的薬スニチニブ, エベロリムスが有効です。

インスリン産生腫瘍(インスリノーマ)

もっとも頻度の高いインスリン産生腫瘍(インスリノーマ)は、 低血糖症 を御覧ください。

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)[Zollinger-Ellison症候群(ゾリンジャー・エリソン症候群)]

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)とは

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)の好発部位

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)の好発部位

十二指腸球部のガストリノーマ

十二指腸球部のガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)[Zollinger-Ellison症候群(ゾリンジャー・エリソン症候群)]は、インスリノーマに次いで多い膵島腫瘍です。ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)の約15-35%は多発性内分泌腺腫症1型(MEN1) と関連しています。

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)は膵臓だけでなく、十二指腸などにも多発することがあります。胃十二指腸に発生したガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)は、消化管粘膜下腫瘍の形態になります。

Zollinger-Ellison症候群(ゾリンジャー=エリソン症候群)

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)は消化性潰瘍患者の約1%を占め、ガストリン (胃酸分泌作用を持つ消化管ホルモン) を産生するため、治療抵抗性の難治性・多発性消化性潰瘍を来します[Zollinger-Ellison症候群(ゾリンジャー・エリソン症候群)]。

Zollinger-Ellison症候群(ゾリンジャー・エリソン症候群)の症状は、

  1. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍の症状:腹痛、胸やけ、それらが無くて繰返す嘔吐・下痢だけの事も
  2. 吐血(血を吐くこと)・消化管穿孔(胃腸の壁がに穴が開くこと)をおこしやすい
  3. 十二指腸潰瘍を繰り返すと、消化管壁の線維化により、食べ物が通過できなくなっつて腸閉塞をおこす事も

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)の約50%は悪性で、リンパ節転移が多いです。

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)の診断

腹部造影CTでは、

  1. びまん性の胃壁肥厚
  2. 早期相で強い造影効果を示す結節(血管が豊富なため、膵実質よりも強い造影効果)

MRIでは、T1強調像で低信号、T2強調像で高信号

を認めます。

超音波内視鏡下穿刺吸引法で胃を介して組織を採取すれば、膵内分泌腫瘍なのが分かります(ただし、どのホルモンを産生する腫瘍かまで分かりません)

ソマトスタチン受容体シンチグラフィーのオクトレオチドシンチグラフィ(オクトレオスキャン®)を行うと、腹部造影CTで確認された結節に集積を認めます。しかし、

  1. 微小なガストリノーマでは局在診断が困難な事がある
  2. 低分化型ガストリノーマでは集積が低い(その場合、FDG-PETの集積は強い)

最終手段は、選択的動脈内刺激薬注入法(SASI test)。

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)の治療

手術療法

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)の位置が確認できれば、手術による摘出。

プロトンポンプ阻害剤(PPI)

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)の位置が同定できない場合、プロトンポンプ阻害剤(PPI)を用いて胃酸の分泌を抑える。

ソマトスタチンアナログ

ガストリン産生腫瘍(ガストリノーマ)が手術で切除しきれない場合、手術不能な場合、ソマトスタチンアナログのオクトレオチド酢酸塩注射液(サンドスタチン)やソマチュリン皮下注(ランレオチド酢酸塩)が有効。

オクトレオチド酢酸塩注射液(サンドスタチン)

  1. 消化管ホルモン産生腫瘍(VIP産生腫瘍カルチノイド症候群をおこすカルチノイド腫瘍ガストリン産生腫瘍
  2. 先端巨大症(成長ホルモン産生下垂体神経内分泌腫瘍)・下垂体性巨人症

に保険適応が認められています。保険適応外ですが、甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生下垂体腫瘍プロラクチン産生下垂体腺腫にも有効です。

副作用として、下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生細胞をソマトスタチンアナログが抑制するため、中枢性(下垂体性)甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。

ソマチュリン皮下注(ランレオチド酢酸塩)は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)産生下垂体腫瘍にも適応があります。

mTOR阻害薬(抗がん剤)

腫瘍内で活性化し、細胞増殖に関わるPI3K-Akt-mTOR 経路を阻害する mTOR阻害剤エベロリムス(アフィニトール®)の保険適応が認められています。ホルモン症状を抑えるのでなく、がん細胞の増殖、腫瘍の増大を抑える目的で使用します。

mTOR阻害剤エベロリムス(アフィニトール®)は、

  1. 根治切除不能又は転移性の腎細胞癌
  2. 神経内分泌腫瘍(膵内分泌腫瘍すべて含む)
  3. 手術不能又は再発乳癌
  4. 結節性硬化症

に保険適応があります。

スーテント®(スニチニブ)

分子標的薬スーテント®(スニチニブ)は、ホルモン症状を抑えるためでなく、がん細胞の増殖、腫瘍の増大を抑える目的で使用されます。

スーテント®(スニチニブ)は、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌に対して、4週間内服後2週間休薬ですが、膵神経内分泌腫瘍には連日投与となります。

グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)と糖尿病

グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)は、比較的まれ(約5%)な膵内分泌腫瘍です。ランゲルハンス島のアルファ細胞から発生し、グルカゴン(血糖を上昇させるホルモン)を過剰に分泌します。

グルカゴノーマ 壊死性遊走性紅斑

グルカゴンはアミノ酸の酸化や糖新生の作用があるため、

  1. 糖尿病(50%)、体重減少(65%)
     
  2. アミノ酸欠乏などによる壊死性遊走性紅斑(70%)、口内炎、舌炎、口角症、正球性貧血、深部静脈血栓症(10~15%で致命的)、うつ的精神神経症(20%)
     
  3. 下痢(20%)、便秘、腹痛;グルカゴノーマから同時に分泌されるセロトニンVIPガストリンなどによると考えられます。

また、グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)の52%が悪性(J Gastroenterol. 2007 Jun;42(6):497-500.)

VIP産生腫瘍(VIPoma,ビポーマ)

VIP(vasoactive intestinal polypeptide)とは正常では小腸から分泌され、小腸を守るホルモンです。腸から水を分泌し、細菌の侵入を防ぎ、胃液による小腸粘膜障害を防ぐため、胃酸の分泌も抑えます。

VIP産生腫瘍(VIPoma,ビポーマ)が、膵臓にできると、難治性水溶性下痢・それに伴う低カリウム血症・無酸症がおこります(the watery diarrhea,hypokalemia,achlohydria syndrome:WDHA症候群)。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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