甲状腺と不整脈、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房細動(Af)、頻脈・動悸、下肢急性動脈塞栓症・上肢急性動脈塞栓症[長崎甲状腺クリニック 大阪]
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甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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(表;バーチャル臨床甲状腺カレッジより改変)
Summary
甲状腺ホルモンは心臓を刺激し頻脈・動悸、不整脈の原因に。甲状腺機能亢進症/バセドウ病の5~15%に合併する心房細動(Af)は①心不全②脳梗塞(心原性脳塞栓、心原性脳梗塞)③下肢急性動脈塞栓症・上肢急性動脈塞栓症の危険。甲状腺ホルモン低下すると約70%は自然に消えるが、高齢者、罹病期間が長い人は消えない。心房細動(Af)や合併する心原性脳梗塞や上下肢急性動脈塞栓症から甲状腺機能亢進症/バセドウ病が見つかる事も。心房細動(Af)合併すると下甲状腺動脈血流(ITA-PSV)測定不能に。発作性心房細動(Paf)と慢性持続性心房細動(Caf)の脳梗塞発症率は同等。
Keywords
甲状腺機能亢進症,バセドウ病,心房細動,動悸,甲状腺,下肢,急性動脈塞栓症,Af,不整脈,頻脈
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、初診の方に心電図も録らせていただきますので、足首の出る服装でお越しください。
院長の執筆
ワンポイントアドバイス:見逃されやすい甲状腺疾患2 心血管系の異常---甲状腺機能亢進症編、見逃されやすい甲状腺疾患3 心血管系の異常---甲状腺機能低下症編 (文光堂 メディカルプラクティス)
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甲状腺機能亢進症/バセドウ病の有名な症状は、頻脈・動悸です。健康な人の脈拍は1分間に60~90回ですが、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では90回以上の場合が多い。ただし、高齢者では脈拍が増えない事もあります。また、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では心臓血管障害がおこりやすく、動悸の原因になることも多いです。
労作時は、安静時よりも負荷が掛かり、動悸が起こりやすくなります。
動悸は、あくまで患者自身の主観であるため、必ずしも頻脈・不整脈とは限らず、徐脈や正常脈の事もあります。甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも感覚が鈍い人は、平常時80-90回/分程度の脈では何も感じないが、労作時120回/分以上になって初めて動悸を感じる場合があります。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の心房細動(Af)
心房細動(Af)で問題になるのは
- 心不全(左心不全):心房収縮が消失するため、心拍出量が10~15%低下。全身に十分な血液・酸素を供給できなくなります。
心臓から有効に血液を送り出せないため、肺に血液がうっ滞し(肺うっ血)、肺水腫を来すと酸素交換が妨げられます。
血液のうっ血が全身に及ぶと、全身浮腫(むくみ)により体重増加します。太ったと勘違いする場合があります。
- 脳梗塞[心原性脳塞栓(心原性脳梗塞)、Mrジャイアンツ長嶋茂雄氏が発症]:甲状腺機能亢進症/バセドウ病の約4%で起こるとされます。心臓が不規則に震えるため、心房内の血液が停滞し、左房内血栓(血の固まり)が形成されると、脳へ飛んで血管を閉塞します。発作性心房細動(Paf:paroxysmal atrial fibrillation) でも、慢性持続性心房細動(Caf:chronic atrial fibrillation)でも脳梗塞発症率は同等とされます。[甲状腺で脳塞栓や心原性脳塞栓(心原性脳梗塞)]
甲状腺機能亢進症/バセドウ病に伴う心房細動(Af)の2/3は、抗甲状腺薬等の治療で甲状腺機能が正常化すれば自然消失します[Am J Med. 1982 Jun;72(6):903-6.]。
しかし、
- 高齢者
- 甲状腺機能亢進症が長期に及び、長い年月、心臓が甲状腺ホルモンにさらされていた人
は、甲状腺ホルモンが正常化しても心房細動(Af)は消えない場合が多いです。
心房細動(Af)から甲状腺機能亢進症/バセドウ病が見つかる
逆もまた然り、心房細動(Af)や合併する心原性脳塞栓(心原性脳梗塞)から甲状腺機能亢進症/バセドウ病が見つかる事は結構多いです。内科・循環器内科・心臓内科で心房細動(Af)治療されていて、甲状腺ホルモンを測定してみたら、「実は甲状腺機能亢進症/バセドウ病だった。」はよくある事です。[Angiology. 1988 Nov;39(11):981-5.]。
発作性心房細動・慢性持続性心房細動は甲状腺機能亢進症/バセドウ病を発症している可能性
発作性心房細動(Paf:paroxysmal atrial fibrillation) は、突然おきる心房細動で、熱めの風呂につかった時など心臓に負荷か掛かると誘発されます。今まで同条件で起きなかったなら、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を発症している可能性があります。発作性心房細動(Paf)は脈拍が完全に不規則な絶対性不整脈で、
- 無症状の事も多い(約50%)
- 突然の動悸;脈がバラバラに乱れて速く打つ感じ、胸部不快感、胸痛→最初は発作と自然寛解を繰り返す
- 突然の心不全症状;めまい、息苦しさ(呼吸困難)、疲労感
- 突然、脳血栓塞栓症[心原性脳塞栓(心原性脳梗塞)]で発症
など様々です。
一方、慢性持続性心房細動(Caf:chronic atrial fibrillation)は、常に心房細動状態なので、無症状の事が多く、偶々、心電図・検診・自動血圧計の不整脈表示などで見つかります。自分でも気が付かない内に、甲状腺機能亢進症/バセドウ病になっていた可能性があります。
発作性心房細動(Paf)でも、慢性持続性心房細動(Caf)でも脳梗塞発症率は同等なので、突然、脳血栓塞栓症[心原性脳塞栓(心原性脳梗塞)]を発症し、後で甲状腺機能亢進症/バセドウ病が見つかる事もあります。
下甲状腺動脈血流(ITA-PSV)測定は、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の再発予測・抗甲状腺薬の効きやすさの予測に有用です。(バセドウ病再発・抗甲状腺薬の効き易さ予測 )
心房細動(Af)合併の甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、脈がバラバラなため、血流速度もバラバラになって測定不能です。
下肢急性動脈塞栓症
下肢急性動脈塞栓症とは、心房細動(Af)などの不整脈や心臓弁膜症で生じた心臓内血栓が下肢動脈に飛んで閉塞する病態です。心房細動(Af)に伴う上下肢急性動脈塞栓症から甲状腺機能亢進症/バセドウ病が見つかる事もあります[Angiology. 1988 Nov;39(11):981-5.]。
下肢急性動脈塞栓症の症状は、突然おきる下肢のしびれと痛み。患肢は蒼白で冷たく、動脈(閉塞部位によって大腿動脈、膝窩動脈、足背動脈)拍動を触知できない。浮腫を認めず。
最悪、神経麻痺・筋肉壊死・皮膚壊死をきたし、下肢切断を余儀なくされる。
血管内血栓形成によりFDP、D ダイマーが上昇。下肢超音波(エコー)検査、造影CT で血栓の局在を確認した後、再灌流療法を行います。しばしば緊急血栓除去術。
閉塞部位を再灌流させると虚血で発生した毒性物質が下肢から全身に回り[クラッシュ症候群(クラッシュシンドローム・挫滅症候群)と同じ原理]、以下のような再灌流障害を引きおこします。
- 下腿筋肉浮腫
- 血清CK(CPK、クレアチンキナーゼ)高値
- 高カリウム血症
- 急性腎機能障害(AKI)・急性腎不全
- 乳酸アシドーシス;乳酸は虚血下肢で生じた無酸素代謝産物
上肢急性動脈塞栓症
上肢では、左上腕動脈あるいは、その下流の血栓塞栓症・急性動脈閉塞をきたす場合もある。上肢は筋肉量が少なく、側副血行路が発達しているため、上肢の切断率は低く、再灌流障害を起こしにくい。[Rev Med Interne. 1997;18(10):806-8.][Angiology. 1988 Nov;39(11):981-5.]
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,東大阪市も近く。